４日連続の考査
水木金土４日連チャンです。４日連続というのは、土曜授業とは関係なく、従来からも
よくあることで、今年度も、２学期期末は火水木金、学年末は月火水木です。
学級日誌には、土曜の午前中に休養ができなくなったとか、宿題ができなくなったとい
うことがよく書いてあります。たしかに、土曜休みが習慣になってしまったので、急に毎
週土曜日に授業が入ることで、生活のリズムが少し狂うこともあるのはわかります。特に
変わり目はやはりきついですよね。
リズムを変えるという意味では、工夫しなければならないと思います。その際、土曜日
に授業があるのが当たり前だった時代の人達は、どのように過ごしていたのかということ
を、ちょっと考えてほしいと思います。その時代に、男子バレー班は関東大会に何回も出
場していたのだし、東京工業大学を始めとする国公立大学にも沢山進学していました。
宿題の量が大幅に増えたということは、多分、ないと思います。１日24時間、１週間は
７日というのは今と同じです。どのような時間の使い方をしていたのでしょうか。特に班
活はどうしていたのか。もし諸君の所属する班に10年以上の上の先輩がいたら、そんなこ
とを聞いてみてください。
とはいえ、一度、楽なほうに慣れてしまうと、忙しくするのは大変辛く感じるのは仕方
ありません。
ドイツは、2001年の国際学習到達度調査（ＰＩＳＡ）で、32ヶ国中で数学と科学が20位
という結果に大変焦り、その後、教育改革を進めようとしている2003年の夏に、私は、財
団法人小山台の国際交流事業でドイツへ行かせていただきました。そのときに聞いた話な
のですが、これからは、午後まで授業をやらなくてはならない、これは大変なことだ、と
言うのです。我々から見れば、午後まで授業やるのは当たり前ですが、昼過ぎには学校が
終わりのドイツにとっては大変な変化だと感じるわけです。きっと、ドイツの生徒も今の
諸君と同じような疲れを感じるのかも知れません。
土曜を休みにしたのは疲れるからではない
そもそも、なぜ土曜日が休みになったのかというと、もともとは労働時間短縮が目的だっ
たのです。決して、子供たちが大変だから、疲れているから、という理由ではありません。
土曜休みについては、昨年の本紙００３号で書いたのですが、要点を再掲しておきます。
かつて日本人は、もう、戦争の心配をすることなく、第２次世界大戦後の高度経済成長
を成し遂げました。しかし、1960年代後半になって、
スによる大気汚染、富山のイタイイタイ病や熊本・新潟の
よる水質汚染などの公害（※）、人口の都市への集中による住宅難や交通ラッシュ、さら
に、都市集中に伴い農業が弱体化し、食料自給率が急激に低下するなど、ガムシャラな高
度経済成長による
（※）これらは、日本では「４大公害訴訟」といわれている。将来、環境関係の道に進みたいと考えて
いるひとは、このあたりは基礎知識として知っておく必要があろう。是非、調べておくことをお
勧めする。
そして、世界第２位の生産力を持っても、欧米からはエコノミック・アニマルなどと
れを象徴するのが、働く時間は世界トップなのに住む家は他の国よりかなり小さいという
ことでした。
来日した海外の誰だったか、日本の住宅を見て「うさぎ小屋」と評しました。
日本の土地が狭いのは致し方ないとしても、労働時間の短縮は可能なはずです。
バブル経済も
を決めました。当時のドイツの労働時間が1800時間で、日本は2000時間を超えていました。
200時間ということは、１日８時間労働として25日分です。半日４時間の土曜日だと50日
分に相当します。従って、週休２日制にすればほぼ目標が達成できるわけです。
企業や役所は徐々に週休２日制に移行していきましたが、学校は、授業内容が週６日間
を前提に決められているため、1995年から第２・第４土曜日を休みにするのが限度でした。
そして、2002年度（高校は2003年度）から実施された新しい学習指導要領が学校週５日制
に合せた内容になったので、完全に実施されるようになったのです。
企業の場合は「週休２日制」であり、「営業週５日制」とはいいません。土日も休まず
営業する会社はあるわけですが、そこの従業員も休みなく働いているというわけではあり
ません。企業に限らず、都営地下鉄やバスも毎日運行していますが、そこの都の職員は週
休２日です。
なのに、学校だけは、教員の週休２日とは言わずに、「学校５日制」と言います。教員
を週休２日にするためには学校も休みにしなければならないということに、いつの間にか
なってしまったのです。なぜか？
生徒が学校にいるのに先生が休むわけにはイカンだろうとか、家庭で親が休みなのに子
供だけ学校に出かけるのもヘンだとか、家庭にいる時間を多くして、家庭教育や地域社会
で子供を見ていくことも必要だと、いろいろな理由が言われました。
ともかく、こうして、「学校週６日制・教員は週休２日制」の可能性は、検討する余地
すら与えられず、労働者の週休２日制の問題は、学校をいかに５日制にするかという問題
にすり替わってしまったのです。
学校週６日制・教員週休２日制が実現できていれば、諸君の生活は、何の変わりもなく、
"ふつう" に続いてきたはずです。今、こうして６日制に戻して疲れが出るということは
なかったはずです。
学校を休みにするために授業内容を削減
しかし、「教員を休みにするために授業を減らす」などとは、余りに露骨すぎて言える
はずもありません。労働者の週休２日制とは関係なく、純粋に教育の問題として学校週５
日制を実現する必要があったのです。
そこで登場したのが、「生徒自身が問題を発見し、解決する能力を養う」というもので
す。何でも教員が教え込むような詰込み教育はイカンというわけです。
そのために、「全員に一律に教えなければならないことがらは最小限に絞る」という方
針で教科書は作られたのです。
週休２日制がフリーターを増やした？
国をあげて週休２日制実施に取り組もうというとき、減った労働時間分だけ賃金を一方
的にカットすることが可能だと日本商工会議所は言い出し、当時の労働省もそれを容認し
たのですが、労働組合は激しく抗議し、労働基準局は、賃金カットには労使の合意が必要
だという見解を出しました。労働組合が同意するはずありませんから、時短分の給料カッ
トはこれで実質的にはできなくなりました。
そうして出てきたのが、いわゆる "成果主義" です。これは、労働者の業績によって賃
金を決め、人件費の総額を抑えようとということで、この日本の "成果主義" は、労働者
のやる気を引き出すという発想ではないのです。1990年代はバブル経済も終わり、"成果"
をリストラの口実にも使いました。
従って、誰かの給料を上げるためには、必ず誰かの給料を下げなければならないという、
いわゆる「ゼロサム（zero sum）」方式（ゲームの理論の用語で、
るいは、賃金の総計は減らさなければならないために、ゼロサムよりもっと厳しい、厳罰
主義的な様相を
しかし、前回書いたように、特に若い人達は、先輩より多くの給料がもらえる可能性の
方に目を奪われて、また、欧米的・クールな感覚も手伝ってか、この "成果主義" 導入に
は積極的だったようです。すでに、組合への加入率も２割を切るような状態で、社員どう
しの連体感もなくなり、労働者が力を合せて権利を守るより、自分がいかに上へ行くかと
いうことを優先するようになってきました。
定年までひとつの会社で働くことに価値が見出せなくなって、自分の給料が上がらない
のは、上司の自分を見る目がないからだなどといって転職することも多くなってきました。
米国では能力の高い人ほど転職回数が多い、という、本当かどうかわからない話の影響
もあったと思います。
ここには論理の大きな落とし穴があります。
能力が高い ⇒ 転職回数が多い
が、仮に真であったとしても、
転職回数が多い ⇒ 能力が高い
は、真でないことは明らかです。逆は必ずしも真ならず。
将来に対する希望、安心感がなくなり、地道にコツコツやってても、いつクビになるか
も分からない。そんな不安感が日本中を覆っているような気がします。ＪＲ西日本のよう
な、ペナルティに脅えながら仕事をすることは、精神的に良いはずがありませんし、仕事
効率、安全性が向上するはずもありません。
このようなわけで、自分の将来像を描けない、また、責任を負わされるような仕事を嫌
う、自分の生活を大事にしたいなどということで、正社員ではなくフリーターが増える。
週休２日制のせいでフリーターが増えた（？）、という話でした。
こんな話をしたからといって、諸君にもその流れに乗ってほしいわけではありません。
今、「正社員になって働け」というと、「ひとつの会社に縛られるなんて、古い古い。」
などと言われそうですが、古いとか新しいという問題ではありません。やはり、きちんと
腰を落ち着けて働くべきだと私は思います。
一方、企業のほうも、労使関係を支配者・被支配者という関係で見るのではなく、従業
員が安心して、或いは希望を持って働ける環境を作らなければいけないと思います。従業
員の精神的安定が結局は、従業員の定着率の向上、生産性、そしてモラル（道徳心）の向
上につながるものと思います。
《４月から、アテらの出番が少のうなったなぁ。》
『ほんまや。生徒は忙しくなったようやけど、アタシらはえらい暇や。』
《生徒だけやのうて、世の中もなんやらいろいろ大変なことになっとるようやで。》
『国会議員たちは、郵政民営化でエネルギー使い果たしとるようやけど、国民は相当しら
けとる感じや。何で民営化するんか、ようわからんようになっとる。』
《国内の最大の課題は、少子高齢化にどう対処するか、やないのかと思うんやけど、それ
について具体的に出てくる話は消費税の増税だけや。もうすぐ10％だの、将来は19％必
要だとか、これじゃ、気持ちは縮小する一方やないか。》
『それに、国際関係も重要や。たとえば、中国は、小泉首相の靖国神社参拝中止を繰り返
し要求しておる。ここで大事なのは、アタシらは、中国がその理由にあげている "Ａ級
戦犯" って何なのか、きちんと知っとるかということや。知った上で中国の言い分を受
け入れるべきだと言うのはエエ。"戦犯"、しかも "Ａ級" なんやから相当悪いヤツらな
んやろという、雰囲気だけで物言うんはダメや。』《これは次の予告かな？》
『そうかも知れへん。』 〟