ジョン・レノン
John Lennon（1940.10.9英リバプール郊外ウールトン～1980.12.8ニューヨーク）
1980年12月８日午後10時50分（日本時間９日午後12時50分）ごろ、ニューヨークのダコ
タ・ハウスの前で、"熱狂的なファン" チャップマンによる５発の凶弾に倒れ、午後11時
15分頃、運ばれたルーズベルト病院で死亡しました。享年40歳。
1975年にオノ・ヨーコとの間に男の子ショーンが生まれ、ジョンは育児に専念するとい
うことで音楽活動を停止しました。いわば、育児休業です。
1980年、ショーンも幼年になり、ジョンも「人生は40歳から」と語り、ヨーコとの共作
アルバム「DOUBLE FANTASY」を発表、その中の「STARTING OVER」が大ヒットしました。
まさに再出発（start over）の矢先の
ファンの凶行ではなく、ジョンの人々への影響を恐れたＦＢＩとＣＩＡの陰謀とも言わ
れています。（東芝ＥＭＩ公式サイトより） 反戦や平和を訴えることは、いつの時代で
も国家権力にとっては目障りな存在なわけですが、真相のほどはわかりません。
と、ここまで書いて、ふと気になりましたが、ジョン・レノンって、諸君も知ってます
よね。元ビートルズ（The Beatles）のメンバーで、ポール・マッカートニー（Paul
McCartney，1942.6.18～）とのコンビで、"作詞・作曲レノン・マッカートニー" といわ
れ、ビートルズ時代の210曲余りのうち160曲以上が２人の作品です。
私が中学１年になったとき、ちょうどビートルズを聞き始めたころに、ポールが脱退し
てビートルズは解散となり、"LET IT BE" がラスト・アルバムになりました。
ほとんどまだ聞いたことのない曲ばかりの入ったＬＰレコードでも買いたいと思い、そ
して、買ってみてどの曲も満足したのは、後にも先にもビートルズだけです。つまり、当
たり外れがないということです。シングル・レコードのＡ面がメイン、Ｂ面がオマケとい
うようなイメージを打ち破ったのはビートルズだったのではないかと思います。
ＬＰを買いたいのだけれど、当時の中学生、高校生にとっては、１枚2500円ほどのレコー
ドは、やはり高価でした。高校のときに少しやったビル掃除のアルバイトが時給330円程
でしたから、ＬＰレコード１枚が８時間分の給料に相当します。今は時給800円位でしょ
うから、ＣＤ１枚が6400円以上といった感じになります。
大学時代までかけて、ようやく、16種のアルバムと何枚かのシングルで全曲集めること
ができました。いつ聞いても、そのときどきの他のヒット曲と並べてみても全く違和感を
感じないのには驚くよりほかありません。
ところで、インターネットの各種のカレンダーのサイト、あるいは個人の日記やエッセ
イなどを見ると、そのほとんどが、12月８日を真珠湾攻撃とジョン・レノンの命日として
います。あの戦争の開始と、反戦・平和を訴えてきたジョンとが対照的で、記念日として
は都合良く思えますが、真珠湾攻撃の８日というのは日本時間であり、ジョンの命日８日
というのはニューヨーク時間なのですから、実際は同じ日付ではないわけです。1980年の
日本時間の12月８日には、ジョンはまだ生きていたんですね。
ハル・ノート ～米国の最後
ジョンが死ぬ39年前に日本が対米宣戦を決意した直接のキッカケとされている、いわゆ
る「ハル・ノート」を見ておきましょう。これは、一連の日米交渉の末に1941年11月26日
に日本政府に手渡されたノート（note＝メモ）で、正式名称は「合衆国及び日本国間協定
の基礎概略」といいます。基礎概略であり、まだ拘束力を持つ正式の文書ではありません。
ハルとは、当時の米国務長官コーデル・ハル（Cordell Hull，1871～1955）のことで、
日米交渉の窓口になっていた人物です。
このノートには、日米両国のこれからなすべきことが10項目書かれています。米国の要
求を見ることで、逆に、当時の日本が何をしていたかが見えてきます。
１．米日は、英国、中国、オランダ、ソ連、タイ国と多辺的不可侵条約の締結に努力する。
２．米日は、英、中、
力をする。
３．日本国政府は中国及び印度支那より一切の陸海空兵力及び警察力を撤収する。
４．米日は、臨時に重慶に置く中華民国国民政府以外の政権は支持しない。
５．米日は、中国国内における一切の権利を放棄する。
６．米日は、通商協定締結のための交渉に入る。
７．米日は、互いの資産凍結措置を解除する。
８．米日は、ドルと円の為替安定計画を協定する。
９．米日は、第三国と締結しているいかなる協定も、太平洋地域全般の平和樹立及び保持
に矛盾するような解釈はしない。
10．米日は、他国に対して本協定の原則を適用させる。
日本は、これらを受入れることはできないとして、開戦を決断したのです。
なお、印度支那とは、現在のベトナム、ラオス、カンボジアのあたりです。
泰（タイ）は、東南アジアで唯一、植民地にならず、独立を保っていた国です。
日本の大陸侵攻の背景
ハル・ノートのメインは第３項です。これを読むと、当時日本は、中国と印度支那に軍
隊と警察を駐留させていたことがわかります。警察がいるということは、実質的に政治支
配をしていたと解釈できます。
1941年までに日本はなぜ、こんなところにまで侵攻していたのかを調べてみます。
明治以降の日本外交は、始めは朝鮮半島から中国（当時は
いました。それは、もし、朝鮮半島がヨーロッパやロシアの植民地になれば、日本もやが
て同じ道を辿るであろうと認識していたからです。
この危惧は、アヘン戦争（1840～42）あたりから、すでに徳川幕府も感じていました。
つまり、"隣のあの大国" 清が英国に敗れ、
償金まで支払わされたのですから、その衝撃は、アジア諸国にとって大変大きなものであっ
たと、私たちも想像できます。
日本は、そうした危険を清の属国である朝鮮に伝え、早く清から独立して開国し、国の
近代化に努めなければならないと訴え続けてきました。しかし、清の
想にどっぷり浸っていた朝鮮の実権を握る
1820～98）は、自分より本来格下の国であるはずの日本に言われる筋合はないとばかりに、
中華思想とは、周辺の国や民族はすべて文化程度が低く、自国に服属するものである、
という思想のことです。
日本は、米国の圧力により開国をし、明治になって近代化に動き出しますが、その間に
も欧露米は、どんどん東アジアを侵食していきます。この、列強のアジア侵攻の凄じさを
知っておかないと、私たちは、日本の近現代史が、まるで日本の
だけの歴史というような印象を持ってしまいます。明治維新前後の列強のアジア支配の年
表を、《》氏に負けないくらいにすらすら～と、列挙してみます。
1815 英 セイロン島領有 1819 英 シンガポール領有 1824 英 マラッカ領有 1842 英 香港領有（アヘン戦争の結果） 1858 露
黒竜江 以北を領有 米 日米修好通商条約締結 〃 英 インド直接統治開始 1860 英九竜 領有 〃 露沿海州 領有 1862 仏 コーチシナ東部領有 1867 英 海峡植民地を直轄地とする 1877（M10） 英 インド帝国成立 1881（M14） 露 清とイリ条約締結 1884（M17） 仏 清仏戦争（～85） 1885（M18） 独 ﾏｰｼｬﾙ･ｶﾛﾘﾝ諸島領有 1886（M19） 英 全ビルマをインド帝国 に併合（ﾋﾞﾙﾏは現ﾐｬﾝﾏｰ） 1887（M20） 仏 仏領ｲﾝﾄﾞｼﾅ連邦成立 1894（M27） 日 日清戦争（～95）
| 米西戦争：キューバのスペインからの独立を米国が支援して在留米人保護を口実に派遣した米軍艦メイン号が爆発・沈没したことで始まった米・スペイン間の戦争。 |
地位の象徴）のようなものだったのです。当然日本も、持つ側になりたかったわけです。
米国→日本 と 日本→朝鮮
さて、日本は1871（明治４）年、清との修好条約に調印し、上海での交易ができるよう
になりました。日本が外国と初めて結んだ
も領事裁判権も認め
裏返しのような感じです。それはともかく、この条約締結は、朝鮮に、朝鮮の宗主国・清
と日本が対等の立場であることを示すためにも必要だったのです。
そして、1876（明治９）年に日朝修好条約を結び、朝鮮を開国させました。この条約の
第１条では「朝鮮国ハ自主ノ
体は、日本だけが朝鮮において領事裁判権を持つ不平等条約なのです。
すでに朝鮮では、高宗が成人したのを機に大院君は政権から退き、高宗による親政にな
り（実権は
それでも発言力のある大院君は、不平等条約に大反対でした。しかし、いま朝鮮が日本と
戦争をして朝鮮が負けたら、清国にとっても不利ということで、清の
が朝鮮に圧力をかけ、対日和解をさせたのでした。
日本は、欧米列強との不平等条約に困り、条約改正を明治政府の大きな課題としていな
がら、朝鮮に対しては、それを押しつけるということをやったわけです。
諸君はどう思いますか。
自分が嫌だと思うことを他に押しつけるのはけしからん、ですか？
あるいは、当時の国の力関係では当然のこと、ですか？
朝鮮半島を足場に満州へ
ここからいきなり、日本がどうして中国や仏印まで侵攻して行ったのかを話すには、相
当無理があります。無理して短くすると、説明不足で誤解を招くような表現になる心配も
あります。しかし、これは歴史の専門書ではないので、敢えてやってみましょう。
＜ＷＥＢ版注釈＞
本紙オリジナル版は、１ページＢ５版４ページ分をＢ４版藁半紙両面に印刷してあり、
物理的に行数に制約がありました。ここですでに、４ページ目の半分を超えており、あと
14行分しかスペースがないのです。
日本の当初の心配は、ロシアの南下です。英仏独などとは違って、ロシアは地続きで南
下してくるので大変な脅威なのです。ロシアが韓国国境をも越えてきて、日本国内は対露
戦の世論が高まってきました（０１６号の征露丸の話、覚えていますか）。シベリア鉄道
が完成したら、もう、食い止められません。それで、シベリア鉄道完成の前に日露戦争を
開始したのです（1904（明治37）年）。これで米国は、日本を仮想敵国としました。
"奇跡的に" ロシアに勝った日本は、満州に入ることができました。
そのうち、日本の人口増加もあって満州への移住も増え、産業も発展し、満州を日本、
ロシア、清、いずれからも独立した国にする構想が生まれました。
ところが、満州の日本陸軍「関東軍」は、本国政府のコントロールが効かなくなってき
ました。関東軍は、万里の長城を越えて南下し、盧溝橋事件で日中全面戦争の一歩を踏み
出します。戦争が長引くと、多くの石油が必要になります。1939（昭和14）年の石油輸入
量の90％が米国からです。米国以外の輸入先を見つけなければなりません。それがインドネシア方面だったわけで、日本は、北の満州の守りと同時に、南進
の方針も決め、1941年夏に仏印まで出て行ったと言うわけです。 〟