ともかく、進級おめでとう
《またまた、新年度が始まったな。》
『今年の桜は咲くのが早かったさかい、入学式までもたんやろ思たけど、開花後の気温が
低かったせいやろか、花が長持ちしてよかった。』
《やっぱり、桜咲く春はスタートって感じやな。》
『そうや。諸君もいよいよやな。自分自身の進路も決めて、本気モードに入っていかにゃ
ならんけど、最上級生としての責任も果たさにゃならん。』
《まぁ、せいぜい気張っとれくやす。》
『そんな投げやりな言い方じゃ励ましにならんやんか。』
《あはは．．． あんまりプレッシャーかけてもあかんし、中には素っ気なくされると逆
に頑張る人もおるやろ。》
『オマエは相変わらずひねくれとるなぁ。素直に応援せぇよ。』
《栄光に向かって、だ～っしゅぅっ！！》
『何で、そう極端なんや．．．』
《それにしても、Ｇ組は遠過ぎるなあ。》
『けど、今度は朝のホームルームはなくて、自分の授業の教室へ直接行くよって、かえっ
て、楽になるかも知れへん。といって油断せんと、余裕持って登校せなあかんで。』
《２時間目や３時間目から授業のある人はその時間に来ればええのんか？》
『そうやけどな、そうしていると生活のリズムが狂ってくるさかい、一番朝の早い日に合
わせて、毎日起きるようにした方がええ。』
《起きても、ウチじゃ勉強に身が入らんけどな。かといって、授業もないのに登校して、
どこで過ごせばええの？》
『校内ウロウロされても困るさかい、図書室で自習していてほしいんや。』
《わからん問題とかあったら、職員室へ行ってもええんやろ。》
『そうや。授業のあいている先生つかまえて質問すればええ。』
《そうやな。４単位しか選択科目を取らなかった人も、目一杯取った人も授業料は一緒な
んやさかい、空き時間を有効に使わにゃソン、ソンってことやな。》
『ともかく、選択したからにはきちんと
まうと、卒業できひんからな。』
《まだ選択科目で揺れ動いとる人、おるようやけど、気持ちを切替えて前向きにならな、
生活全体に悪影響が出まっせ。》
『ほな、あと１年、元気に行こうか。』
《よっしゃ。みんな、用意はええかぁ？ しゅっぷあ～つ！！》
『ローハイドみたいやな。』
《．．． みんな、ワカル？》
男子は青、女子は赤
始業式の日のホームルームで、席替えのくじを引いて黒板の座席表に各自で名前を書く
というとき、ホームルーム運営委員が「男子は青、女子は赤で書いてください」と言い、
みんなもそれに従っていました。
私は、やはりこれはごく自然なことなんだよなと、改めて思ったのであります。
何を言いたいかというと、もしこの場に "ジェンダー・フリー" の推進者がいたなら、
きっとクレームをつけるのではないかと、ふと思ったのです。
「男らしさ」「女らしさ」や「男だから」「女だから」という表現で社会的・文化的な
価値観によって区別される性差を gender といいます。gender rules で「男女の役割」
ということが辞書にも載っていますが、そのようなルールをなくそうというのが "ジェン
ダー・フリー" という思想です。
"gender free" は和製英語で、アチラでは通じないということです。
映画 "Back to the future" で、1985年に生きる高校生マーティー・マクフライが、タ
イムマシンに改造されたスポーツ・カー "デロリアン" でヒョンなことから、自分の両親
が高校生であった1955年に行く羽目になり、そこの喫茶店で "Gimme a PEPSI-free" と注
文するシーンがあります。字幕には「
"You gotta pay for it"「うちに
ジェンダー・チェックマニュアル
話を戻して、平成11年（1999年）12月に岐阜県地域県民部男女共同参画課が作成した
「ジェンダー・チェックマニュアル」（男女共同参画を推進するための行政刊行物等の作
成に関するガイドライン）の抜粋を載せておきましょう。（http://www.pref.gifu.lg.jp
/pref/s11123/gender/index.htm）（←リンク切れ2017.05.24）
この「はじめに」で、「男女共同参画社会を実現するには、県民一人ひとりの意識の改
革が必要ですが、「男は仕事・女は家庭」「男は外・女は内」という言葉に代表される男
女の固定的役割分担意識は、徐々になくなってきているとはいえ、社会一般の慣習や意識
の中に、まだ根強く残っています」として、「各種啓発誌等行政刊行物の作成を始め日常
業務において留意いただきたい点をまとめたものです」となっています。
岐阜県の「ジェンダー・チェックマニュアル」より （下線は筆者による）
１ 固定的な役割分担意識にとらわれていませんか
Ａ 男性といえばネクタイ・スーツ姿、女性といえばエプロン姿で表現していませんか。
Ｂ 家事、育児、介護の場面で登場するのは常に女性というように表現していませんか。
Ｃ 地域や福祉のボランティアは女性の役割というように表現していませんか。
Ｄ 職場の場面で女性が登場しても、きまって説明や指導を男性から受けていたり、お
茶だしやコピーをしているのは女性といったように表現していませんか。
Ｅ 職場の会議の場面は全員男性というふうに表現していませんか 。
Ｆ 性別で職業を固定して表現していませんか。
●家庭生活は男女がともに責任を担いながら築いていくものです。そのような視点で家
庭を表現しましょう。さらに、固定的な役割分担意識が残っている現状では、むしろ
積極的に男性が家事をしている姿を描くなど、あるべき姿を強調した表現にすること
も必要です。
２ 必要以上に女性と男性を区別していませんか
Ａ 性別によって人の特徴を決めつけていませんか。
・性による特徴の決めつけ例：「女は弱く・男は強い」「女は感情的・男は論理的」
「女らしい優しさ、男らしい決断」など
・性による決めつけの表現の例：「女だてらに」「女らしいきめ細かさ」「女の感性」
「男は泣くものではない」「男らしく豪快に」「雄々しい」「女々しい」など
同じ行動でも、男性なら「積極的」、女性なら「気が強い」など異なる評価・基準
を用いた表現をしていませんか。
Ｂ 女性は「赤系」、男性は「青系」など、服装や持ち物の色を性別で固定化していま
せんか。
Ｃ 「人形遊び」は女性、「野球」は男性など、遊びやスポーツの種目を性別で固定化
していませんか。
Ｄ 男性を「氏」で、女性を「さん」で表現したり、男の子を「くん」、女の子を「ちゃ
ん」と表現していませんか。
Ｅ 男性と同じ会社員なのに、女性を「ＯＬ」、「キャリアウーマン」と別に表現して
いませんか。
Ｆ 男性を表す言葉を基本的なものとして、女性であることを強調するための表現をし
ていませんか。：「幼児/幼女」 「老人/老女」 「養子/養女」 「悪人/悪女」など
（幼男、老男、養男、悪男という表現はありません）
Ｇ わざわざ「女性冠詞」をつけていませんか。：「女性弁護士」「女性社長」「女教
師」「女流作家」など
●「女らしさ、男らしさ」は、もって生まれた生物学的な性差ではなく、社会的・文化
的に作り上げられた性差からきています。このような、女性・男性という性別の上に
立って区分することは、ジェンダー表現の中に個性が隠れてしまうこととなります。
●わざわざ女性であることを表現することは、これまで主に男性が担っていた分野で女
性が活躍するようになったためにできた表現です。男性の領域に女性が踏み込んだ
「普通でない」意識が潜んでいます。このように、女性であることを強調するために
つける「女子・女史」、女性を特別視する「女性冠詞」は必要ありません。
３ 男女を上下関係や優劣をつけて表現していませんか
Ａ 名簿や順番で、男性が前、女性が後ろになるようにしていませんか。
Ｂ 女性と男性を並べて表現するときに男性を前に、大きく、中心にし、女性を付属す
るものとした表現をしていませんか。
Ｃ 家族を描くとき、中心に父親がいて妻と子どもが寄り添う表現になっていませんか。
Ｄ 女性は男性より劣ることを前提にしていたり、男であることに価値をおいた表現に
していませんか。：「女だてらに」「男まさり」「女にしておくにはもったいない」
「女にしては」「男がすたる」「男をあげる」「女の腐ったような男」など
Ｅ 女性を家や夫に従属する存在として表現していませんか。：「嫁にやる」「主人」
「入籍する」など
Ｆ 女性に対してだけ「仕事と育児が両立できるか」「どうせ腰かけ的に勤めるだけ」
などとか、結婚や出産を機に、女性が仕事をやめるのは当然だという表現をしていま
せんか。
Ｇ 職場で、指導者や上司、会議のメンバーは男性、補助的な仕事や受付案内は女性と
して表現していませんか。
Ｈ 「女の出る幕じゃない」といったような女性に登場の機会を与えない表現をしてい
ませんか。
Ｉ 男の子は高学歴が望ましく、女の子にはそんな必要がないかのような表現をしてい
ませんか。
●「父兄」という表現が「保護者」に変わってきています。男性のみを示す言葉を両性
を包括的に表す表現に変えていくことが必要です。
また、英語では、｢チェアマン」は「チェアパーソン」に、｢キーマン」は「キーパー
ソン」に、｢オンブズマン」は「オンブズパーソン」にと、表現も変わってきました。
４ 女性の性的な側面を強調して描いたり、商品扱いしていませんか
Ａ 人の目をひくため、水着姿の女性や口や胸元・足など女性の体の一部だけを強調し
た表現をしていませんか。
Ｂ 職務や能力に無関係な女性の容貌や外見のみを重視し、強調した表現をしていませ
んか。：「美人ＯＬ」「職場の華」「ミス○○」など
Ｃ 若さや性的魅力だけが、女性の価値であるかのような表現していませんか。
●性的な側面を強調して表現しているとは気づきにくいかもしれませんが、ポスター等
に登場するモデルは内容とはかかわりのない若い女性であることが多くあります。こ
のように、伝えたいことと無関係な女性を登場させることは、女性を外見で評価し
「見られる性」として商品のように扱うという意味で「性の商品化 」といえます。
●男性もポスターのモデルになることがありますが、多くはスポーツ選手など特定でき
る男性で、その活躍を背景に目的趣旨を訴えるものとなっています。
●女男を入れ替えて表現したとき変だなと思ったら、何か問題があると思いましょう
●イラストなどデザイナーや印刷会社に任せきりにせず、作成者がチェックしましょう
これは、６年以上前の物ですが、平成16年度～20年度の岐阜県男女共同参画５ヶ年計画
（http://www.pref.gifu.lg.jp/s11123/plan3/3shou1.html）（←リンク切れ2017.5.24）
の中に、「市町村や事業者等に対しても、こうした手引きの存在を周知し、必要に応じて
参考にしてもらうよう働きかけていかなければなりません」というように、適用範囲の拡
大を訴えていますから、このマニュアルはまだ生きていると考えられます。
ここで注意しておきたいことがあります。それは、このマニュアルは、男女共同参画を
推進するための行政刊行物等の作成の際の留意点を示したものなのに、行政側はそれをジワジワと拡大しようとし、国民は自ら自己規制を強く働かせるとい
う、とても制御しやすい国民性であるという点です。 〟