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学年末考査１週間前！ 　「２月は逃げる」と言われるように、本当に早いもので、２月もあと３日です。来週の 金曜日（３月４日）から学年末考査です。 　先日、２学年で実施される数学の展開授業のクラスの希望調査が実施され、進級に向け ての準備も始まっています。まだ進路を確定させる必要はありませんが、これから10ヶ月 程の間にはある程度の方向は決めなければなりません。 ２・２６事件 　1936（昭和11）年２月26日午前５時頃、今朝よりももっと多く、夜半から降った30年ぶ りの大雪の積もる中、陸軍の一部の青年将校らと約1400名の兵が、首相や大蔵大臣などの 閣僚の官邸や私邸、警視庁、陸軍省、参謀本部、朝日・報知・国民・東京日日(にちにち)の各新聞社 などを一斉に襲い、占拠するという大事件が起こりました。 　首相官邸へは、中尉や少尉が重機関銃やピストルを装備した約300名の兵を指揮して向 かい、岡田啓介首相（海軍大将）を殺害しようとしましたが、首相はうまく隠れることが でき、たまたま官邸に泊まっていた首相の妹の夫（予備陸軍大佐）が間違えて射殺されて しまいました。 　斎藤実(まこと)内大臣邸へは150ほどの兵が向かい、大臣は、全身47箇所に銃弾が打ち込まれ、 数十ヶ所を斬られて即死。最初の銃弾で倒れたところへ夫人が覆いかぶさり「殺すなら私 を殺してください」というのを引き離して、一斉射撃をしたのでした。斎藤も海軍大将で した。 　大蔵大臣邸は、２人の中尉が指揮する約120名の兵が侵入。「天誅(てんちゅう)！」と叫んで、まだ 就寝中の高橋是清(これきよ)大臣の布団をめくり、ピストルで射殺。 　陸軍教育総監私邸は、斎藤邸を襲ったあとの２人の少尉が約30の兵を引き連れて軍用ト ラックで襲撃。渡辺錠太郎(じょうたろう)総監もピストルで応戦しましたが、弾が尽き、機関銃の弾を浴 びて死亡。 　侍従(じじゅう)長官邸へは、１人の大尉が率いる兵約200名が向かいました。広い邸内でようやく 鈴木貫太郎侍従長と夫人を見つけ、曹長(そうちょう)が兵隊を下がらせ、「閣下、昭和維新のため、一 命を頂戴致します」といって、ピストルで２発打込みました。うつぶせに倒れた鈴木に夫 人は駆け寄り、とどめを刺そうとした大尉に「それだけはどうかやめてください」と頼ん だので、大尉は引き上げました。鈴木は一命を取り留めました。彼は９年後、終戦処理の ための首相になります。彼も元海軍大将でした。（侍従＝天皇のそばで仕える人） 　陸軍省は、"反乱部隊" の連絡場所として占拠され、警視庁は、約400名の武装した兵に より占拠され、外部との通信が遮断されて麻痺状態となりました。 　新聞社は、「蹶起(けっき)趣意書」を新聞に掲載することを強要されました。（蹶起＝決起） 　午前９時までには、国会議事堂を中心とする官庁のほとんどが占拠されてしまいました。 勘違い 化育：天然自然が万物を生じ育てること。 八紘：四方と四隅、全世界。 一宇：一軒の家。 八紘一宇：日本書記によれば、神武天皇が 　奈良の橿原宮で即位するときに建国の理 　想として述べたとされる言葉。明治天皇 　も、この言葉を用いて明治の理念を宣言 　した。その後、日中戦争・大東亜戦争の 　口実として利用された。東京裁判では、 　これは道徳上の目標と認定。 国体：国の形。 倫敦海軍条約：０３６号参照。 教育総監更迭：1934(昭和９)年の士官学校 　事件(下の年表参照)を契機に青年将校か 　ら信頼された真崎甚三郎教育総監が更迭 　され、後任に渡辺錠太郎が任命された。 更迭：その役目の人を替えること。 統帥権干犯：０３６号参照。 偕窃：臣下が君主に属するものを押領する 　(無理やり奪う)こと。 三月事件：1931(昭和６)年３月の右翼と陸 　軍の一部によるクーデター未遂事件。宇 　垣陸相を首相にしようと画策。国民には 　終戦まで知らされなかった。 匪：悪人。 学匪：天皇機関説を唱えた美濃部達吉東大 　教授を指したもの。 天皇機関説：憲法の解釈で、統治権は国家 　にあって、天皇はその総攬者として国家 　の最高機関であるという説。美濃部は２ 　・２６事件の５日前に右翼に襲われ負傷 　している。 共匪：共産主義者。 大逆教団：大本教(おおもときょう)という当時の新興教団 　で、教義の中に、大本教の本部が神の命 　令を受けて政務を天皇に与え、天皇がそ 　れに従って政治を行うという部分があっ 　たため、1935(昭和10)年12月に不敬罪と 　治安維持法で幹部が起訴され、本部もダ 　イナマイトで徹底的に破壊された。 至らざるなき：２重否定で、至ったという 　意味。 滔天：天まではびこりわたること。 　「蹶起趣意書」には、次のようなことが書かれて いました。 　「我神州(わがしんしゅう)たる所以(ゆえん)は、万世一神たる天皇陛下御(おん)統 帥の下に、挙国一体生成化育(かいく)を遂げ、終(つい)に八紘一宇(はっこういちう) を完(まっと)うするの国体に存(そん)す。 … 所謂(いわゆる)元老重臣(じゅうしん)軍閥 官僚政党等は此の国体破壊の元兇(げんきょう)なり、倫敦(ロンドン)海軍条 約並(ならび)に教育総監更迭(こうてつ)に於ける統帥権干犯、至尊(しそん)兵馬 大権の僣窃(せんせつ)を図りたる三月事件或いは学匪共匪大逆(がくひきょうひたいぎゃく) 教団等利害相結(あいむすん)で陰謀至らざるなき等は最も著(いちじる)し き事例にして、其(そ)の滔天(とうてん)の罪悪は流血憤怒真(まこと)に譬(たとえ) へ難き所なり。」 　昔の文章は難しいですね。漢字が多いです。 　さて、何回か読むうちに大雑把にでも伝わってく ると思いますが、要するに彼らは「天皇をトップと する神の国を破壊しようとした数々の陰謀は罪悪で あり、非常に怒っているぞ！」ということです。 　そして、「陸軍大臣要望事項」という文書には、 陸軍大臣は急いで事態を収集し、この事態をキッカ ケに維新の方向へ導けとか、大権を干犯した宇垣(うがき)朝 鮮総督らを逮捕しろとか、ソ連威圧のために荒木大 将を関東軍（満州駐留の陸軍）指令官に任命しろというようなことが書かれています。 　このあと自分たちでどうするかという計画は何もない他力本願な訳で、昭和維新といい ながら、明治維新とは似ても似つかぬ、非常に稚拙(ちせつ)な反乱と言えます。それで殺された人 達は実に気の毒なことだと私は思います。 　岡田、斎藤、鈴木の３人の大将をやられてしまった海軍は憤激し、昼頃には第一艦隊を 東京湾に結集させ、翌日午後には40隻ほどの軍艦が御台場沖に着き、東京に向けて艦砲射 撃の態勢に入りました。 　天皇は、26日のうちに「朕(ちん)自らが近衛(このえ)師団を率いて鎮定(ちんてい)にあたろう」と言われたという ことですが、もう少し反乱軍を説得しようということで、まず政府は、26日夜に閣議を開 き、戒厳令の施行を決めました。しかし27日中、反乱軍内では徹底抗戦という意見が多数 を占めていました。（近衛師団＝皇居の護衛を主目的とした兵の組織） 　28日朝５時過ぎ、反乱軍は直ちに所属部隊に帰還せよという奉勅(ほうちょく)命令（天皇の命令に よって発せられた命令）が出されましたが、反乱軍内は、帰順か抵抗かでまだもめていま した。 　けれども29日朝、包囲軍が戦車を配備して「今カラデモ遅クナイカラ原隊ヘ帰レ。抵抗 スルモノハ全部逆賊デアルカラ射殺スル。オ前達ノ父母兄弟ハ国賊トナルノデ皆泣イテオ ルゾ」というビラをまき、ようやく続々と投降し始めました。「今からでも遅くない」は その後、流行語にもなりました。 　この若い将校たちは、天皇は自分たちのことを理解してくださると思ったのかも知れま せんが、それは大きな勘違いだったといえるわけです。全く逆に国賊呼ばわりされたのだ から、ショックだったに違いありません。本来ならば切腹ものでしょうが、自決したのは、 警視庁占拠を指揮した野中四郎大尉だけでした。自決が少なかったのは、その後の法廷に 望みをつないだからという見方があります。しかし、特設軍法会議において７月、首相官 邸襲撃を指揮した大尉ら７名に死刑が言い渡され、１週間後に執行されました。その他も 重い刑が言い渡されました。 　ところで、昨年の10月下旬、赤坂御用地で行われた秋の園遊会で、招待された各界の著 名人が自分の活動について天皇陛下にご報告する場面があるのですが、そこで「日本中の 学校で国旗を揚げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます。今頑張っております」 と胸を張って言う一人の東京都教育委員の話に対して、陛下が「やはり、強制になるとい う考え方でないことが望ましいですね」と述べられたというニュースを聞いたとき、私は 瞬間的に、２・２６事件の若手将校たちを連想してしまいました。 　園遊会の "勘違い" で有名なのは、1982（昭和57）年の春、前年に柔道世界選手権で史 上初の２冠王になった山下泰裕選手の話があります。昭和天皇の「柔道は骨が折れますか （大変ですか）」というお声に、山下選手は「はい、２年前に骨折しました」と答えたと いう、こちらは微笑ましい勘違いでした。 政党政治の終焉 　０３６号で述べた浜口雄幸首相銃撃事件から２・２６事件までの大まかな流れを年表に しておきます。個々のできごとについては本紙で扱う余裕はありませんが、軍の台頭が感 じ取れるでしょう。 　なぜ軍が台頭してきたかというと、軍縮ムードで兵隊は肩身の狭い思いをしているとこ ろへ「統帥権干犯問題」が起こり、また、いつまでも第１次世界大戦後の不況から脱する こともできず、軍の不満は増すばかりであったということが原因として考えられます。そ の際、天皇に直接仕える軍隊というプライドが、不満を一層増幅させていたと私は思いま す。２・２６事件でも、天皇の権力を頼みの綱としている点は見逃せません。 1930(昭和５)　４月22日　ロンドン海軍軍縮会議で条約調印 　　　　　　　11月14日　浜口雄幸、東京駅で撃たれる 1931(昭和６)　３月　　　陸軍大臣・宇垣一成を首相にすることを目指したクーデター未 　　　　　　　　　　　遂（３月事件） 　　　　　　　９月18日　関東軍の独断で柳条湖事件から満州事変勃発 　　　　　　　10月17日　満州事変の不拡大方針を決めた幣原喜重郎内閣を倒し、荒木貞 　　　　　　　　　　　夫陸軍中将内閣樹立を目指したクーデター計画発覚（10月事件） 1932(昭和７)　２〜３月　右翼の血盟団が井上準之助前蔵相や三井財閥の幹部を暗殺 　　　　　　　　　　　（血盟団(けつめいだん)事件） 　　　　　　　５月15日　陸海軍将校ら、首相官邸などを襲撃し犬養毅(いぬかいつよし)首相を射殺 　　　　　　　　　　　（５・１５事件） 　　　　　　　７月30日　ドイツでヒットラー率いるナチスが第１党になる 　　　　　　　９月15日　日満議定書に調印、満州国を国として承認。 　　　　　　　９月30日　リットン報告書（満州調査の報告書）、国際連盟に送付される 　　　　　　　　　　　（満州国を認めず、中国の一部として自治権を認める等、日本の 　　　　　　　　　　　　主張に反する内容） 1933(昭和８)　３月28日　日本、国際連盟脱退を正式に通告 　　　　　　　12月23日　松岡洋右(ようすけ)、政党解消連盟結成 1934(昭和９)　10月１日　陸軍省、「国防の本儀と其(その)強化の提唱」を発表 　　　　　　　11月20日　陸軍青年将校のクーデター計画摘発される（士官学校事件） 　　　　　　　12月29日　日本、ワシントン海軍軍縮条約廃棄を通告 1935(昭和10)　２月19日　美濃部達吉の天皇機関説が問題視される 　　　　　　　８月12日　相沢三郎陸軍中佐、永田鉄山(てつざん)軍務局長を暗殺（相沢事件） 　　　　　　　12月８日　大本教教主ら、不敬事件で検挙 1936(昭和11)　１月15日　日本、ロンドン海軍軍縮会議を脱退 　　　　　　　２月21日　美濃部達吉、右翼に襲われ負傷 　　　　　　　２月26日　皇道派青年将校によるクーデター（２・２６事件） 　当時の陸軍の中は、大きく２つの "派閥" に分かれ、主導権争いをしていました。 　ひとつは、この２・２６事件を起こした皇道(こうどう)派と言われるグループで、クーデターによっ て政党政治を排し、天皇が統帥する軍による政治体制を目指すという、若手将校中心のグ ループです。（クーデター（coup d'Étar）＝（仏）武力を用いて政権を奪い取ること） 　もう一つは、統制派というものです。こちらは、クーデターという急進的な手段ではな く、軍の統制を維持し、合法的に国家改造をしようとする、中堅将校を中心とするグルー プです。しかし、両者とも天皇による親政を望んでいた点は同じです。 　２・２６事件後、皇道派は完全に追い払われ、統制派が実権を握り、反対する者は反乱 軍の仲間とみなされ、容赦なく追放され、陸軍の力は強大になっていきました。 　また、こうした事件が起こったのは政財界の腐敗が原因であるとして改革を迫り、岡田 内閣の後の広田広毅(こうき)内閣組閣では、陸軍の気に入らない閣僚をほとんど排除することに成 功し、陸軍の意向に沿った政治が行われる体制が整っていくのでした。 　あと、まるで申し合せたかようにドイツのナチスの台頭と歩調が合っているのですが、 そもそも、第１次世界大戦後、特に仲が良かった訳でない日独伊だけにファシズムが台頭 してくるのにはどのような背景があったのか、私にはまだまだによく分かりません。 ブルガリアの解放記念日　３月３日 　桃の節句の話をするつもりでしたが、カテリーナさんとの縁で、この日はブ ルガリアが1879年にオスマン帝国（トルコ）から解放された記念日で、祝日に なっているという話をして、今回はおしまいです。　　　　　　　　　　　��

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