アイデンティティー
《オ～イ、エライことになってしもうたがな～。》
『どないしたんや。そんなに慌てて。』
《どないもこないもないがなあ。アンタ、気ぃついてまへんのか？》
『何がぁ。』
《ビックリせんといてや。落ち着いて聞いてんか。》
『はよ言わんかい。』
《実はなあ、７月の暑いときにやな、アンタとワテが入れ替わってしもたんや。》
『何やそれ。』
《７月の暑さにまいっててここへ登場したときにな、アンタが 『』 になってワテが 《》
になってしもうてるんや。》
『な、なんやとぉ～！ ほならアタシがオマエでオマエがアタシということかいな。』
《ン．．． イヤ～、そんな大げさなことやないと思うねんけど。》
『けど、そうやろ。本当はアタシが 《》 でオマエが 『』 やったのが、７月の暑さか何
かのせいで入れ替わってしもうたっていうことやろ。』
《まあ、そうなんやけど。なにも、ワテらそのものが入れ替わってしもうたということで
はないと思うんやけどなぁ。ただ、外見が変わっただけやないかなぁ。けど、アンタに
言われたら心配になってきたがな。このワテはホンマはアンタなのかいなぁ．．．？
どないしよう～。》
『そやなぁ。冷静に考えてみると、ワタシら自身は自分で何にも違和感はないわけやし、
別にこれで困るわけでもないしなぁ。ワタシらのアイデンティティーって、なんやろ。』
《アイデンチチー．．．？》
『オマエ、発音悪いなあ。ｉｄｅｎｔｉｔｙや。辞書には、"身元" とか "本人であるこ
と"、"主体性"、"個性"とかって書いてあるな。ＩＤって略すこともある。』
《あぁ、ＩＤカードやな。身分証明書やろ。》
『そうや。』
《ほなら、ワテのアイデンテテーは、この
んかなぁ。》
『そうや。ワタシらが自分であることの
ろか。』
《それじゃ、『』 か 《》 かっちゅうのは、着てる服の違いということやな。》
『そうや。アタシらの場合はその程度のもんやさかい、《》 に入っていようが 『』 に
入っていようが別にかまへんけどな、実際に自分の入れ物が変わったらどんな感じにな
るんやろな。』
《自分の入れ物って、ワテらは 《》 か 『』 やけど、ふつうは体のことになるんかな。》
『一番直接的なのはそうやな。肉体や。』
《なんか、そんなドラマあったな。高校生の男の子と女の子がある日突然、体が入れ替わっ
ちゃうの。》
『体が入れ替わったんか頭の中が入れ替わったんか分からんけど、こういうときの "自分"
はもとの体の方なのか、別の体になった方なのか、どっちやと思う？』
《そうやなぁ．．． やっぱり、別の体になった方が "自分" やろ。"自分" っちゅうの
は、そう考えてる本人が "自分" なんやし、「自分は "自分" だ」って考えるのはアタ
マやさかい、いくら体の格好が変わったかて、「自分は "自分" だ」って考えてるアタ
マのある方が "自分" というよりしゃあないやんか。自分の外のものは確信もてへんけ
ども、"自分" を意識している自分は確実に "自分なんや" と確信できるやんか。》
『オマエは時々、ややこしいことをスラスラーっと喋るんやな。催眠術かなんかにかかっ
とんとちゃうか。』
《へへへ。受け売りや、受け売り。》
『どうりでな。で、誰の受け売りか知っとんのか。』
《多分、デカルトはんやろ。》 René Descartes（1596～1650）
『そうやろな。"我思う、ゆえに我あり" ってことばで有名や。デカルトは、魂と肉体を
分けて考えて、「方法序説」という本の中で「わたしは一つの実体であり、…わたしを
いま存在するものにしている魂は、身体からまったく区別され、しかも身体より認識し
やすく、たとえ身体がなかったとしても、完全に今あるままのものであることに変わり
はない」と書いたはるねん。
身体のほかに、"自分" の入れ物って、ないかな。』
《ほかに？》
『今度は実際に変更のきく入れ物や。服とか家とかの物体やないで。』
《えぇ～、なんやろ。》
『たとえば、国籍や。もう少し一般的には、何かの組織やグループに所属していることと
もいえるかな。』
《それがアイデンティティーになるの？》
『お、発音、ようなったな。そうや。デカルトの考えた "自分" は個人レベルの "自分"
やけど、人間は社会的な動物やから、自分が何に属しているのかっていうような、周り
とのかかわり合いの中で自分が何者であるかを認識しなけりゃならん。自分の足場とい
うか根っこというか、それがないと、いろいろな価値観も定まらへんのとちゃうかな。』
《社会レベルの "自分" やな。》
『いくらグローバル化とか地球人やゆうても、現実にはすべての人は必ずどこかの国に属
していて、他の国には勝手に出入りでけへんのや。』
《でも、国籍は変えられるんやろ。》
『そうや。ただ、いろいろ条件はある。日本の国籍法によれば、外国人が日本の国籍を取
得する、いわゆる
壊することを企て、
の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと」というのがあるんや。』
《そりゃそうやろな。それにしても、この条文は悪文やなぁ。》
『悪文はエエとして、逆にな、日本国民が政府を暴力で破壊することを企てたりしても、
最悪死刑という刑罰はあっても日本国籍剥奪という刑罰はないんや。』
《命より大事な国籍．．．か。》
『そういう言い方は誤解のもとや。死ぬまで国籍が保持されるということやろ。
それに、国籍を有することで保護が得られるという面がある。どの国のパスポートにも、
「～国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助
を与えられるよう、関係の諸官に要請する」という内容が英語で書いてあるわな。』
《1999年に国旗・国歌法制定で議論されている最中に、ある県知事が県議会の本会議で
「国旗・国歌を尊敬できない人は日本国籍を返上していただきたい」って言ったことが
あったなあ。》
『個人的にそういう考えを持つのは自由やろうけど、知事という大きな権力を持った人が、
それも議会という公の場で発言したのは問題やと、アタシもその時思ったんや。』
《日本にいる外国人が日本の国旗・国歌にケチ付けるんやったら、自分の国にお帰り願っ
てもええかも知れへんけどな。日本国籍は、国旗・国歌を尊敬することを条件に与えら
れたもんやないやんか。
ところで、自分の自由意思で国籍を離脱することはできるんやろ。》
『それは、自分の志望でどこか他の国の国籍を取得したときだけや。このときは、離脱ゆ
うより、日本国籍を失うと言った方がええ。』
《なるほど。無国籍とか２重国籍にはなれんちゅうことやな。》
『あたりまえや。まぁ、外国で生まれた子供の国籍とかはまた別の規則はあるけどな。』
《それにしても、ワテらのカッコ問題がえらい大きな話になってしもうたな。》
『そうや、カッコより内面のしっかりした足場が大事やと言うことや。』
《ふ～。今日はどうやって締めるんかと思ってヒヤヒヤしてたんや。》
ぷっくんは無事救出
２日間で800人位の人達がぷっくんの救出にかけつけてくれたおかげで、パルム王国に
は再び平和が戻ってきました。めでたし、めでたし。
諸君も御苦労さんでした。高校の文化祭、いかがでしたか？
それにしても、諸君のアイデアや企画力、行動力に感心しました。
それに、ぷっくんの顔、気に入ったので、作者のＹ．Ｓ．さんにお願いして、プリント
の片隅などにたまに使わせてもらうことにしました。
都民の日 ～１０月１日～
1898（明治31）年10月１日に東京市が誕生し、市役所が開設された日を記念して、1952
（昭和27）年に「都民の日」と制定されました。
都民の日条例 （昭和27年９月27日 東京都条例第75号）
第一条 東京都民がこぞって一日の慰楽をともにすることにより、その自治意識を
東京都の発展と都民の福祉増進を図るために、都民の日を設ける。
第二条 都民の日は、十月一日とする。
第三条 都民の日には、東京都庁及び所属公庁は、都政の普及と理解に
設を公開し、各種の記念行事を行うものとする。
第四条 都民の日には、都の営造物及び諸施設の使用料、手数料及び入場料その他の料金
で別に知事が指定するものに限り、当該条例の規定にかかわらず特にこれを減免す
ることができる。
第５条 この条例の施行に関して必要な事項は、知事が定める。
附則 この条例は、昭和二十七年十月一日から施行する。
文化祭は、日曜日でなかったにもかかわらず、１日目1700人、２日目1800人の方が見に
来てくださいました。これは、この条例の第三条にもそぐうのかなと思いました。
体育の日 ～夢のあった時代～
今年は10月11日（月）です。本来は10日で、ちょうど40年前、1964（昭和39）年の東京
オリンピック開会式の日を記念して1966年に制定されたのですが、2000年からは、例のハッ
ピーマンデーで10月の第２月曜日になりました。
10月10日は、よく、晴れの特異日（統計上、晴れる割合が前後の日と比べて高い日）だ
と思われているようですが（わたしもそう思っていた）、当時の晴れの特異日は10月14日
と11月３日ということになっていたようです。
しかし、この時期は、
なく寒くもなく、スポーツにちょうど良い季節であることは確かです。
このころは、日本の高度成長の真っただ中でした。戦後復興の中で、東京オリンピック
という目標ができて、みんな夢を持って一生懸命働いていました。
首都高速や東海道新幹線は、みんな東京オリンピックのために作ったのです。
10月１日の朝刊に、「東海道新幹線は、本日、40周年」というＪＲ東海の全面広告が載
りました。従来の特急では、東京・大阪間が６時間半かかりましたが、夢の超特急「ひかり」では４時間になったのです。現在は「のぞみ」で２時間半にま
で短縮されています。〟 by Y.S.