遠足 〜羽田空港集合 → 横浜〜 ５月１日
羽田空港７時半集合。遅れないように。さて、横浜といえば中華街... もいいけれど、やはり、ペリー(Matthew Perry，1794〜
1858)でしょう。
４月23日〜25日にオバマ米大統領が来日しました。いまや、日米は親密な関係になって
いますが、日本と米国が横浜で出会ったのが今から161年前ですから、日米の関係は日本
の歴史の中の1割にも満たない短い時間です。その間に大戦争もしました。
1853年７月８日(嘉(か)永(えい)６年６月３日）、アメリカ東印度(ひがしいんど)艦隊
指令長官ペリーは、４隻の艦隊(２隻は蒸気船、２隻は帆船)の戦闘態勢を整えて江戸湾入
口の浦賀沖に錨を下ろしました。ペリーは久里浜に上陸を許され、米大統領フィルモア
(Millard Fillmore，任期1850〜53)から "日本皇帝閣下"(将軍)への手紙を浦賀奉行に手
渡しました。そこには「友好・通商、石炭と食料の供給および吾(わ)が難破民の保護」と
書いてあります。当時の米国は最大の捕鯨国で、日本近海まで捕鯨船が来るようになって
いて、何回か船が難破して、乗組員が日本に保護されるということが起こっていました。
幕府の速答は難しいだろうと考えたペリーは、翌年春に回答をもらいに再び来ると告げ
て引き上げて行きました。
ペリーより１ヶ月遅れて長崎に来たロシアのプチャーチン(E.Putyatin，1803〜83)は、
開国と国境確定を要求しましたが、ペリーのような軍艦の威力を背景にした強引な態度に
は出ず、幕府に断られるとすぐに引き下がりました。
この両者を比較すると、逆にペリーの強引さが際立ちます。圧倒的に優位な軍事力を目
一杯見せつけながら、長崎でなく、最初から首都である江戸を目指し、今にも江戸湾の奥
深くまで入って行くような素振りを見せたりしたのです。
このペリー来航については、多くの教科書でも紹介される有名な落首(らくしゅ)(匿名
で政治や社会を風刺した狂歌や狂句)
泰平(たいへい)のねむりをさます上喜撰(じょうきせん)
たった四(し)はいで夜もねられず
の影響もあってか、まるでペリー来航が寝耳に水のできごとのために徳川幕府が大慌てを
したかのような印象を私たちはもってしまいます。
※狂歌／狂句 洒落などを織り込んでおもしろおかしく作った和歌(五七五七七)／俳句
(五七五)
※上喜撰 上等のお茶の銘柄で、これを飲むと興奮して眠れなくなる。蒸気船に掛けてい
る。
鎖国中でも世界情勢は知っていた
しかし、実際には、鎖国中とはいえ、インドや東南アジアがヨーロッパ列強の植民地にされていることや、隣の大国・清が英国とのアヘン戦争に負けて香港を獲られてしまった
こと(1842年・南京条約)などの世界情勢は、幕府が唯一通商を認めていたオランダから聞
くなどして、相当詳しく知っていました。手のひらで世界とつながることのできるはずの
諸君よりも、鎖国中の幕府の目のほうが世界に開けていたと思われます。ペリー艦隊が日
本へ来る準備をしていることも、ペリー来航の１年も前にオランダの商館長から長崎奉行に公文書で伝えられていたのです。
その書類は、長崎奉行から老中(ろうじゅう)首座(しゅざ)・阿部正弘(1819〜57)に送ら
れています。そこには、米国との衝突を避けるためとして、通商の現状(交易は長崎港だ
け、居留地は出島だけ、など)を日蘭通商条約の形にしておくことが提唱されていました。
（蘭＝和蘭(オランダ)）
ただ、その中には、「領事裁判権」と一方的な「最恵国(さいけいこく)待遇」の条項も
入っていました。
領事裁判権とは、日本の法を犯した外国人は、その者の国の法律で処罰するという規定
です。今の在日米軍に対してもこのような協定があり、米兵が日本人を殺傷しても、日本
で裁判どころか、取り調べさえもなかなかできないということが現実に起こっており、
「日米地位協定の見直し」が現在の日米間の懸案のひとつになっています。
最恵国待遇とは、他の国に認めたことを自動的に条約締結の相手国にも適用するという
ものです。それをお互いに認め合うのならよいのですが、一方的、例えば、日本がオラン
ダ以外の国に認めたことは自動的にオランダにも認めなければならないのに、オランダが
日本以外の国に認めたことを日本には適用しないというのであれば、これは不平等であり、
対等な外交関係にはならないわけです。
それが理由かどうか分かりませんが、長崎奉行は「オランダ商館長は貪欲な者なので、
オランダが日本の物産を多く受け取り、これを米国に流して儲けようと考え、オランダは
米国に対して、渡来しないように取り計らうつもりだろう」という見通しを上申(じょう
しん)しました。幕府は、外国の事情に最も詳しいはずの長崎奉行の言うことを信じ、商
館長の通報や条約の提案は無視することにしたのです。
阿部正弘はいちおう、沿岸警備に当たっている大名には連絡したのですが、だからといっ
て具体的な対策があるわけでもありません。半信半疑の正弘は、浦賀奉行へは何も指令は
出しませんでした。
実は、ペリー来航の７年前(1846年)にアメリカ東印度艦隊指令長官ビッドル(J.Biddle，
1783〜1848)が２隻の軍艦で、日本の港を開放するかどうかを打診するために浦賀沖に来
たのですが、大小600ほどの日本の船が軍艦を取り囲む騒ぎとなり、港を開放する気はな
いことを伝えると、ビットルはそのまま退去したという事件がありました。この、簡単に
"解決"した経験が、かえってペリーに対する状況判断を甘くした可能性もあるでしょう。
いくら情報を得ても、それを客観的に分析して適切に対処しなければ、その情報は「猫
に小判」「豚に真珠」「馬の耳に念仏」に等しいという教訓は、その後も、日本の進路の
岐路においてしばしば活かされずにきたような気がします。
沖縄・小笠原は日本本土攻撃の拠点
ペリーは、1852年11月24日に大西洋岸の海軍基地ノーフォークをミシシッピー号で出発、アフリカ南端の喜望峰(きぼうほう)をまわって、セイロン(現スリランカ、当時は英国植
民地）、シンガポール(当時は英国植民地)を経由して、翌年４月７日に香港(アヘン戦争
で1842年から英国領)に到着し、東印度艦隊と合流しました。そして、その後の作戦は
・日本が開国に応じない時は琉球(現沖縄)を占拠する。
・他の国がまだ手を着けていない太平洋の島々は、カリフォルニアからの太平洋ルートの
重要拠点として一刻も早く確保する。
・日本へは、小艦隊での試験的な訪問と大艦隊での本格交渉の２段階
でいく
というものでした。
香港を出て、５月に琉球の那覇に
到着、強引に首里(しゅり)城を訪
れ、倉庫などの施設を確保します。
上海(シャンハイ)に補給船を派遣
している間に、小笠原の父島へ行
き、そこに住んでいた米国人から倉
庫を作るための土地を購入しまし
た。小笠原の領有権が日本にあることは米国も認識してましたが、日本は無人島として開
発はしておらず、そこに住み着いていた米国人から土地を買うことは、領有権とは別の問
題であると考えていました。
こうして、２ヶ所の補給地を確保して、いよいよ日本へ向かいます。
この間、日本では何も対策を講じていなかったことは、すでに話した通りです。
この、沖縄と小笠原を日本本土攻撃の拠点にするという考えは、太平洋戦争でもまった
く同じです。太平洋戦争では、先に小笠原の硫黄島にある日本軍の飛行場を奪い(1945年
３月）、その後、日本本土爆撃の際に傷ついたＢ２９爆撃機約2000機が硫黄島に不時着し
て、約２万人の米空軍乗組員が命拾いしたということです。空襲による日本人の死者は66
万人を超えています。
そして４月１日、米軍は沖縄本島に上陸します。諸君も知っての通り、沖縄は日本の戦
争史上で唯一、民間人(兵士でない一般人)が直接敵軍隊と交戦して犠牲になった地です。
沖縄戦の日本人戦死者は推定で約18万８千人、そのうち半数は沖縄地元の民間人です。
ペリー、他国を出し抜く
１回目の訪日で日本(久里浜)上陸、大統領親書の手交まで成功させた後、香港に駐留中、米大統領が、共和党のフィルモアから民主党のピアス(Franklin Pierce，任期1853〜57)
に変わり、ペリーの行動の行き過ぎを警戒するようになりました。
また、一度幕府に断られて上海まで南下してきたロシアのプチャーチンが、ペリー艦隊
に同行したがっているということや、英国やフランスなども、米艦隊の動きを牽制する動
きに出ていたことに対して、ペリーは最初の計画を完遂するために、急遽(きゅうきょ)予
定を早めて1854年１月14日、まだ冬のうちに香港を出発、那覇に立寄って江戸湾に入り、
２月13日、浦賀より更に入った金沢の沖に停泊しました。
今度は７隻、あとから２隻加わり、一時
は９隻の大艦隊となり、米国の並々ならぬ
決意を示します。応接地として浦賀や鎌倉
を提示する幕府に対し、できるだけ江戸に
近付きたいペリーは、測量ボートと蒸気船
を品川沖まで進め、圧力を加えます。幕府
は、江戸市中が軍艦からの射程範囲に入る
ことは、何としても阻止しなければなりま
せん。２週間ほどのやり取りのあと、やむ
を得ず横浜を提案し、ペリーもようやく承
諾します。
そして同年３月31日、日米和親条約(神
奈川条約)が調印されます。これで、下田と
函館の２港を開港し、薪水(しんすい)・食
料・石炭の補給、下田を米国領事の駐在地
とすることなどが決められました。通商
は、まだ開放されませんでした。（薪水＝
薪(まき)（たきぎ）と水）
この条約には、米国への片務的(一方的
な)最恵国待遇条項が入っており、その上、
４年後の1858(安政５)年に大老(たいろ
う)・伊井(いい)直弼(なおすけ)が勅許(ちょっきょ)(天皇の許可)を得ないままに調印し
た日米修好通商条約では、居住区内での領事裁判権や、日本の関税を日本が独自では決め
られない規定(協定関税)が入り、こうした不平等条約の改正には、日露戦争に勝った６年
後1911(明治44)年まで、明治政府の最重要課題として半世紀にわたって努力を続けなけれ
ばならなかったのです。
ともかく、軍事力がモノをいうこの時代では、まずは軍事力が伴っていなければ一人前
の国として扱ってもらえなかったわけです。また、軍事的・経済的な力関係だけでなく、
欧米人の人種差別・宗教的差別意識もあったと思います。
なお、この日米修好通商条約で神奈川(実際は横浜)と長崎、新潟、兵庫(実際は神戸)の
各港の開港が決められました。
また、日米和親条約締結後に、オランダ、ロシア、英国、フランスとも同様の条約を結
びましたが(安政の５ヶ国条約)、特に日露和親条約では、択捉(えとろふ)島以南が日本領、
得撫(うるっぷ)島以北がロシア領として境界を定め、樺太(からふと)(サハリン)は両国人
雑居の地として境界を定めないことが決められました。その後現在まで、国境変更の取り
決めはないので、この条約を大きな根拠にして、日本は北方領土の領有権を主張している
のです。
条約締結後、横浜が外国との貿易で賑わうようになると、西洋の言葉がわかり、日本人
とも漢字で筆談ができる中国人が通訳として商人に同行するようになり、中国人が横浜に
多く住みつき、やがて中華街ができたということです。
それでは、中華街でおいしいものでも食べましょうか。
勝みなみ15歳 女子ゴルフツアー最年少優勝
すごいですね。近ごろの活躍している若い人は、物怖(ものお)じしないという点が共通している感じです。で、このニュースに接したとき、｢勝つ 南 優勝」というフレーズが
浮かびました。我々は運動会で南軍になりました。これも何かの縁、応援合戦では勝みな
みさんにエールを送りつつ、我が南軍も優勝を目指しましょう。