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複眼
Ｎｏ.０１４ 2004年７月20日
夏休み
やはり、夏休みは楽しみですか？
諸君のほとんどは班活で忙しいでしょう。各班の夏休みの活動予定を見ると、休み
が２日しかないというところもあるようですが、週に１日は体を休め、自分たちの試合や
テレビの試合のビデオをじっくり見たり、畳に大の字になって寝転んでイメージトレーニ
ングをするなどしたらいかがでしょう。宿題もやらにゃなりませんしね。
特に今年は、アテネ・オリンピックがあります。夏のギリシャの時刻は日本の時刻－６
時間ですから、現地の朝９時が日本の午後３時、現地の午後６時は日本の深夜０時になり
ます。朝から甲子園、夕方からオリンピックと、１日中テレビ浸けになってしまいそうで
す。暑さも加わり、きっと今年の電力使用量はグンと増えるでしょう。電力会社の不祥事
でいくつかの原発は昨年から停止しており、大停電にならなければよいのですが．．．
海の日
始めは７月20日でしたが、今年からハッピーマンデーで月曜日（19日）になりました。
1876（明治９）年６月２日、明治天皇は東北・北海道への巡幸に出かけました。巡幸と
は、天皇が巡行（方々を巡り歩くこと）することで、そうやって、今や、徳川将軍ではな
く天皇が日本の統治者であることを日本の隅ずみにまで知らしめたのです。
最初の宿泊地の埼玉県草加から、日光、仙台と北上し、青森から函館へ渡った後、灯台
視察船「明治丸」で三陸沖を南下、７月20日朝、横浜港に到着して巡幸を終えました。
1941（昭和16）年、つまり、太平洋戦争開戦の年に「海の記念日」に定められ、戦後は
一旦なくなりましたが、1995（平成７）年に「海の日」として復活したのです。
本紙００４に掲載の「国民の祝日に関する法律」では、海の日は「海の恩恵に感謝する
とともに、海洋国日本の繁栄を願う」とあります。
海の恩恵というと "海の幸" をまず連想しますが、日本にとっての海は国境でもあるわ
けで、外国を海外と呼ぶ所以です。国境としての恩恵は、忘れるわけにはいきません。
日本人の祖先
最後の氷河期が終わる１万年ほど前までは、今の北九州と朝鮮半島、北海道と樺太～大
陸は何度か陸続きになったそうです。最後の氷河期が終わって海面が上昇し、日本は島に
なり、それ以来、私たちは海に囲まれて暮らすようになりました。
陸続きだった頃に今の日本列島に来た人たちが、今の日本人の祖先だと考えられていま
すが、日本語が朝鮮語や中国語と別の系統の言語である点で、日本人の祖先や日本語の祖
語の調査・研究が、今なお続いているそうです。
漢字の伝来と日本語の維持
漢字が日本に伝わったのは、教科書では５世紀（西暦400年代）となっていますが、こ
れについてはもっと古いという説もあります。１世紀中には朝鮮半島南部まで漢字が入っ
てきたことがわかっているそうで、そうなると、そこから日本に漢字が入るまで400年も
かかるというのは不自然だというのです。
江戸時代に博多湾で発見された金印には「漢委奴国王」と刻まれていますが、これは、
西暦57年に、倭の奴（九州北部にあった小国のひとつ）の国王が当時の中国である後漢の
光武帝から授かったものとされています。しかし、倭の奴の国王がその刻印が文字である
と認識していたかどうかはわかりません。従って、漢字が書いてあるものが日本に入って
きたことを「漢字の伝来」と言い切ることはできません。その意味で、漢字を文字と認識
して受入れたのが５世紀ということなのかも知れませんが、これは、ド素人の私がただそ
うなのかなと思うだけですから、間違っていたら教えてください。
漢字伝来の時期の確定はともかくとして、それくらいの時期に、大陸の人と日本の人と、
どうやって会話をしていたのか、とても不思議に思えます。その頃は、大陸の言葉と日本
の言葉は明らかに異なっていたはずですので、通訳のできる人がいたとも考えられます。
まさか、文字がないからといって言語そのものがなかったと考えているひとはいないで
しょう。縄文時代でも弥生時代でも、日本人は言葉を話していたはずです。サルのように
「ウォッ、ウォッ」なんて言ったはずがありません。豊かな日本語はあったはずです。
日本には、漢字だけでなく、銅器や鉄器、稲作など、多くの大陸文明・技術が入ってき
ましたが、結局、日本語は日本語のままでした。日本語を漢文で表すのでなく、漢字に日
本語の読み（訓読み）を割当て、漢文は語順を変えて日本語として読む方法を編み出し、
とうとう、ひらがなやカタカナを発明し、漢字を日本語を表現する道具として使いこなし
てしまったのです。
一体、誰がそういったイニシアチブ（本紙前号参照）をとったのかも興味あるところで
すが、海というフィルターを通すおかげで、人間というハードウェアの流入が制限され、
文化というソフトウェアの部分が濃縮されて伝わってきたという感じがします。
しかし現代は、特に文化の伝播には海は障害ではなくなって、昔とは比較にならぬほど
大量に、そして短時間に情報が行き来するので、言葉を言い換えているひまもないという
ことなのかも知れません。しかし、本紙前号の「外来語の言い換え」のような作業は、継
続すべきだと思います。
終戦記念日 ～終戦は９月２日～
夏休みに向けて、もうひとつ提示しておきたい大きな話題です。ふつう、終戦記念日を
話題にするとき、大戦での犠牲者を慰霊し、不戦の誓いをし、また総理大臣の靖国参拝が
どうだこうだとか、特に今年は、対イラクの多国籍軍への自衛隊の参加、憲法９条改正な
どについて話すべきなのでしょうが、広島・長崎から終戦にかけてについては、本紙の限
られたスペースで今述べるより、これから毎日、諸君がニュースや新聞を見るべきだと思
いますので、「複眼」は、敢えてちょっとマイナーな点に触れておきたいと思うわけです。
日本では、８月15日を「終戦記念日」として各地でさまざまな催しが開かれます。甲子
園球場では、昼の12時に試合を中断して全員で黙祷をします。
日本人は、この日に戦争が終わったと思っているわけですが、欧米では、第２次世界大
戦が終わった日は９月２日となっています。大戦で最後まで戦っていたのは日本ですから、
日本にとっても本当の終戦は９月２日なのです。
それでも、当時の日本国民にとっては、15日の衝撃はあまりに強烈だったでしょう。天
皇の声を国民が初めて聞いたという点でも、忘れられない日であるかも知れません。
さて、日本がポツダム宣言（米英中が発した日本が降伏するための条件）を受諾するこ
とを決めたということを、天皇が国民に向けてラジオで宣言したのが８月15日の正午なの
であって、この時点ではまだ、日本と連合軍は交戦状態であったわけです。
そして、９月２日午前９時４分、東京湾に浮ぶ米国戦艦ミズーリ号上で、日本全権の重
光葵外相と梅津美治郎参謀総長が降伏文書に署名し、第２次世界大戦は終結したのです。
従って、世界史の知識としては「第２次世界大戦終結は1945年９月２日」と覚えておか
なくてはいけません。実際日本でも、その年の９月３日、宮中において昭和天皇が「戦争
終熄親告の儀」を執り行っています。
いつ、日本では８月15日が終戦記念日になったかはよくわかりませんが、その認識のず
れも原因のひとつとなって、いまだに尾を引いている問題があります。
それは、北方領土問題です。
８月１５日以降にソ連が侵攻 ～北方領土～
７月26日に日本に提示されたポツダム宣言を日本は黙殺し、８月６日に広島、９日に長
崎へ原爆が投下されましたが、８日にはソビエト連邦（現ロシア）が、まだ有効期限内で
あった日ソ中立条約を無視して日本に宣戦布告し、満州、朝鮮に侵攻してきました。
15日の降伏 "宣言" 後も、ソ連は、まだ戦争状態は継続中という認識で、南樺太、千島
列島に侵攻、現在もなお、日本の領土であると粘り強く主張し続けているいわゆる北方領
土の択捉島に侵攻したのは８月28日、国後島と色丹島へは９月１日、日本軍はまったく抵
抗せず占領されてしまいました。
ソ連軍は更に、作戦準備命令を実施命令と通信を聞き間違えるというミスを犯して、降
伏文書に署名したあとの９月４日から５日にかけて歯舞諸島を占領したのです。
本紙００４の「独立記念日？」で触れた「サンフランシスコ講話条約」で、日本は千島
列島を放棄しましたが、択捉、国後、色丹、歯舞が千島列島に入るかどうかで日本とロシ
アで見解が分かれているのに加えて、終戦時のこうした事情も、北方領土返還を難しくし
ているのです。
それにしても、日本はなぜあの無謀な戦争を始めたのか。来年は戦後60年になります。
そろそろ、公式の場でそのことについてきちんと考えるべきです。本紙でも００１からの
課題です。夏休みは、それを考えるよい機会です。試験の為ではなく、日本の未来、いや、
そんな大げさなことは言わない、諸君の生き方を考える為に歴史を勉強してください。
ツェツィーリエンホフ宮殿
ドイツ・ベルリン郊外のポツダムにある
宮殿で、ドイツ帝国最後の皇太子ヴィルヘ
ルムの一家が住んでいたところです。
ドイツが1945年４月に連合軍に降伏した
あと７月17日から、トルーマン米大統領、
チャーチル英首相、スターリン・ソ連首相
の３首脳が集まり、ドイツの戦後処理と日
本の降伏条件が協議され、26日、日本に対
するいわゆるポツダム宣言が発表されまし
た。当時、日本とはまだ交戦状態でなかっ
たソ連はポツダム宣言には入っておらず、
蒋介石・中国主席の同意を得て発表され
ました。
私は昨年８月、ある財団法人小山台の青
少年国際交流推進派遣団の一員としてドイ
ツへ行かせていただきました。
左の写真の三角屋根の出っ張った部分が
ポツダム会談の行われた部屋の外観です。中は撮影禁止になっています。
直径３ｍ程でしょうか、大きな円卓に３ヶ国の国旗が置かれていました。ここにあの３
人が座ってドイツや日本の未来を話し合っている姿を想像したとき、歴史を追体験したよ
うな気持ちになりました。 〟
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