助走開始
学年末考査、球技大会も終わり、もうすぐ２学年も修了です。球技大会では決勝トーナ
メントには行けなかったけれど、相手が強過ぎたということでよしとしましょう。
これで数学もおしまい！ という解放感に浸っている人もいるでしょうね。でもしばら
くは、数学の教科書やノートは捨てずにおいてください。
明日14日は卒業式です。２年生は全員が臨席します。来年に向けての練習も兼ねている
のでしょう。班活などでお世話になった先輩たちをお祝いし、送り出してあげてください。
そして諸君は、自分の目標を見定めて、助走を始めなければなりません。
先日返した模試の結果を見ると、数学が遅れを取っているようです。数学は、教科書と
入試問題のギャップが非常に大きい教科です。学習するときは単元（項目）別なのですが、
入試問題というのは、それらの単元を横断的に関連させて考えないといけないようにでき
ています。
たとえば、２次方程式の理論の中で解と係数の関係というのを学びました：
aｘ2＋ｂｘ＋ｃ＝0 の２つの解をα、βとすると
ｂ ｃ
α＋β＝－ ，αβ＝ .
ａ ａ
解そのもの：
より、和や積の方が格段に簡単だというわけで
す。しかも、解は虚数でも、和や積は実数になるということにも注目です。
さて、放物線 ｙ＝2ｘ2＋ｘ－1 と直線 ｙ＝2ｘ＋3 の交点の中点の座標
と言われたときに、この問題が、解と係数の関係を利用すると簡単になるという、この関
連性は、教科書だけではなかなか学習できません。
交点のｘ座標は、2ｘ2＋ｘ－1＝2ｘ＋3，すなわち２次方程式 2ｘ2－ｘ－4＝0 （★）
の実数解であるわけですが、まず、★が実数解を持つことを判別式で確認し、実数解をｘ
α＋β
＝α，β とすると、交点の中点のｘ座標は なのですから、解そのものではなく、
２
和 α＋β が分かればよいのです。ですから、ほとんど暗算でも出せます。
1 1
（★より α＋β＝ ゆえ、中点のｘ座標＝ ）
2 4
これは別に、こうしないと解けないというのではなく、手間が違うという例です。センター試験では、こういうものが多いわけで、全く手の出ない問題というのはありま
せん。というより、全く手が出ない問題があるようでは力不足ということです。
センター試験では９割以上を目指します。しかも、60分という、本校の数学ⅠやⅡの考
査時間より短い中で、考査より複雑な問題を解かなければなりません。上述のような計算
の手間の違いは大きいのです。
と、こんな数学の話では「あたしにゃ～カンケーないよ」という人もいるでしょうが、
こういう話を聞いたとき、聞いた話のまんまでしか解釈できず、一顧だにせず切り捨てて
しまうようでは、人は向上しません。
中国、いよいよ尖閣諸島をとりにくる
３月９日、東シナ海の海底資源開発に関して中国
は、尖閣諸島周辺と日韓大陸棚共同開発区域内の２ヶ
所を日中で共同開発しようという提案をしてきまし
た。
ここで、日韓大陸棚共同開発区域について簡単に説
明しておきます。
1972年５月、韓国は突然、大陸棚自然延長論（本紙
０１４号参照）に基づき日韓中間線（右図破線）を超
えて鉱区を設定しました（右図赤い領域）。それに対
して日本は、日本の主張する日韓中間線の日本側の領
域であるにも関わらず、共同開発という妥協をしたの
です（日韓大陸棚協定）。日本にしてみれば、こうし
た妥協が「平和的、友好的」ということなのでしょう。
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ガス田の日本名と中国名の対応： |
す。９月29日、当時の田中角栄首相と
国政府と中華人民共和国政府の共同声明」に調印しました。
それまで日本は、中華人民共和国を未承認だったのです。日本は、国民党政府の中華民国
（台湾）と国交を持っていました。しかし、共産党政権の中華人民共和国を国と承認した
ため、日本は中華民国と断交することになりました。国連は、前年71年に中華人民共和国
を、台湾を含む中国全体を統治する主権国家と認めています。
さて、中国の今回の提案は、尖閣諸島は中国の領土であることを前提に、中国のものを
日本にも共同で開発させてやるという考えです。しかし、尖閣諸島は国際法上からしても
明らかに日本の領土なのですから、日本は当然、中国の提案を拒否しました。
そもそも、中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは、1968年に東シナ海の資源調査
の結果が発表された直後からです。もう、これだけで魂胆は見え見えです。
日韓大陸棚共同開発区域についても、日中中間線の日本側の領域なので、これも拒否。
こちらの場所について、朝日新聞の３月10日付け社説では、中間線の中国側の領域と述
べており、産経新聞の報道と食い違っています。しかも朝日社説では、その海域が日韓大
陸棚共同開発区域であることについては一言も触れていません。
今回の中国の提案について中西輝政・京都大学教授は、「中国側の共同開発案は、話し
合いをするつもりはないとの意思表示だ。…けんかを売ってきたようなものだ」と述べ、
「（南砂諸島等の領有権をめぐる）南シナ海紛争の際も、ベトナムやフィリピンなどと協
議している最中に（中国は）軍艦を派遣し、経済開発を進め、実効支配した。…日本は、
南シナ海紛争などから全く何も学んでいなかった。外務省は事態が表面化することをこと
ごとく避け続けたが、こうした過去の日本の不作為（当然すべきことをしないこと）が今
回の事態を招いた」と指摘し、「取るべき対応はただ一つ。日中中間線に近い日本側水域
で試掘を開始することだ。領土・領海に対する国家の明確な意思を見せてこそ、外交ルー
トでの協議は成立する。」と提案しています。（産経新聞３月11日）
ところが日本は、二階俊博経済産業大臣が１月に、「試掘はしない」と言ってしまいま
したから、中西教授が言う「ただ一つ」の戦略が取りにくいわけです。外交戦略上、自分
の手足を縛るようなことを公言して日本に何のメリットがあるのでしょうか。
たとえば将棋で「私は飛車は動かしませんよ」と勝手に宣言すれば、相手は手を緩めて
くれるとでも思っているのでしょうか。
南シナ海紛争のとき、日本は「あたしにゃ～カンケーないよ」ということで傍観してい
た、自分の立場に置き換えて危機感を持つことができなかったということでしょうか。
中国はおそらく、南シナ海の成功を東シナ海にも当てはめようとするでしょう。特に日
本が軍事的に中国に手が出せないことや、日本の政府やマスコミに中国を支持する勢力が
あることを中国は十分知っているわけですから、靖国問題もからませながら、ポスト小泉
問題などで日本国内がバラバラになっているうちに、軍艦と共に尖閣諸島付近の開発を始
めると私は思っています。日本が何を言ったって、「だから共同でやりましょうよと平和
的に手を差し伸べているのに、勝手に日本が拒否してるのだから、知らんよ。東シナ海の
平和を破るのは日本だ。」と世界に宣伝するに決まっています。そのための提案なのです。
たとえ日本が、中国の示す条件に合った首相を選んで靖国参拝をやめたとしても、資源
開発をやめる理由は中国にはありません。日本の首相と資源開発は、そもそも別の問題だ
ということは、冷静に考えれば当たり前のことです。
日本はどうすべきでしょうか。諸君はどう考えますか。
二階経産相の前言を撤回して、中西教授の言うように中間線付近で試掘を開始するにし
ても、中国の軍艦がうろうろしているところへ、試掘を許可した帝国石油などの民間会社
は船を出してくれるでしょうか。
もし、民間船が中国の軍艦から砲撃を受けても（中国は日中中間線は認めていません）、
日本の法律では、自衛艦は中国軍艦に対して威嚇射撃しかできません。反撃して中国軍人
が死亡すれば、自衛官は日本国内で殺人罪に問われるのです。
伝え聞くところでは、自衛隊の指揮官は、現実にそういう事態になれば、殺人罪に問わ
れても構わないから反撃命令を下す覚悟であると言っているとのことです。
砲撃はしないまでも、民間船の進路を妨害することぐらいはやるでしょう。しかし、い
くら日本が領海侵犯だといっても、中国は自分の海だと言い張るだけで、これは水掛け論
です。日本船は引き返すしかありません。
竹島には韓国漁民が住みつく
尖閣諸島そのものについては、中国もいきなり上陸して奪うということはしないでしょ
う。それよりも資源開発を優先させることは明らかです。
領土として私がもっと心配なのは竹島です。
竹島には韓国の警備隊が配備され、60代の韓国人夫婦１組が住んでいるのです。それに
対して日本は、有効な対抗策が何も取れません。
昨年、島根県が２月22日を竹島の日と制定しても政府は冷やかで、今年の竹島の日制定
１周年のイベントにも、県が招待状を出した外務省や水産庁の官僚、県選出の国会議員は
１人も出席しませんでした。韓国を刺激したくないとか、地方自治体のイベントは政府が
出席する性質のものではないとか、国会が忙しいというのが理由だそうです。
しかし、国境問題を一地方にお任せということ自体がおかしいのです。
私は、このまま2、30年もしたら、国際世論も、竹島は実質韓国のものという判断をす
るのではないかと思えます。その最大の理由は、竹島領有に対して、他の国々からすると
考えられないほど日本政府は消極的だった、ということです。領有の実体も、領有する気
もなかったと判断されそうです。
日本は、韓国を刺激しないという政策で本当にこのままいくのでしょうか？
朝日新聞のように「冷静に、粘り強く交渉を進める」ことで、中国や韓国は、領有権や
ガス田開発を諦めてくれるのでしょうか。何の見返りもなく、話し合いで領有権を諦める
というのは、世界のどこを見ても、歴史のどこを見ても皆無です。
シビリアン・コントロールの限界
先ほど、自衛官は、目の前で民間人が攻撃されれば、武器使用の規制を破って殺人罪に
問われようとも、敵に反撃する覚悟でいるという話をしました。頼もしく感じる向きもあ
りますが、実は、これは大変重大な問題を提起しています。
ひとつは、自衛官が中央の命令（法令）を無視して現場の判断で行動するということを
意味しています。これは軍隊のシビリアン・コントロール（文民統制）から逸脱するとい
うことです。
文民（civillian）とは、軍人でない人のことで、軍隊の暴走を防ぐために、軍隊は軍
人以外の人が統制する仕組を文民統制（civillian control）といいます。戦後の日本で
は、自衛隊の最高指揮監督権をもつ内閣総理大臣を始めとする各大臣は文民でなければな
らないと定められています（憲法66条第２項）。さらに、政務次官、事務次官も文民です。
目の前で自国民が攻撃されても反撃してはならないという武器使用の大変きつい制限は、
文民統制、命令指揮系統の徹底を難しくしてしまうということが、上述の自衛官の覚悟で
見えてきました。過度な規制がかえって暴走を招くという図です。きちんと統制するには、
現場の兵士全員が納得いく規制でなければなりません。そうでないと、現場の正義感によ
るはやる気持ちを抑えることはできないでしょう。また、日本の自衛隊の指揮命令系統が
機能していないということを世界にさらす結果にもなります。
もうひとつは、その次の段階です。"違法な" 反撃をして無事に或いは負傷して戻って
きた自衛官に手錠をかけ、日本人自らの手で殺人罪で裁かなければならないということを、
日本人は受け入れることができるでしょうか。
そのような裁判が行われれば、中国は日本に、また50年以上謝罪と補償を要求し続ける
かも知れません。それこそがしてなりません。
私の取り越し苦労で終わることを強く祈ります。 〟