Ｉｔ'ｓ ｔｏｏ ｌａｔｅ．
前号のゴールデンウィークの記述で、３連休×２＋２連休と書きましたが、本校
は、後ろの２連休はなかったのでした。お詫びし、訂正致します。
と、いまさら言っても、もう、遅過ぎますね。ゴメン。
Ｉｔ'ｓ ｔｏｏ ｅａｒｌｙ．
前号の祝日法改正について、実は、まだ参議院を通過していないので、決定ではありま
せんでした。
４月５日に前号で紹介した内容の改正案が衆議院を通過したのですが、そのことを書い
た新聞記事で、「来週中には参議院で可決される見通し」とあるのを、次週に確認せずに
私が早とちりで書いてしまったのです。早過ぎでした。ゴメン2
で、実は、５月に入ってもなお、参議院では審議すら始まっていないようです。理由は、
あの中国の反日暴動の激化で、中国を「昭和」で刺激すべきではないという配慮があると
のことです。
なんと！ 日本は今もなお、自国の祝日すら自由に決められない国なんだ！
ということで、「昭和の日」と "確実な" 振替えの実現は、今しばらく様子を見なけれ
ばなりません。
ＷＥＢ版補足（2019年６月28日）
2005年５月13日に参議院本会議で可決成立し、予定通り、2007(平成19)年から施行され
ています。
４月29日 昭和の日 激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。
これに伴い「みどりの日」は、これまで「国民の祝日」だった５月４日に移行されまし
た。
５月４日 みどりの日 自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ。
なお、最新の祝日についてはこちらをご覧ください。
授業の単価
４月30日土曜日、朝の地下鉄には、普段通りの格好で通学している私立高校の生徒の姿
がありました。土曜を休みにしない私立は、前半の３連休もなかったわけです。
10年ほど前、第２・第４土曜日が休みになったとき、新学期が始まって間もない頃の電
車の中で、違う制服の２人の女子生徒がこんな会話をしていたのを今でも覚えています。
女子Ａ「アンタんとこ、土曜休みじゃないの？」
女子Ｂ「そうよ。」
Ａ「え～、かわいそう。」
Ｂ「休みになったら授業料返せって言いたいわよ。」
覚えているのはここまで。
この女子Ｂがしっかりし過ぎているのか、私立に通う生徒の多くがそういう意識を持っ
ているのかはわかりませんが、公立の生徒のほとんどは、授業が減ったら授業料を返せな
んて発想はないと思います。
諸君は、授業料なんて気にしたことありますか？ そもそも、都立高校全日制の年間の
授業料は知っていますか？ 2004年度の都立高校全日制の授業料は11万1600円です。行事
なども含めた授業日数を約200日（40週）とすると、１日当り558円になります。６で割っ
て授業１コマ93円。安いですか、高いですか？
一方、都内の私立高校全日制の平均授業料は39万8570円。毎週土曜日に授業があるとし
て、平日換算で年間220日とすると、１日約1811円。授業１コマ302円。
土曜日を平日換算で20日間とすると、その分の授業料は３万6000円余り。先ほどの電車
の中の女子Ｂの言い分によれば、土曜日を全て休みにするなら、授業料を１割近く安くし
ろ、ということになります。もっとも、週休２日になっても教員の給料は下がりませんし、
土日も部活等で光熱費等もかかりますから、ことはそう単純ではありません。
授業時間に、お喋りしたり漫画を読んだり、寝たりしても、90円程度ならいいやと思う
かどうかは、諸君の問題です。
しかし、これはお金の問題ばかりではありません。ビデオを巻き戻すような安易な感覚
で「聞き逃したからもう一回言ってくれ」というのは、生身の人間に対して失礼だし、そ
して何よりも、時間そのものは決して巻き戻しできないのです。
私学助成と憲法第８９条
ついでに、学校の公費負担分について触れておきます。
学校を運営する費用は、諸君（の保護者）が払う授業料だけでは足りないわけで、生徒
１人当りにかかる学校運営経費は、都立も私立も年間約104万円で（2003年度決算）、授
業料や入学金、私立の場合は施設費等との差額が都の公費から支払われています。その額
は、都立高校で生徒１人当り約93万円、私立高校で約33万5000円になります。
さて、いわゆる私学助成は憲法違反だという意見があるのは、ご存知ですか？
憲法第89条（
公金その他の公の財産は、宗教上の組織
又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその
利用に供してはならない。
悪文ですが、要するに、私立学校が "公の支配に属しない" 事業であるとすれば、私学
助成は憲法違反の疑いが濃厚になるというわけです。
公の支配に属しない
という命題の対偶を作ってみると、
公金による助成金をもらえる（すでにもらっている） ⇒ 公の支配に属す
となり、もとの命題（憲法）を真とすれば、この対偶命題も真である、ということは諸君
は昨年、学びましたね。
では、"公の支配" とは何かということになりますが、この点は、勉強不足でよくわか
りません。しかし、現状を見ると、例えば、公立校は土曜日に授業をやってはいけない、
という文科省の強い指導がありますが、私学に対しては、協力をお願いする、としか言え
ないようです。
また、入学式・卒業式の際の国旗・国歌の扱いも、都立学校に対して出している、式場
の正面に国旗を掲揚し、式の最初に正面に向いて起立して国歌を斉唱せよ、という通達は、
私立に対しては出せないようです。国旗・国歌に対する敬意というものは、公私の区別は
ないはずではないかと、私は思います。しかし、今のところ、国旗・国歌への敬意という
ことではなく、学習指導要領に従うのは公務員の義務である、という点で都は強く教員を
指導しているわけです。
しかし、学習指導要領には公立と私学の区別はどこにも書いてありませんから、私学も
学習指導要領に従うという点では、公立と何等変わらない義務を負っていると考えられま
すが、どうもそうなってはいないようで、よく分かりません。
私個人の意見としては、助成はしてもらうが、ある時には「私学だから」という理由で
公の圧力に屈しない、という振舞をする。誤解を恐れずに言えば、私学助成はある意味で
"いいとこどり" のような気がします。
一方で、「公私の格差をなくそう」ということで、私学助成の充実を訴える運動があり
ますが、そもそも「公私の格差はあってはいけないのか」という議論が、日本ではまった
くなされていません。
冷静に考えてみると（冷静に考えないと、つい忘れてしまいそう）、日本は社会主義国
ではない（はず）ですから、こうした格差はあって当たり前、いうところから議論をスター
トさせなければならないと私は思っています。
日本には、一切公金に頼らない私学はないのでしょうか。高校の授業料は年100万円。
さらに、本人や卒業生、或いはアメリカのように資産家や企業から堂々と寄付をもらって
も良いことにすればよいと思います。良いものには生徒（消費者）も金を払う、応援した
い学校には寄付や投資をする。経済活動として当たり前のことだと思います。
私は、既存の株式会社が学校経営に乗り出すというよりも、学校自体を株式会社化して、
資金を市場から調達する、その上、学校の特権として、寄付も非課税で受け取れるように
するのが良いと考えますが、ダメですかねえ。
その場合、寄付した側も、寄付した分を所得から控除する（課税しない）ようにすべき
です。すると、税金逃れに寄付を利用する、という批判があるかも知れませんが、その分、
助成金（公金）の支出も減るのですから、いいでしょう。企業との癒着を批判する人もい
るかも知れませんが、そもそも、学校と企業との癒着はそんなに悪い事なのでしょうか。
それでもいいという人が通うのだから、いいではないですか。
ダメな学校なら、
人もいるかも知れません。それは、その学校を選択した人の
も、そのリスクはあります。潰れたら、地域の公立学校か、他の私立学校に転校すればよ
いのです。そうした生徒を受け入れる態勢をまわりも整えておく必要はあります。或いは、
銀行のように公金を注入して一時的に公営化し、在校生の卒業までは面倒見ればよろしい。
憲法第89条を厳格に守るか、今のように曖昧な状態でよいのか。これも、憲法改正論議
の中で論点に入れてほしいと、私は思います。
福知山線脱線事故と労働組合の衰退
諸君もご存知のように、４月25日朝、ＪＲ西日本の福知山線で、死亡者が100名を超え
るという、大変な列車脱線転覆事故が起こりました。
この事故について、私も何か書こうとしていたのですが、日々、ＪＲ西日本の信じられ
ないような内部の実体が明らかになっていくにつれ、何に焦点を当てればよいのか、わか
らなくなってきてしまいました。マスコミは
ルフコンぺなどのＪＲ社員の行動について、
私がここで、マスコミの報道をなぞるだけというわけにもいきませんから（"複眼" の
名が
事故直後の報道では、オーバーランなどのミスをした運転手に対する "日勤教育" の様
子がクローズアップされていました。ミスをすると乗務からはずされて、技能向上にはまっ
たくつながらない、いわば "根性の叩き直し" のようなことが、この21世紀の先進国日本
の大企業で行われていたということに、ショックというか、
という気持ちでいっぱいになりました。
その "日勤教育" では、退職を迫るような罵声を浴びせたり、草むしりをさせたり、上
司数人で取り囲んで（その上司たちの本来の仕事は何なのでしょう？）精神的に追い詰め
るようなことまでもが行われていたそうで、労働者の権利や人権を守るはずの労働組合は
一体何をしていたのだろうか、と私は思ったのでした。
ＪＲの前身の国鉄（日本国有鉄道）は、組合（国労＝国鉄労働組合、動労＝動力車労働
組合）の大変強い組織で、しょっちゅうストをやっていましたが、赤字になっても平気な
体質に、"親方日の丸" などといわれて批判が強まり、1987（昭和62）年に分割民営化さ
れたのでした。民営化された時の国鉄の借金は、37兆円を超えていました。国鉄は「国が
金を失う」とも言われたくらいです。
その頃のバブル経済では、組合が要求しなくても賃金はどんどん上がり、特に若い人達
は、それが自分の実力であるかのような錯覚に陥り、いわゆる年功序列型の賃金体系に不
満を持つようになっていきました。バブルが
金が上がっていく年功序列制では、中高年の賃金が会社の経費を圧迫していると考えられ
るようになり、若い人でも高給が取れる可能性があり、中高年の給料を抑えることもでき
るアメリカ型の実力主義に、労使（労働者と使用者）ともに魅力を感じるようになってい
きました。そして、不況を乗り切るには、労使が協調しなければならないという風潮も強
まっていき、能力給や成果主義を取り入れる企業が増えていきました。
ＪＲも、かつての赤字体質からの脱却という名のもとで、経営の効率化に反対はできず、
ＪＲ西日本は、鉄道会社では異例の能力給制度を導入、強化していき、その結果、従業員
どうしが協力し合うという雰囲気はなくなり、上司に反論もできなくなり、ミスを隠そう
とする体質になっていたのではないかということが考えられます。
"日勤教育" のような精神主義は、かつての労働組合が最も嫌うものであったはずだと、
私は思うのですが、ミスをしたヤツが悪いということで、関わろうとしなかったのではな
いか。脱線事故も、自分のミスではないから関心がなかったのかも知れません。能力給、
成果主義のもとでは、他人のミスに関わる気はなくなります。自分が一番大切になります。
能力主義や成果主義は、従業員の道徳心を低下させ、かえって労働効率も低下するとい
うことは、アメリカではすでに指摘されています。
なぜ、このようなところにこだわるかというと、実は、学校の組織にも成果主義が取り入れられており、運用を間違えるとＪＲ西日本の轍を踏むことにな
りそうだからです。これが私の取り越し苦労であれば幸いです。 〟