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６８２４ 　Ｎｏ.００９　　　　　　　　　　2014年12月15日
『早いもんで、もう二学期期末考査も終わってしもうた。』
《ほんまやな。ついこの間、修学旅行やったのに。関西弁がまだとれへんがな。》
『たった２泊でそんなに関西弁になったんかいな』
《そうや。アテはすぐ環境に染まってしまうんや。》
『まるでカメレオンみたいなやっちゃな、オマエは。』
《キョロキョロ　ペロペロ》

開戦記念日　12月８日

　本紙００６号で「終戦記念日が夏休み中でなかったら」という話をしました。終戦記念
日は、テレビや新聞などでも毎年大きく報道されますから、まだ忘れ去られるようなこと
はなさそうですが、12月８日は、知っている人はかなり少ないのではないでしょうか。
　あの戦争を振り返るなら、終戦記念日ではなく、12月８日の方が相応しいと思いますが、
原爆の日とセットにして，半分は被害者という立場にも立てそうな夏の方が話題にしやす
いのかも知れません。戦争を始めた張本人が戦争を始めた日を振り返るのにはそれなりの
勇気が必要でしょう。
　さて、実は昨年、８組の担任のときにも「あの戦争」について本紙で取り上げました。
そこでは、
　　・日本はなぜ、国力が圧倒的に上の米国に戦争をしかけたのか。
　　・日本は、その前のすでに４年余り、中国と戦争をしていたが（1937年７月７日盧溝
　　　橋(ろこうきょう)事件〜）、なぜ日本は中国と戦争をしたのか。
と問いかけ、その前後の時間の経過について
　　・日中戦争の70年前の日本はまだ江戸時代（明治の前年）だった。
　　・一方、今年(2013年当時)の夏で終戦後68年である。（来年は終戦70年）
　　・日中戦争〜太平洋戦争前後の各70年間には、それぞれまったく異なる日本があるが、
　　　また、共通点も感じられる。
と述べました。
　諸君は、３年生になると近現代史を学ぶと思いますが、「過ぎ去った歴史」の知識とい
う受け取り方ではなく、今なお継続中のことなのだという認識をもって、何が事実なのか
を知ろうとしてほしいと思います。
　実際、来年は中国や韓国、ロシアは、対日戦勝70周年記念としていろいろイベントを実
施し、70年以上前の日本の "悪行" を世界中に宣伝する計画を立てているようです。
　また、12月13日には、1937年のこの日に日本が南京を占領する際に起こったとされる南
京虐殺事件を記念して中国は式典を開催し、習近平国家主席は「侵略の歴史を顧みない態
度や美化する言論に強く警戒し、断固反対する」と演説し、日本を牽制しました。
　このように、この "歴史" は決して過ぎ去った過去ではなく、今なお続いているのです。

ハル・ノート　〜米国の最後通牒〜

　日本が対米戦争を決意した直接のキッカケとされている、いわゆる「ハル・ノート」を
見ておきましょう。これは、一連の日米交渉の末に1941年11月26日に日本政府に手渡され
たノート（note＝メモ）で、正式名称は「合衆国及び日本国間協定の基礎概略」といいま
す。基礎概略であり、まだ拘束力を持つ正式の文書ではありません。
　ハルとは、当時の米国務長官コーデル・ハル（Cordell Hull，1871〜1955）のことで、
日米交渉の窓口になっていた人物です。
　このノートには、日米両国のこれからなすべきことが10項目書かれています。米国の要
求を見ることで、逆に、当時の日本が何をしていたかが見えてきます。

１．米日は、英国、中国、オランダ、ソ連、タイ国と多辺的不可侵条約の締結に努力する。
２．米日は、英、中、蘭(ラン)、泰(タイ)政府と仏領印度支那の領土主権を尊重する協定
　　を締結する努力をする。
３．日本国政府は中国及び印度支那より一切の陸海空兵力及び警察力を撤収する。
４．米日は、臨時に重慶に置く中華民国国民政府以外の政権は支持しない。
５．米日は、中国国内における一切の権利を放棄する。
６．米日は、通商協定締結のための交渉に入る。
７．米日は、互いの資産凍結措置を解除する。
８．米日は、ドルと円の為替安定計画を協定する。
 印度支那：現在のベトナム、ラオ
ス、カンボジアのあたりで，当時
はフランス領。
泰(タイ)：東南アジアで唯一、植
民地にならず独立を保っていた。
９．米日は、第三国と締結しているいかなる協定も、太平洋地域全般の平和樹立及び保持
　　に矛盾するような解釈はしない。
10．米日は、他国に対して本協定の原則を適用させる。

　日本は、これらを受入れることはできないとして、開戦を決断し、２週間後に真珠湾を
攻撃したのです。
　ハル・ノートのメインは第３項です。これだけ日本だけのなすべきことになっています。
これを読むと、当時日本は、中国と印度支那に軍隊と警察を駐留させていたことがわかり
ます。警察がいるということは、実質的に政治支配をしていたと解釈できます。
　1941年までに日本はなぜ、こんなところにまで侵攻していたのかを調べてみます。

日本の大陸侵攻の背景

　明治以降の日本外交は、始めは朝鮮半島から中国（当時は清(しん)）の東北部に関心が
集まっていました。それは、もし、朝鮮半島がヨーロッパやロシアの植民地になれば、日
本もやがて同じ道を辿るであろうと認識していたからです。
　この危惧は、アヘン戦争（1840〜42）あたりから、すでに徳川幕府も感じていました。
つまり、隣りのあの大国・ 清が英国に敗れ、上海(シャンハイ)などの５港を開港し、香
港を割譲し、賠償金まで支払わされたのですから、その衝撃は、アジア諸国にとって大変
大きなものでした。
　日本は、そうした危険を清の属国である朝鮮に伝え、早く清から独立して開国し、国の
近代化に努めなければならないと訴え続けてきました。しかし、清の庇護のもと、中華思
想にどっぷり浸っていた朝鮮の実権を握る大院君(だいいんくん)（朝鮮国王・高宗(こう
そう)（即位時12歳）の実父，1820〜98）は、自分より本来は格下の国であるはずの日本
に言われる筋合はないとばかりに、頑なに鎖国政策を続けてきました。
1902asia 　中華思想とは、周辺の国や民族はすべ
て文化程度が低く、自国に服属するもの
である、という思想のことです。
　日本は、米国の圧力により開国をし、
明治になって近代化に動き出しますが、
その間にも欧露米は、どんどん東アジア
を侵食していきます。この、列強のアジ
ア侵攻の凄じさを知っておかないと、私
たちは、日本の近現代史が、まるで日本
の独り善がりのアジア侵略だけの歴史と
いうような印象を持ってしまいます。
　植民地・租借地を持つことは、当時は
強国のステータス・シンボル（status
symbol＝地位の象徴）のようなものだっ
たのです。当然日本も、持つ側になりた
かったわけです。

米国→日本 と 日本→朝鮮

　さて、日本は1871(明治４)年、清との修好条約に調印し、上海での交易ができるように
なりました。日本が外国と初めて結んだ平等条約です。この平等は、互いに最恵国待遇も
領事裁判権も認めないという平等で、他の欧米諸国との条約でいう平等とは、ちょうど裏
返しのような感じです。それはともかく、この条約締結は、朝鮮に、朝鮮の宗主国・清と
日本が対等の立場であることを示すためにも必要だったのです。
　そして、1876(明治９)年に日朝修好条約を結び、朝鮮を開国させました。この条約の第
１条では「朝鮮国ハ自主ノ邦(くに)ニシテ日本国ト平等ノ権ヲ保有セリ」とあるのですが、
実体は、日本だけが朝鮮において領事裁判権を持つ不平等条約なのです。
　すでに朝鮮では、高宗が成人したのを機に大院君は政権から退き、高宗による親政にな
り（実権は妃（王の妻）の閔(びん)妃(ぴ)が握った）、排外的な雰囲気は幾分は弱まって
いました。それでも発言力のある大院君は、不平等条約に大反対でした。しかし、いま朝
鮮が日本と戦争をして朝鮮が負けたら、清国にとっても不利ということで、清の李鴻章
(りこうしょう)(1823〜1901)が朝鮮に圧力をかけ、対日和解をさせたのでした。
　日本は、欧米列強との不平等条約に困り（本紙００２）、条約改正を明治政府の大きな
課題としていながら、朝鮮に対しては、それを押しつけるということをやったわけです。
　諸君はどう思いますか。自分が嫌だと思うことを他に押しつけるのはけしからん、です
か？
　あるいは、当時の国の力関係では当然のこと、ですか？

朝鮮半島を足場に満州へ

　日本の当初の心配は、ロシアの南下です。英仏独などとは違って、ロシアは地続きで南
下してくるので大変な脅威なのです。ロシアが韓国国境をも越えてきて、日本国内は対露
戦の世論が高まってきました。シベリア鉄道が完成したら、もう、食い止められません。
それで、シベリア鉄道完成の前に日露戦争を開始したのです（1904(明治37)年）。これで
米国は、日本を仮想敵国としました。
　奇跡的にロシアに勝った日本は、満州に入ることができました。
　そのうち、日本の人口増加もあって満州への移住も増え、産業も発展し、満州を日本、
ロシア、清、いずれからも独立した国にする構想が生まれました。
　ところが、満州の日本陸軍「関東軍」は、本国政府のコントロールが効かなくなってき
ました。関東軍は、万里の長城を越えて南下し、1937年７月７日、盧溝橋事件で日中全面
戦争の一歩を踏み出します（この12月に南京を占領します）。戦争が長引くと、多くの石
油が必要になります。1939(昭和14)年の石油輸入量の90％が米国からです。米国以外の輸
入先を見つけなければなりません。それが仏領印度支那方面だったわけで、日本は、北の
満州の守りと同時に南進の方針も決め、1941年夏に仏印まで出て行ったというわけです。
　この歴史をもっとキチンと理解するには
　　　なぜ、関東軍は満州に留まろうとしなかったのか？
　　　なぜ、日本政府は自国の軍隊をコントロールできなかったのか？
　　　なぜ、日本はハル・ノートを（一部だけでも）受け入れられなかったのか？
という疑問の答えを見つけなければなりません。それなくして、日本があの戦争を総括す
ることはできないと私は思います。

当面の日程

12月16日(火)まで　平常７時間授業
　　17日(水)〜24日(水)　午前中４時間授業
　　24日(水)午後　不忍駅伝
　　25日(木)　二学期終業式
　　26日(金)〜１月７日(火)　冬休み！
１月８日(木)　三学期始業式・学力調査（国・数・英・化）　昼食持参
　　12日(月)　成人の日
　　13日(火)午後　90周年式典
　　17日(土)18日(日)　センター試験
　　18日(日)　チャレンジ・センター
 
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