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複眼
Ｎｏ.００３ 2004年４月19日
７時間授業
授業が一巡しましたが、いかがでしたか。
そして、班活のない貴重な２連休は、ゆっくり休息できましたか。
７時間授業といっても１コマ45分ですから、１時間目の開始から７時間目の終りまでの
時間は、かつての50分６時間のときより20分伸びただけですが、もっと長いように感じま
す。
一方、１コマたった５分の短縮とはいえ、最後にもう１問できるかどうかの積み重ねは
大変大きいと実感しています。
世田谷区の中学校では52分授業を始めるそうです。休み時間は８分。授業時間の大切さ
を強調する効果を狙うのと、１日12分、５日で１時間の積み重ねは大きいというわけです。
本校も47分授業にすると、いくらか足しにはなるかも知れません。あるいは、本校の場
合は、休み時間の短縮12分を授業に回さず、７時間目の終りを３時３分にするという案も
出るかも知れません。班活の時間確保です。しかし、授業の開始・終了の時刻が時計では
わかりにくいことになりますが．．．
数学Ⅰは、週に１回、２時間続きがありますので、せめてそのときくらいは、間の休み
を５分程度にして問題を考える時間や説明の時間を確保したいものです。
うさぎ小屋
どうして、学校はこうもきゅうきゅうとしなければならなくなったのでしょうか。
そもそもの原因は、
労働者の「週休２日制」の推進
にあります。
かつて日本人は、働き蜂とか仕事中毒（ワーカホリック＝workaholic）などといわれな
がら、高度成長（本紙００１参照）を成し遂げました。しかし、1960年代後半になって、
その歪がいろいろ出てきました。
まず公害。排気ガスによる大気汚染、工業廃水による水質汚染は重大です。
四日市ぜんそく、富山のイタイイタイ病、熊本や新潟の水俣病
など、聞いたことがあるでしょう。これらは４大公害訴訟といわれています。将来、環境
問題に関する道に進みたいと考えているひとは、このあたりをとっかかりに調べてみては
いかがでしょう。
また、人口の都市への集中により、住宅難や交通ラッシュも深刻です。都市集中と表裏
一体で農業が弱体化し、食料自給率を低下させました。
世界第２位の生産力を持っても、今ひとつ、何か満たされない、そう思うようになって
きました。働く時間は世界トップなのに、住む家は他の国よりかなり小さい。
来日した外国の誰だったか、
日本の住宅を見て「うさぎ小屋」
と評しました。どうもこれが日本人にかなりのショックを与えたように私は感じています。
マスコミも自嘲的に繰り返し「うさぎ小屋」という表現を使い、流行語にもなったのでは
ないかと思います。
日本の土地が狭いのは致し方ないとしても、労働時間の短縮は可能なはずです。それで、
日本も欧米並みに土曜日を休みにしようというようになりました。
バブル経済も弾けた1991年、政府は
1996年度中に年間労働時間を1800時間にする
計画を決めました。当時のドイツの労働時間が1800時間で、日本は2000時間を超えていま
した。200時間ということは、１日８時間労働として25日分です。半日４時間の土曜日だ
と50日分に相当します。従って、週休２日制にすればほぼ目標が達成できるわけです。
（１年は52週）
企業や役所は徐々に週休２日制に移行していきましたが、学校は、授業内容が週６日間
を想定して決められているために、新しく学習指導要領をつくるまでは、第２・第４土曜
日を休みにするのが限度でした。
そして、2002年度（高校は2003年度）から実施された新しい要領が学校週５日制に合せ
た内容になったので、完全に実施されるようになったのです。
ここで、
「週休２日制」が「学校週５日制」に変わった
ことに気付きましたか。
企業の場合は「週休２日制」であり、「営業週５日制」とはいいません。土日も休まず
営業する会社はあるわけですが、そこの従業員も休みなく働いているというわけではあり
ません。企業に限らず、都営地下鉄やバスも毎日運行していますが、そこの都の職員は週
休２日です。
なのに、学校だけは、教員を週休２日にするためには学校も休みにしなければならない
ということに、いつの間にかなってしまったのです。なぜか？
私の記憶しているところでは、
生徒が学校にいるのに先生が休むわけにはイカンだろう
というのがあります。教員が言ったのではなく、役所が言ったことです。
これは、特に小学校の場合でしょうが、生徒数も減少していくのですから副担任制度を
充実させるなど、手がありそうです。また、教師と生徒を同等に扱おうという発想はよく
ありません。大人と子供は違うということは、子供に教えるべきです。
また、
家庭で親が休みなのに、子供だけ学校に出かけるのもヘンだろう
というのもありました。でも、子供は塾にいくのです。
家庭にいる時間を多くして、家庭教育や地域社会で子供を見ていくことも必要だ
もあります。これは、私は賛成できる部分があります。
ともかく、こうして、
学校週６日制・教員は週休２日制
の可能性は、検討する余地すら与えられず、労働者の週休２日制の問題は、学校をいかに
５日制にするかという問題にすり替わってしまったのです。
学校週６日制・教員週休２日制が実現できていれば、７時間授業だの52分授業だのと、
こんなにきゅうきゅうとしなくて済んだはずです。しかし、一度決めたら10年や20年は変
更しないというのが日本の役所にありがちなことです。公立学校は絶対に土曜日に授業を
してはいけないと、文科省は厳しく自治体の教育委員会を指導しているようです。
学校を休みにするために授業内容を削減
2002年度から実施されている指導要領において、
教員を休みにするために授業を減らす
などとは、余りに露骨すぎて言えるはずもありません。労働者の週休２日制とは関係なく、
純粋に教育の問題として学校週５日制を実現する必要があります。
そこで登場したのが、
生徒自身が問題を発見し、解決する能力を養う
というものです。何でも教員が教え込むような詰込み教育はイカンというわけです。その
ために、
全員に一律に教えなければならないことがらは最小限に絞る
という方針で教科書は作られました。最小限の内容については、
※時間無制限でやれば全員が百点取れなきゃおかしい
ような内容なわけです。そして、
※「自分で学びたい」というモチベーションは、小中学校の段階で持ってもらいた
いんです。わからないから、勉強嫌いになる。勉強が全部わかれば「この科目は
もっとやりたい」という意欲が出てくると思うんですよ。
というように、教科書以上の勉強は、生徒本人のやる気次第というわけです。
でも、教科書に載っていない、教員もうるさくいわない、入試にも出ないことを、諸君
はどれくらいやる気になりますか？ ましてや、小中学生ではどうでしょう？
※文部省当時の政策課長 寺脇研氏が、月刊誌「論座」（朝日新聞社）1999年10月号での東大助教授
刈谷剛彦氏との対談で語ったことば。
モチベーション（motivation）＝やる気；動機付け、刺激
また、教員の週休２日制の問題がなければ（世間が週６日働いていたとすれば）学校週
５日制は出てこなかったはずです。そうすれば、教科書の内容削減もこんなにはならなかっ
たはずです。
受験生ブルース
ただ、「受験地獄」というのは私が子供の頃からいわれていて、私が中学生の頃、高石
友也というフォークソングのシンガー＆ソングライターが「受験生ブルース」という歌で、
大事な青春無駄にして、紙切れ一枚に身を託す
… こんな受験生に誰がした…
と歌っていました。その世代の観客も、共感を持ってワハハと笑いながら聞いていました。
"紙切れ１枚" で勝者になるには、重箱の隅をつつくような知識の量とその効率的な使
い方の練習の繰り返しが必要だったわけです。「だった」ではなく、今もなお必要なわけ
です。
しかし、こうした詰込みの成果による競争ということを改善したいのなら、教科書を薄
くするのではなく、入試の方法を変えることでかなりの効果があげられます。つまり、
暗記や知識の型どおりの使い方だけでは太刀打ちできない
ような課題を受験生に課すのです。実際、今や様々な入試が行われており、かつてのよう
な一元化した序列だけではなくなってきています。
脳内リンク
暗記や型どおりの使い方だけでは太刀打ちできないからといって、知識や型どおりの使
い方が必要ないといっているのではありません。やはり
知識は多いに越したことはない
ことは事実です。それは入試対策だけでなく、人生を豊かにしてくれるものです。
ひとつの映画を見ても、その時代背景や思想的な背景、監督や役者についての知識をもっ
ているのとそうでないのとでは、格段に楽しみの深さが違うでしょう。
これまで互いに関係ないと思っていた種々雑多な知識を連結する＝リンク（link）する
ことが大切です。そのためには、常に周りに興味を持ち、新聞なども読み、友達とも議論
し、脳に刺激を与えることが必要です。
いわば、
インターネットのリンクのように、脳内にリンクを張りめぐらせて
外部からの刺激（入力）があったときに、たちまち脳内のネットに信号が走り回り、適切
な知識（データ）を見つけ出し、適切に加工（工夫・応用）して発表（出力）する。
新しいアイデアも、無の状態から突然ひらめくものではありません。豊富な知識と間断
ない思考や実験により脳に刺激を与え続けるうちにひらめくものです。
発明王エジソンも言っているではないですか
発明は、１％の才能と９９％の努力によって生まれる
と。 〟
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