商売優先
◆ヤマハ発動機は、農薬散布用の高性能無人ヘリコプターを中国へ輸出しようとしたこと
が発覚し、外国
外為法では、対共産圏輸出統制委員会（
Export Control）で決められた物品の輸出を規制しており、この無人ヘリコプターがその
規制にひっかかるというわけです。
ＣＯＣＯＭでは、武器・兵器に使えるものを共産圏に輸出することを厳しく制限してい
ます。この無人ヘリは、ＧＰＳ（全地球測位システム、Global Positioning System）を
搭載し、同社が独自に開発した自動運転装置が備えられており、サリンなどを積んで空中
でホバリングさせ（hovering＝空中で停止すること）、特定の場所を狙ってサリンを散布
することも可能ということで、武器・兵器にあたると警察は判断しています。
同社は2001年以降、中国に無人ヘリを輸出していますが、今回の税関手続きで実際より
も低い性能に偽って申請していることから、過去に輸出したヘリも高性能だったと見られ
ています。
同社は、農薬散布は法に触れないというつもりのようですが、申請を偽ったり、輸出先
の中国企業が中国人民解法軍参謀部系の企業で、戦闘機、潜水艦、弾薬、通信設備等の製
造・販売を手掛けている企業であることを同社が知らないはずはなく、中国が農薬散布だ
けに使うなどと考えるのはあまりに脳天気で、素人目で見ても、これは、ルールより商売
を優先させたとしか思えません。
◆精密機械メーカー・ミツトヨが、2001年頃に３次元測定機と付属のソフトウェアを、経
済産業省の許可を得ずに中国やタイにある日本企業の現地法人に輸出した疑いで警察の捜
査を受けています。
この測定機は、核開発に転用可能なもので、実際、2004年にＩＡＥＡ（国際原子力機関、
International Atomic Energy Agency）がリビアの核関連施設を査察した際に同社製の装
置が見つかったことで不正輸出が発覚したものです。
リビアのものは、ミツトヨが直接リビアに売ったのではなく、2002年に同社のマレーシ
ア現地法人に売ったものが、いわゆる核の闇市場を通じてリビアに流れたとの見方が有力
で、製品の流れを捜査中です。
同社は、なぜ産経省に申請しなかったのでしょうか。規制対象であるとは知らなかった
とすると、今度は、自社の製品がどういう性能を持っていてどういう利用の仕方があるの
か（つまり
自然です。市場調査は経営のイロハでしょう。
私個人の憶測では、やはり、ある程度のことは知っていながら商売を優先させた、民間
企業はそれぐらいのことはやってのけるだろうと思うわけです。せっかく売れるものを、
みすみす売らずに我慢するというのは、かなり勇気のいることだと思います。
しかし、きちんと自制しないと、日本は、核や生物化学兵器の闇市場や "死の商人" の
一部に組込まれてしまう恐れがあります。
名誉白人
かつて、南アフリカでは人種隔離政策（アパルトヘイト）が実施されていたことはご存
知でしょう。
アパルトヘイトは、人種を白人、カラード（colored＝白人と黒人やアジア人の混血）、
アジア人、黒人（先住民）の４種に分けていました。
当時イギリス領であり、オランダ人による自治が行われていた南アフリカ連邦において、
1936年に制定された▼原住民土地法によって、南アフリカ全土の87％を白人が独占するこ
とにしたのを始め、1960年代初頭にかけて、▼雑婚禁止法（異人種間の結婚禁止）▼背徳
禁止法（異人種間の性行為禁止）▼人口登録法（人種登録の義務付け）▼集団地域法（人
種別居住区指定）▼共産主義弾圧法（共産党の非合法化）▼バンツー教育法（人種ごとに
異なる教育システムの制定）▼分離施設留保法（諸施設の設置・利用の人種分離）などの
法律で人種差別を "合法化" したのです。これらの法律を見ただけでも、いかに異常なも
のかが分かります。
1960年に制定された▼非合法組織法により、アフリカ人民族会議（1912年結成）を非合
法化し、その指導者ネルソン・マンデラ氏を投獄しましたが、これをキッカケに国際的な
非難が高まり、特にイギリス本国が激しく非難したため（イギリス領ではあったが、政治
はそこに住むオランダ系（自称アフリカーナ）が行なっていた）、南アフリカ政権は1961
年、イギリス連邦から脱退して南アフリカ共和国に移行しました。
そんな中で、アジア人である日本人は、1962年に名誉白人（honorary white）という特
別な地位を認められ、法律上は白人と同じように生活し、企業活動を続けました。日本に
とっては、人種差別の非難よりも、南アフリカのダイヤモンドや金などの鉱物資源の方が
大切だったのです！ アパルトヘイト実施中に南アフリカが発行した「クルーガー金貨」
は、世界中が金貨としての価値を認めず地金としての取引をしているにも関わらず、今で
も日本だけが一部の銀行などがプレミア付きで取り引きをしています。
私が初めてこの話を知ったのが教員になってまだ間もない、1980年代の中ごろだったと
思います。どういう話の中で聞いたのかは覚えていませんが、今調べてみると、1985年に
国連は反アパルトヘイトで各国に南アフリカとの貿易を自粛するように要請しており、そ
のニュースの中で、「しかし日本は．．．」ということだったのかも知れません。
実際、日本政府は反アパルトヘイトの立場であったのですが、日本企業は貿易を続け、
1987年には日本と南アフリカとの貿易額が世界一になり、国連の反アパルトヘイト特別委
員会のガルバ委員長は翌88年、このことに遺憾の意を表明しています（ガルバ声明）。
ともかく私は、"名誉白人" のことを聞いたとき、かなりショックを受けました。戦後
の高度成長時代以降（1950年代後半以降）、日本はエコノミック・アニマルと言われてい
ましたが、そのときは、悪いことをして非難されていたわけではなく、やっかみ半分で言
われていたように感じ、狭い国土で資源もないところでは人が働くしかないのだからどこ
が悪いのだと、子供ながらにむしろちょっぴり誇らしく感じていました。
しかし、この "名誉白人" はまったく恥かしい限りです。人権よりも商売優先。エコノ
ミック・アニマルの直訳そのものです。本当にガッカリしました。憲法前文にある "名誉
ある地位" には白人でなければつけないと勘違いしているのではないかと言いたくもなり
ます。
前回から引き続いての私のこのような "民間不信的" な発言は、自己分析によれば、ど
うもここに端を発しているようです。
「公務員は民間を見習え」と言われるたびに、ここで紹介したことのほかにも沢山見聞
きする民間人の商売優先・モラル欠如の姿が思い起こされ、素直に受け入れられない気持
ちになってしまうのです。
実際、こうした改革の "成果" かどうか、公務員が公務員の誇り・自覚をなくしてきた
ようにも思えるのは気のせいでしょうか。（公務員の民間化？）
なお、南アフリカのアパルトヘイトですが、国連による経済制裁決議で苦しくなった南
アの経済界が政府にアパルトヘイトの廃止を要求し、1989年、政府は黒人との対話を始め、
90年にネルソン・マンデラ氏を釈放し、アフリカ人民族会議などを合法化、そして91年６
月までにアパルトヘイトの各法律を廃止して、93年に経済制裁が解除されています。94年
には全人種が参加する総選挙が行われ、黒人のマンデラ氏が大統領に選ばれました。
しかし、法律上の差別はなくなっても、やはり、現実にはまだまだ差別が残っているよ
うです。
その間に日本の経済界が "名誉白人" を自ら返上したという話は、聞こえてきません。
Ｇｏｏｇｌｅ 中国の検閲を受け入れ
米国のインターネットの検索会社Google社が中国に進出するに当って、中国政府当局の
検閲を受け入れることにしました。これに先行して、マイクロソフト社も同様の条件を、
また、ヤフーはｅメール利用者の氏名の情報を中国政府に提供するという条件を飲んでい
ます。
中国のインターネットの検閲はものすごいもので、猥せつなどの不道徳なものはもちろ
ん、「天安門事件」や「法輪功」、「台湾独立」などというような現政権にとって都合の
悪い言葉を検索しても出てこなかったり実際の内容はわからないものしか出ないようになっ
ているそうです。
インターネット上のチャット（chat＝おしゃべり）の内容も警察がチェックし、政治的・
思想的な内容にまで目を光らせ、摘発されれば即、懲役刑などになります。
それくらいしないと、中国の独裁体制は維持できないという証拠でもあるわけです。
米下院公聴会では、これらの企業を「恥さらし」「腰抜け」と激しく非難しました。
今は少し落ち着いて、「情報へのアクセスを容易にすることによる利益と、独裁者が情
報監視技術を手にする危険という、相反する側面は必ずしも二者択一ではなく、米企業が
中国にとどまりつつ、中国当局が（憲法で認めている言論の自由や通信の秘密に反した）
恣意的・不当に法律を実施することを困難にするビジネス・スクールや慣行を推し進める
こともひとつの道」と指摘し（ロサンゼルス・タイムズ）、「米企業がこのまま永遠に協
力し続けることを米議会も世論も許さないということを、中国は理解する必要がある」と
して「（中国の）１億人のインターネット利用者の存在は、西側の言論の自由の擁護者お
よび議会内の賛同者たちの関心を引いている」と、中国内部からの変化を期待する意見
（ワシントンポスト）も出始めています。
国益最優先の米国とその企業が、ただ目先の商売だけで中国に進出するとは思えません。
上のふたつの論評は、「肉を斬らせて骨を断つ」ということのようですが、翻って日本の
ケースをみると、物を売って代金を企業が受け取るだけで、なんら国益とは結びつきませ
ん。「肉を切り与えて、自ら骨になる」という感じです。
肉といえば、米国のＢＳＥ対策を見ても、米国は、消費者（日本）の求める食の安全よ
りも売る側（米国）の利益を優先して、消費者が妥協すべきであるというようなことを平
気でいう国です。別に米国産の牛肉などなくても、日本人が飢えるわけでもありません。
一部の熱狂的牛どんファンや牛どん会社を救おうなどと考える必要はありません。
米中の
ご相談されてください
「各種保険取扱い、平日夜８時まで受付け、日曜日も診療、腰痛、肩こり、疲れほか、
お体のこと、お気軽にご相談されてください。」
これは、私が毎日朝夕、バスの中で聞いている、ある整骨・針灸院の車内広告のアナウ
ンスです。
体言止めで歯切れ良い文の締めくくりが「ご相談されてください」という、大変不格好
で、なんかこう、手際良く、きれいに絵を書いていて、最後の一筆というところで絵の具
をボターッと垂らしてしまったような、そんな感じを受けます。
丁寧に言ったつもりなのでしょうが、ただ滑稽なだけです。諸君は、この最後を何と言
うべきだったと思いますか？
自転車・バイクを撤去されたかたへ
校門を出た右側の塀に、こう書いてある立て看板があります。当然、この「された」は
受け身の意味で、バイク・自転車を取りに来いという告知です。
しかし、私なんかは、この看板の表題の次に「私の自転車を返してください」と書きた
くなってしまいます。と、いっても、諸君は絶対に実行しないこと！ 人のアイデアを盗
むな、という問題ではなく、落書きそのものをしてはいけないということです。本当に、
やっちゃダメよ！
「撤去されたかた」の「される」は受け身の意味ですが、「する」の尊敬語との違いは
文脈の中で理解しなければならないので、日本語は本当に難しいと改めて思うのでありま
す。日本語を学ぶ外国人も、このハードルは高いでしょう。
これが、いわゆる「らぬきことば」の大きな原因だろうと私は思います。
「いつかきっと、見れるよねー」というコマーシャル・ソングが毎晩22時代に流れます
が、こうハッキリと歌にして、しかも２回繰り返されると、せっかく可愛い子供のような
歌声も、憎たらしく聞こえてきます。
「食べれる、しゃべれる」なんていう、コンビニのコマーシャルもありました。そこで
しゃべって食べている客が、賢そうには見えなくなります。★来週は学年末。３年の選択科目に関係なく「今」に全力を注ごう。 〟