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あけましておめでとう 『おめっとうさん。』 《謹賀っ、新っ、年っ！》 『また去年と同じやな。』 《がしょ〜！》 『その谷啓(たにけい)の口調も去年と一緒や！　進歩しと 　らんなあ。』 《まぁまぁ、そんな言わんといて。今年もよろ 　しゅう頼んまっさ。》 『ちょっと遅くなったけど、こちらこそ、よろしゅうな。』 《さてと。いつもより長い冬休みも終わってしもうたけど、みんなはどないやった？》 『それにしても、今年の冬は寒いなぁ。日本海側では、12月からのドカ雪で各地で積雪が 　３ｍを超えて、新潟県津南町なんかじゃ４ｍやて。』 《12月以降に除雪作業とかで亡くなったひとは70人超えとるそうや。》 『陸上自衛隊の災害派遣部隊も出動して、雪に埋もれた民家を掘り出しとるっちゅうから、 　ほんま大変や。』 《寒波のせいか分からんけど、暮れには突風で特急電車が脱線して５人が亡くなっとる。》 『毎年冬になって、日本海側と太平洋側と、200ｋｍ程度しか離れておらんのに、その真 　ん中で列島の気候がくっきりと分れるのを見るたびにやな、日本海を渡ってくる季節風 　に対してうまい具合に直角方向に山脈が走っとる地形が、偶然とはいっても、不思議に 　感じるんや。日本海も絶妙な広さっちゅうか、日本列島が大陸につかず離れずというか、 　日本を大陸性とも海洋性とも言えん気候にしておる。』 《そうや。「国境のトンネルを抜けると、雪国であった」は全くその通りなんやな。》 『おお、川端康成かいな。格調高く来たな。オマエには似合わん。』 《ほっといてんか。どうせアテはここしか知らへんわい。》 『ははは。まぁ、なんやな、日本の緯度も絶妙やな。年に２回、暖かい空気と冷たい空気 　がせめぎ合いをするまさにその前線のところにあって、季節がはっきりと分れるんやな。 　こういう季節豊かなところに住めて、なんかこう "ラッキー！" って思うんや。』 《200ｋｍゆうたら、あのシュワちゃんの仕切っとるカリフォルニア州より細いんやな。 　そんな狭いところに片や豪雪、片やカラカラ天気っちゅう、全く違う気候が同居するん 　やから、考えてみれば、世界にそう滅多にあるもんやないやろな。》 『オマエもすぐにグローバルな視点で見られるようになったんやな。進歩、進歩。』 《さっきは進歩しとらんって言うとったくせに。》 『ははは。ともかく、こんな小さな島の中で世界中の気候が体験できるって感じやな。』 《暮れはスキーで、正月は小笠原で海水浴なんてのもできるで。》 『ほんまや。いつかそんな冬休み過ごしてみたいなぁ。』 今年はＹ染色体に注目 　さて、今年は戌年です。戌年生まれの日本人は975万人（男性473万人、女性501万人、 四捨五入の関係で合計は合わない）で、十二支の中で最も少ないそうです。 　新成人は男性73万人、女性70万人で1987年に並んで最少です。 　成人式中にクラッカーを鳴らしたりする愚かな成人が今年もいたようです。それをやめ させて式場の外へ出そうとした岩手県会議員のサスケ氏と揉み合いになったとのことです。 しかも反省の色なし。サスケとの絡みを自慢する始末。ったく．．． 　ところで、昨年、イヌゲノム（※）が完全に解読されたそうです。哺乳類ではヒト、チ ンパンジー、マウス、ラットに次いで５番目です。（※※） （※）ゲノム：genome(ジーノム)。ある生物をその生物たらしめるのに必要な遺伝情報で、その生物の遺伝子全 　体のこと。「遺伝子」は gene(ジーン)、genealogical(ジーニアラジカル) tree で「系図」「系譜」。遺伝子はＤＮＡ（デオキ 　シリボ核酸；deoxyribonucleic acid）という化学物質によってできており、蛋白質と一緒になって 　紐状の構造をして、細胞の核内にある。この紐状のものは、アルカリ性塩基の色素によく染まるので、 　染色体と呼ばれる。こうしたことについては１年生の生物で学んだと思うので、ここではこの先の説 　明は省略。「ゲノム解読」というのは、遺伝子個々の役割を解読したのではなく、遺伝子を形成する 　４種の塩基の配列を解明したという意味。それぞれの遺伝子がどのような役割をしているのかは、ま 　だまだこれからの研究課題。それが解明できれば、癌や染色体異常による病気の発生メカニズムも分 　かり、現在難病といわれているものの多くが治療可能になると期待されている。 （※※）マウスとラット：mouse はイエネズミやハツカネズミなど、英米の家庭に出没する小型のネ 　ズミ。rat はドブネズミなど大型のネズミで、日本の家庭に現れるのは rat。 mouse は貧困の象徴 　で「臆病者」の意味がある。rat は不潔さや狡(ずる)がしこさの象徴で「裏切者」の意味がある。欧米では、 　ミッキーマウスやジェリーのようにネズミを可愛いものとして描くが、日本でネズミといえば、鼠小 　僧、鼠男といったキャラクターになってしまう。 　しかし、解読されたのはメスのイヌのものなので、オスだけが持つＹ染色体の情報は含 まれていません。 　Ｙ染色体はメスの遺伝子と混ざることなく、そのままオスの子へ受け継がれていきます。 しかし、時々、害のないわずかな突然変異（キズ）が生じることがあります。 　米国の遺伝学者のスペンサー・ウエルズ博士は、1600万人の男性のＹ染色体に共通のキ ズがあることを突き止めました。これは、最初にその突然変異を起こしたひとりの男性の 子孫であることを示しています。その人達は、モンゴルを中心に散らばっています。この 辺りでこれほどの子孫を残すことができたひとは、800年前に地球上最も広大なモンゴル 帝国を築いたチンギス・ハーンしかいないということで、この1600万人の男性は、チンギ ス・ハーンの子孫に間違いないと、博士は結論づけています。 　博士は、ナショナル・ジオグラフィック協会とＩＢＭとともに、大勢のヒトのＹ染色体 を調べることで人類共通の先祖、すなわち "アダム" を探そうとしました。 　Ｙ染色体のいくつかのキズにより、グループができてきます。更に、複数のグループに わたって共通なキズを見つけ出していきます。 　この研究では、約６万年前にまでたどり着くことができたそうです。その人物は、アフ リカ東部にいたと推測されています。 　人類は３百数十万年前にまで遡ることができるそうですから、６万年前が人類の起源と 考えることはできません。しかし遺伝学的には６万年前の彼が "アダム" となります。 　６万年前に他の遺伝子をもった男性はどこへいってしまったのかという疑問は残ります。 　一方、イヴはどうなっているのでしょうか。アダムひとりでは人類は子孫を残せません。 　Ｙ染色体が男性だけに受け継がれるのに対して、ミトコンドリア（※）は、母親のもの だけが受け継がれますので、ミトコンドリアのＤＮＡの突然変異のようすを調べることで、 母親を特定したり女性の系譜を辿ることが可能です。 （※）ミトコンドリア：細胞内に数百個（ヒトの場合）ある器官で、細胞のエネルギーを作り出して 　いる。ミトコンドリア自体ＤＮＡを持っており、かつては独立したひとつの生物であったとも考えら 　れている。それが他の生物の細胞に入り込み、もちつもたれつの共生の関係になったと言える。今は、 　宿主の細胞の管理下に置かれているが、いつしかミトコンドリアが自立的に行動するようになると、 　というのが、瀬名秀明の「パラサイト・イヴ」という小説。パラサイト（parasite）は「寄生動（植） 　物」「（軽べつ的に）居候」。 　実際、米カリフォルニア大学の研究グループは、女性の祖先がアフリカの女性であるこ とを突き止め、「ミトコンドリア・イヴ」と名付けられました。これはひとりの女性を指 すのではなく、同じミトコンドリアＤＮＡをもつ女性の総称です。 　男性も女性も起源はアフリカという点で一致しているということは、人類はアフリカで 誕生したという説を裏付けるものになるでしょう。 皇位の継承はＹ染色体の継承 　今日本で、Ｙ染色体が注目されています。 　昨年11月24日に、「皇室典範に関する有識者会議」（座長：東大元総長・吉川弘之氏） は、象徴天皇制度の安定的な維持のために、皇位継承資格を女性や女系（※）の皇族に拡 大することなどを提言する報告書を小泉首相に提出しました。 （※）女性天皇と女系天皇：女性天皇は文字通り女性の天皇で、過去に10代８人いた。女系天皇は、 　母方の系統に天皇を持つ天皇で、これまでは例がない。たとえば、愛子さまが天皇になって（女性天 　皇だが、母・雅子さまの家系には天皇がいないので女系ではない）、その子供が天皇になると、男女 　にかかわらず女系天皇ということになる。（次ページの図参照）　過去の８人はみんな男系の皇女で、 　男子がまだ幼少であったりで "なかつぎ" としての意味合いが強い。全員生涯独身を通し、男系男子 　に引き継いでいる。従って、女性天皇の配偶者は過去には存在しないため、その敬称も存在しない。 　有識者会議の報告書では、女性天皇の配偶者も「陛下」と呼ぶことにしている。 　この有識者会議の報告書に対して、強い反対意見が出ています。 　反対の第一の理由は、父方の系統に天皇を持つ男系によって皇位が継承されてきた伝統 が打ち切られる恐れがあるという点です。 　一般国民の間でも男子に跡を継いでもらうという価値観はありますが、この場合は、男 子がいなければいわゆる婿養子を迎えて跡継ぎになってもらうということが行なわれます。 これは男系の継承ではありません。血統を継ぐのではなく、家名（のれんや姓）を継ぐと いうことです。 　私は、皇位の継承で男系にこだわるのは、単なる形式の問題と思っていました。しかし 一方で、女性天皇に "婿入り" する男性はどのような条件が必要だろうか、民間人である その両親は社会的に皇室を利用するのではないか、などと、大変難しい問題に直面すると も思うのです。このことは、愛子さまがもっとも苦悩されることになると思われます。結 婚を躊躇されるかも知れません。 　昨年11月に都の職員・黒田慶樹(よしき)氏と結婚された旧・紀宮清子内親王(のりのみやさやこないしんのう)は、皇族の身分を 離れて黒田清子という民間人として生活をしていくことになりました。ですから、なんの 心配もなく、国民は素直に祝福したのだと思います。 　しかし、女性天皇の配偶者は、民間から皇室の頂点に入っていくわけです。これまで、 千数百年の日本皇室の伝統を途切れさすようなことを、１年足らずの議論で決めてしまっ てよいのかというのが、反対論者の主張です。 　そして、超党派の保守系議員でつくる日 本会議国会議員懇談会（平沼赳夫会長） は、男系の継承の理屈として「Ｙ染色体 の継承」を持ち出したのです。 　男系継承が単なる形式的なものと思っ ていた私は、継承される実体があるとい う考えを知って、せっかく続いてきたも のをわざわざ打ち切るのはもったいない と思えるようになりました。今上天皇の 次で男系が跡切れるわけはないので、ま だ時間はあります。 　「Ｙ染色体の継承」という理屈に対し て、評論家でジャーナリストの立花隆氏 は、「女性天皇容認論者は、神武天皇Ｙ 染色体より、はるかに貴いのは、天照大神(あまてらすおおみかみ)由来のミトコンドリアであり、これは女性に しか伝えられていない、という主張でもすればよい。」と述べています。(http://www. nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/051130_tennou/index.html） ちょっと茶化した感じにも聞こえます。 　また、男子でも臣籍降下（皇属から民間人になること）は何度も行われているから、歴 代の天皇のＹ染色体をもつ男子は「日本にゴロゴロいるはずなのである」として、皇室だ けで頑(かたく)なに守る価値などないといいたげな発言をしています。 　しかし残念ながら、立花氏のこの反論は、反論になっていません。ミトコンドリアは、 すでに跡切れているし（天皇が側室に産ませた子が天皇になっている）、歴代天皇のＹ染 色体が皇室だけの希少価値のあるものだとは誰も言っていません。臣籍降下した人をもう 一度皇族に戻してでも男系を維持したいと言っているくらいです。 　いくら有識者会議が男系なんて関係ないといっても、民間人の中にそれに大変な価値を 感じるひとは大勢いるわけで、自分のＹ染色体を皇室に残そうといろいろ画策したり、後 に、男系と女系が互いに正統性を主張し合って争いごとが起こることが心配です。 　それにしても、遺伝子などというものが知られるよりもずぅっと前から男系 にこだわる価値観が世界各地にあったわけですが、その発想の根源は一体どこ にあるのか、改めて不思議に思います。動物の本能なのでしょうか。　　　��

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