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複眼
Ｎｏ.０１８ 2004年９月27日
最多記録
◆ 東京の今年の真夏日（最高気温が30℃以上の日）が今月21日で68日となり、大手町で
の1923（大正12）年以来の観測史上、これまでの最高だった2000年を抜いて最多となりま
した。1971（昭和46）年以降の真夏日平均日数は46日で、平成になってから（1989年以降）
この平均を下回ったのは３回だけだそうです。
また、８月12日には、７月６日から続いていた真夏日が連続38日となり、これも同じ観
測史上、1995年の記録を更新しました。その後２日間真夏日が続き、連続真夏日40日の最
多記録となりました。15日だけ最高気温28.5℃で連続記録は跡切れたのですが、16日から
また真夏日が続き、上述の日数の最多記録となっています。
◆ 今年、これまでに日本本土に上陸した台風は７個で、すでに最多を記録しています。
平均上陸数は年2.6個だそうですから、今年は当たり年です。なぜ今年は多いかというと、
日本南方の海水温度が２～３℃高く、太平洋高気圧の位置が通常より北寄りにあるので、
台風が北上しやすくなっているためだそうです。それに加えて、フィリピンの東海上での
対流活動が活発で、台風の発生のペースが速いことも原因だということです。
しかし、ではなぜ、海水温度が高くなって太平洋高気圧が北寄りになったのか、なぜ対
流が活発になったのか、という点については説明が聞かれません。気象にはまだまだわか
らないことが多いのですね。それだけ研究のしがいもあるでしょう。
終戦直後だったか、台風の発生を押さえる国際的な研究をしようという話が持ち上がっ
たことがあったそうですが、そのとき、日本は大反対したという話をいつだったか聞いた
ことがあります。台風をコントロールできれば、毎年被害の出ている日本にとっては大変
良いことのようにも思えますが、なぜ、当の日本が反対したのでしょうか。
理由は、日本の安全が脅かされるからです。この場合の「安全」は、台風の "危険" に
対する "安全" ではありません。いわゆる政治的な国家の安全保障のことです。もし、気
象をコントロールすることができれば、日本を旱魃にすることもできるし、逆に水害を多
発させることも可能になるというのです。
「まさか」と思うことでも気を抜かず、あらゆる可能性を考えて備えるというのは、防
災、危機管理、さらには国家安全保障の基本でしょう。台風のコントロールが可能かどう
かの議論は不要なわけで、可能だろうが不可能だろうが、こうした考えに基づいて反対す
うというのは正しい決断だったと思います。
◆ アテネオリンピックでの日本のメダル獲得数は37個（金16、銀９、銅12）で、日本と
しては過去最多でした。
ところが、このことについて、社会学者の加藤秀俊氏が面白い指摘をしています（産経
新聞９月22日「正論」）。それによれば、1964年の東京オリンピックでのメダル獲得数は
29ですが、競技種目数は163なので、メダル総数は金銀銅で163×３＝489。すると、日本
のメダル獲得率は5.9％。一方アテネでは、競技種目数はグンと増えて301。メダル総数は
903。従って、日本のメダル獲得率は4.1％となります。これは、企業でいえば、シェア
（市場占有率）が30％も低下したことを意味します。いくら売上額が増えても、シェアが
減ればその企業は競争に負けたことになります。メダル獲得数に対するマスコミのはしゃ
ぎぶりに対して、氏は「数字というのは絶対値、相対値、名目と実質、そしてその背景に
なっている事情をしっかりみたうえで「解読」しないとこまる」と述べています。
これは、本紙００５号の「たまには数学の話」で、教育委員会が認定した指導力不足の
教員が増えたという記事に対して、調査した自治体の数が増えたのだから人数が増えて当
たり前で、自治体ひとつ当りの人数は減っている、と私が指摘したのとまったく同じ理屈
です。
◆ イチローは、大リーグの年間最多安打257本へあと７本と迫りました（26日現在）。
残り試合は８試合ありますから、おそらく単独トップになれるでしょう。257本の記録は
1920年のＧ・シスラーのものですから、もしイチローがこれを破れば84年ぶりの更新にな
ります。現地では、何本まで打てるかが関心の対象になっているそうです。
イチローは他にも最多記録を持っています。９月21日のエンゼルス戦でシーズン最多単
打（１塁打）207本目を打ちました。これは、1898年のＷ・キーラー以来、106年ぶりの記
録更新です。また、１試合５安打が４回。これは、大リーグでは５人目のタイ記録。あと
８試合のうちにもう１回あると、単独の最多記録になります。
彼は、１試合６安打の記録を狙ってみたいと言っています。こうした記録を周りの期待
に応えるためでなく、自分自身の目標や夢として持つことができるところが彼の素晴らし
さだと思います。
◆ ９月25日、千葉県茂原市の原口證さん（58歳）は、円周率を５万４千桁暗唱して、19
95年に日本の大学生が達成した４万2195桁の暗唱桁数の最多記録を更新しました。近くギ
ネスブックに申請するとのことです。
私は小数点以下30桁どまりです。
3.1 4 1 592 6 5 3 5 897 9 3 2 38462 64 3 3 832 7 9
産医師異国に向こう、産後疫無く、産婦御社に、虫さんざん闇に鳴く
あと70桁、チャレンジしてみます？
50288 41971 69399 37510 58209 74944 59230
78164 06286 20899 86280 34825 34211 70679
日本の進路研究
いま日本は、国際連合（国連、United Nations：ＵＮ）の安全保障理事会（安保理）の
常任理事国になりたいと世界にアピールしています。
国連安保理という組織は、常任理事国５か国、非常任理事国10か国で構成されています。
世界平和を守る主役として設置され、総会が世界的な問題を何でも討議できるのに対して、
安保理は、平和と安全保障の問題だけを取り扱います。そして、国連の全加盟国（現在
191か国）は、安保理15か国の決定を承認し、実施することに同意しています。
常任理事国は、アメリカ、イギリス、中国、ロシア（発足当初はソビエト連邦）、フラ
ンスの５か国で、国連発足（1945年）当初から変わりありません。この５か国は、第２次
世界大戦における連合国の中心的な国です。「連合国」（the Allies）とは、日本、ドイ
ツ、イタリアの３か国を表す「枢軸国」（the Axis）に対して使われた言葉です。
そういえば、ブッシュ大統領は、９・１１の翌年（2002年）１月の一般教書演説（その
年の大統領の施政方針を発表する演説）で、イラク、イラン、北朝鮮の３か国を「悪の枢
軸」（the axis of evil）と呼んで世界に波紋を広げました。世界中の人々の頭の中には、
第２次世界大戦時の日独伊が思い起されたはずです。当然、大統領はそれを意識して述べ
たのでしょう。
なお、axis は（座標）軸や（円などの）中心軸を表す数学用語でもあります。
さて、一方の非常任理事国は任期が２年で、毎年５か国ずつ改選されます。連続の再選
はできませんが、日本はこれまでに８回選出されています。
今年末で、アンゴラ、チリ、ドイツ、パキスタン、スペインの任期が終わり、今ちょう
ど、来年１月からの５か国を決めようとしていますが、現時点では、アルゼンチン、デン
マーク、ギリシャ、日本、タンザニアが有力視されてます。もし、日本が常任理事国にな
れば、非常任理事国として別の国が入ってくるのでしょう。
常任理事国の最大の特権は「拒否権」です。これは、安保理において、常任理事国のう
ち１か国でも反対すれば、その議案は否決されるというものです。ここには民主主義はあ
りません。世界の秩序はこうした仕組の中で決められているのです。
そこで、常任理事国を拡大するにあたっては、新理事国に「拒否権」を与えるかどうか、
「拒否権」そのものを存続させるかどうかがひとつの論点になっています。
また、どの国を入れるかということもまだ調整がついていません。日本、インド、ドイ
ツ、ブラジルは、常任理事国になることを相互に支持することを確認し合っています。
それに対してイギリスとフランスはこの４か国の支持を示していますが、フランスは、
更にアフリカの１か国を入れるべきだと主張しています。イタリアは、ドイツに反発を覚
え、常任理事国を拡大しても加盟国間の対立や不満を招くだけと批判しています。中国は、
また「歴史認識」を持ち出して日本を牽制しています。パキスタンはインドに、メキシコ
はブラジルに不満を持っているようです。ロシアについては私はまだ確認していません。
そして、最も重要なアメリカはというと、どうも態度がはっきりしません。日本への支
持は表明していますが、この問題にはあまり熱心ではないようです。21日の国連総会での
演説でも、ブッシュ大統領は国連の改革には言及していません。アメリカは、国連自体を
それほど重要視していないこともあるでしょうし、とにかくアメリカにとって何が最も得
かを、今、考えているのでしょう。
この点については、日本の常任理事国入りを支持してくれている他の国々も、決して日
本のためを思ってくれているなどと勘違いしてはいけません。すべて、自国の利益を最優
先に考えていると思わなければなりません。
国連の改革も必要でしょうが、それと共に、日本も世界の安全保障のためにどれだけ実
践的に行動できるかということを具体的に整理していかなければなりません。
現憲法のもとで、国連平和維持軍の一員として戦争状態の地域へ自衛隊が行けるのか。
行けないとすれば、常任理事国としての責任は果たせるのか。それとも、憲法を改正する
のか。日本はアメリカとは別に独自の判断で安保理の採決に票を投ずることができるのか
（中にはアメリカの票が２票になるだけという人もいるくらいです）．．．
これは、憲法改正も絡んでこれからの日本を決定する大きな進路選択です。政府は国民
に十分説明しなければなりませんが、諸君も勉強しながら日本の進路についてよく考えて
ください。日本の進路の中に諸君ひとりひとりの進路があるのです。
名誉ある地位を占めたいと思ふ
日本が常任理事国になりたいと本気で思うようになった直接のキッカケは、1990～91年
の湾岸戦争です。これは、90年８月にイラクが突然クウェートに侵攻、10時間足らずで全
土を制圧したのが始まりです。国連安保理はイラクの無条件撤退を決議しましたが、イラ
クはクウェートの併合を宣言し、もともとここ（クウェート）はイラクのものだとか、パ
レスチナ問題が解決するまでなどといろいろ言いながら撤退を拒否したため、翌91年１月、
米軍を中心とする多国籍軍によってイラクを攻撃、いわゆる湾岸戦争の勃発となりました。
アメリカは、日本に自衛隊の派兵を求めましたが、日本の世論はこれを許さず、結局、
総額130億ドル（約１兆６千億円）の財政支援と、戦後、ペルシャ湾の機雷を除去する掃
海艇を派遣することで、日本としては憲法の制約の中で最大限の協力をしたつもりでした。
しかし、戦後のクウェートの謝辞の中に日本の名前はなく、日本はがっかりしたのです。
日本は金だけ出して汗はかかないとか、掃海艇にしても、結局はペルシャ湾を通る日本
の石油タンカーの安全のためだとか言われて、感謝どころではなかったのです。参考まで
に、日本の石油の輸入量の6.9％はクウェートからのものです（2002年度）。
これを機に、まず、日本も海外に自衛隊を派遣できるようにしようという声が高まり、
92年６月に、国連平和維持活動（ＰＫＯ）協力法案が可決されました。
その頃外務省は、「常任理事国の決定に従って金を出す存在から、政策決定に携わり世
界の尊敬を集める『政治大国』になる」という方針のもと、国連への働きかけを始めまし
た。折りしも、95年の国連創設50周年を機に国連を改革しようという機運も高まっていま
した。それで、国連総会は92年12月に、安保理の構成の見直しを促す決議を採択しました。
それから10年あまり、具体的に動き出したというわけです。
それに対して、国内には、武器を取って仲間に入れてもらって尊敬されるよりも、たと
え孤立しても反武力を貫き通した方が "名誉" であるという声もあります。これを、19世
紀に英国のとった政策 "名誉（栄光）ある孤立"（どの国とも同盟や協力関係を持たない）
になぞらえて言う人もいます。また、憲法にしても、現実に合わないから改正しようとい
う考えと、憲法は理想を掲げてあるのであって、現実をその理想に近づけていく努力をす
べきであるという考えとがあります。
どちらが「国際社会において名誉ある地位」を占めることになるのでしょうか。 〟
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