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複眼 　Ｎｏ.０４１　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2005年３月25日 《なんや、今年はこれでやっと３回目の出番やいうのに、もう、１年の終わりかいな。》 『そうや。いろいろな話があったけど、みんなちゃんと読んでくれはったやろか。』 《ともかく字ィが多いさかい、見ただけでいやンなる人も多かったやろうなぁ。けど、是 　非、後からでも読んでほしいと思うな。アテらも頑張ったんやさかい。》 『１ページでだいたい原稿用紙４枚弱やから、４ページで15枚前後や。アナウンサーのよ 　うに音読しても10分そこそこや。』 《それに、途中でアンタとアタシが入れ替わってしまったりもしたもんなぁ。遠い夏の思 　い出．．．　けど、今までのところ何の問題もないなあ。アテらのアイデンティティー 　って、こんなもんかいな。》　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（→０１９号） 『そう悲観することはない。衣裳が変わっただけや。アタシらのアイデンティティーはこ 　の "複眼" そのものや。』 《それって、安心していいんかぁ？　なんや、行き当たりばったりでやってきたような気 　がするんやけど。》 『確かに、アタシらは行き当たりばったりで出たり出なかったりやったけど、"複眼" そ 　のものは筋を通してきたはずやと、著者は言うとるでえ。』 《いろいろな話言うても、かなり、話題は偏(かたよ)っとったと思うけどな。》 『しゃあないやんか。書いとる人が数学の教員で、特に文学や芸術関係はからっきしダメ 　なんやから。もともとが理屈っぽいんや。』 《なんで数学の話はほとんどせえへんと、歴史の話が多なったん？。》 『聞いたところでは、クラス担任としては教科から離れたいという願望があったというこ 　とらしいわ。かと言うて、たいした趣味もないのに教科から離れて何が話できるかいなっ 　てことなんやけど、どっちにしても教員の性(さが)から逃れることはでけへん。』 《何やの、教員の性って。》 『教員っちゅうのは、たいして詳しく知らないことでも、知ったかぶりして教えたがると 　いう性質があるんや。それに、一人の大人として次世代に伝えたいことがある、という 　ことも重なって、ああいう話になったそうや。』 《ふ〜ん。で、何を伝えたかったん？》 『おいおい。オマエは何もキャッチでけへんかったんか。ったくぅ。ボケなのか本当に知 　らんのか、ようわからんなあ。』 《ボケに決まっとるやんか。アンタとアテの仲やで。それくらいわかっておくれやすな。》 『わかっとる、わかっとる。オマエが前説(まえせつ)やったこともあったもんな。』（→０２８号） 《へへへ．．．　ま、そういうこと。》 『ともかく、この学年は昭和と平成の変わり目に生まれた子たちやから、そこを近現代の 　日本の歴史について話すちょうどいいキッカケにしたと言うとった。歴史を知らないと 　未来は語れないということが、伝えたいことのひとつやって。』 《そういえば、００１号は元号の話から始まったの思い出したわ。それに、今年がちょう 　ど終戦60周年やしな。50年や100年という区切りとは別に、アテら日本人は、60周年と 　いうのにもひとつの大きな区切りを感じるんやね。》 『そう、還暦っていう区切りやね。十干十二支(じっかんじゅうにし)がひと回りして、生まれたときの干支(えと)に戻 　るんや。これは、西洋人は、多分感じることのない区切りや。特に、定年退職なんてこ 　とも重なると、実生活が大きく変わる節目でもある。』 十干：甲乙丙丁戊己庚辛壬癸(こうおつへいていぼ　き　こうしんじんき　)のこと。もともとは、日の順序を表す記号（数字の代 　り）であったと考えられている。つまり、１ヶ月を上旬、中旬、下旬に分けて、十干を 　３巡させる。日本の昔の学校などでは、成績を甲乙丙丁戊の５段階で表していた（甲が 　｢５｣、戊は｢１｣に相当）。十干の起源は、紀元前1600年頃〜1100年頃、黄河文明の最初 　の国家と考えられている殷(いん)の時代までさかのぼることができると言われている。 　　その後、中国の古代哲学において、天と地の間の事物は「陰」と「陽」が互いに調和 　して秩序が保たれているという思想（陰陽(いんよう)説、紀元前500年頃）が起こり、続いて、す 　　　　　　　　　　　　　　　　　　おんよう 　べてのものは、｢木｣｢火｣｢土｣｢金｣｢水(ぼく　 か　 ど　　ごん　すい)｣の５つが互いに移り変りながら変化していくとす 　る思想（五行説、紀元前400年頃）が、陰陽家・スウ（馬ﾍﾝに芻）衍(エン)が唱えた。 　　そして、５行を陽（兄(え)）と陰（弟(と)）に分けて10種とし（陰陽五行説）、それを十干に 　割り振ったのである。 　　　木の兄 木の弟 火の兄 火の弟 土の兄 土の弟 金(か)の兄 金の弟 水の兄 水の弟 　　　 ↓　　 ↓　　 ↓　　 ↓　　 ↓　　 ↓　　 ↓　　 ↓　　 ↓　　 ↓ 　　　甲(きのえ)　　乙(きのと)　　丙(ひのえ)　　丁(ひのと)　　戊(つちのえ)　　己(つちのと)　 庚(かのえ)　　辛(かのと)　 壬(みずのえ)　 癸(みずのと) 　それで、甲を「きのえ」と読んだりする。 十二支：子丑 寅卯辰巳牛 未 申酉 戌 亥(ね うし とらうたつみうまひつじさるとりいぬ い )のこと。十干より古いとも言われている。十二 　　　　しちゅういんぼうしんしごびしんゆうじゅつがい 　支は、はじめは12ヶ月の順序を表す記号であった。その後、時刻では、子(ね)の刻(こく)が夜11時 　〜１時（草木も眠る丑満刻(うしみつどき)は深夜１時〜３時の真ん中、午前２時のこと）や方角では 　子(ね)の方角が北を表すのにも使われるようになった（辰巳(たつみ)＝巽の方角は東南）。 　　十二支に十干を順に割当てて、1・甲子(きのえね)、2・乙丑(きのとうし)、3・丙寅(ひのえとら)、4・丁卯(ひのとう)、 　5・戊辰(つちのえたつ)、6・己巳(つちのとみ)、7・庚午(かのえうま)、…、56・己未(つちのとひつじ)、57・庚申(かのえさる)、58・辛酉(かのととり)、 　59・壬戌(みずのえいぬ)、60・癸亥(みずのとい) で一巡りする。 　　日本史では、十干十二支を使った事件の名前が多く出てくる。たとえば、明治維新の 　際の戊申(ぼしん)戦争は、 戊申 (つちのえさる)の年に起こった戦争ということである。高校野球で有名な甲子 　園は、完成した大正13（1924）年が十干十二支の最初の年、甲子(きのえね)で縁起が良いというこ 　とで、その周辺の地域を甲子園と名付けたというのは有名な話である。 《節目というのはいろいろ話題になるやろ。》 『そうや。そういう所にもみんなには注目しておいて欲しいということや。たとえば、本 　紙０３２号にも書いてあるけど、特に、韓国との関係は既に問題になっておる。』 《今は、島根県の竹島の問題やろ。竹島のことを韓国では独島(トクト)と呼び、韓国の領土と言い 　張って不法占拠しとるんやな。》 『竹島が島根県に編入されたのがちょうど100年前、1905年や。当然、当時は誰も文句は 　言わへんかった。ところが、太平洋戦争で日本が負けてＧＨＱに占領されたときに、Ｇ 　ＨＱは、竹島に限らず、北方領土や小笠原諸島、沖縄を日本の行政権からはずしてしも 　うたんが、竹島問題の発端や。日本が独立を回復する３ヶ月前、1952年１月に、韓国の 　初代大統領・李承晩が勝手に竹島を韓国に含むように海洋主権を宣言するライン、いわ 　ゆる「李承晩(りしょうばん)ライン」を一方的に設定して以来、竹島問題が始まったっちゅうわけ 　　　　イ スンマン 　や。』 《日本は文句言わんかったんか？》 『当時の日本は独立国やないから、竹島の領有権を主張する立場にはなかったんや。』 《ＧＨＱは何も言わんかったんか？》 『特に何も言わんかったようや。というより、米国にとってはどちらでもええことなんや 　ろ。うっかり領土問題に首を突っ込むと面倒なことになって、米国には何の利益もない 　さかいな。領土問題は、当事者どうしで解決するのが原則や。日本は、1954年に国際司 　法裁判所に提訴することを韓国に提案したんやけど、韓国は拒否したんや。竹島は、在 　韓米軍が管理していたんやけど、1948年に大韓民国が成立したとき、竹島は韓国に返還 　されたのだというのが韓国の言い分や。』 《返還って、一度も韓国領になったことないのにヘンやないか。》 『そやから、日本はおかしいって抗議しとるんや。』 《抗議したって、韓国は竹島に警察を常駐させて、宿舎を作ったり灯台を作ったり、5000 　トン級の船の接岸施設を作ったりと、着々と "実績作り" を進めとる。日本はどうする 　こともでけんのかいな。》 『外務省も抗議する以上のことはでけへんし、そもそも、日本人はあまり関心持っとらん 　ので、竹島が日本人から忘れ去られへんようにと、編入100年の節目の今年、３月16日 　に島根県は、条例で２月22日を竹島の日に定めたんや。』 《領土問題は、本来は国がきちんとせなあかんのに、地方自治体の島根県に任せっきりっ 　て感じやな。外務省は、友好関係というのは反対意見を言わないことという、何か大き 　な勘違いをしとるような気がするやけど、どう？》 『そうや。国どうしやのうても、日本人は、友達関係もそう思うとる人が多いようやで。 　意見が違ったら、もう友達ではいられへんと思うてしまうんやな。だから、友達には反 　対意見は言わない、議論はしない、お互いに "うん、うん" ってうなづき合っているの 　が、仲がいいと思うとるんや。』 《みんな、ほんまか？　そんなのは本当の友達とは言えへんで。ガラスの友達や。仮面を 　かぶった友達や。ちょっとつついたら壊れてしまう。本心が見えへん。》 『日本は "友好、友好" って口で言うだけで、いつもことなかれ主義になってしまうんや 　な。波風立てたらアカンって思うてしまうんやな。それに対して、というか、日本が何 　もしないのをいいことにっていうのか、条例に反発してソウルの日本大使館前では抗議 　デモが行われたり、一部のタクシーが日本人を乗車拒否したり、島根県と姉妹都市提携 　をしている慶尚北道の知事は、条例は主権国家・韓国への侵略行為やと言うて、15年間 　続けてきた姉妹縁組を撤回し、島根県との断交を宣言したんや。』 《それに、27日に予定されていた大学サッカー日韓定期戦が、不測の事態を懸念してとい 　うことで韓国側から延期を申入れてきたしな。》 『それとは裏腹に、日本では韓(ハン)流ブームとやらで、大勢の日本人が韓国へ行って、ヨン様 　のロケ地を巡ったり御土産を買ったりと、交流は盛んや。そんな観光地では、韓国人も 　いっぱい儲けて喜んどる。ともかく、一面だけを見ておっちゃいかんということや。』 《"複眼" で見ろってことやろ。韓国人全部が反日というわけやないってことも知ってお 　かなアカンのやな。》 『ともかく、今年はひと波瀾もふた波瀾もありそうや。これからどう解決していくかは、 　まずは正しい歴史を知っていなけりゃならんっちゅうことや。この竹島問題は現在進行 　中や。みんなも新聞よく読んで、勉強してんか。できたら、複数の新聞を読むとええん 　やけどな。図書館で自宅と違う新聞読むとええ。それに、日本史・世界史は、テストの 　為だけやない、現実の問題解決の足掛りとして、しっかり勉強してんか。』 《ところで、４月からアテらは一体どうなるんやろ。これで終りかいな。》 『さあ。どうなるんやろな。』 　というわけで、予想以上の回数になり、私自身驚いています。かえって週刊だとかいう ようなノルマを課さず、単に伝えたいという気持ちに従ってやってきたのが良かったよう に思います。 　さて、２年目の "複眼" については未定ですが、気が向いたらまた出そうかと思ってい ます。学級通信とは違うのだけれども、いちおう、私の担任のクラスだけに配布すること になると思います。もし、発行されるなら続けて読みたいという人がいたら、申し出てく ださい。配布の仕方を何か考えようと思います。 　諸君も、この１年ですっかり本校の生徒らしくなりました．24日は新入生の召集日でし た。午前中に新入生を見て、午後、諸君を見たら、やはり、この１年は大きいなあと実感 しました。 　この次の１年は、もっと大きな１年であるはずです。これからの活躍を期待 します。 　ともかく１年Ｂ組の諸君、１年間ありがとう。　　　　　　　　　　　　��

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