『アッという間に10月も半ば過ぎや。』
《ほんま、光陰矢の如しや。ドンドン年取るなぁ。》
『生徒諸君は年なんか気にしてる場合やないやろ。』
《どや、勉強、はかどっとるか？ 焦りも出るかも知れへんけど、まだ諦めちゃアカンで。
これかやらやど。これからぁ。》
『そうや。アタシも30年ちょっと前に受験生やったけど、この時期は、自分の限界なんて
考えもせえへんかったなぁ。』
《大学決めたんは、２学期末か年明けてからやったような気がする。》
『昔は受験科目は大雑把に文系の国公立・私立、理系の国公立・私立の４パターンしかな
かった。文系か理系かさえ決まれば受験科目はだいたい決まってしもうたんや。』
《今はセンターを使うか使わないかもあるさかい、自分に何が必要なのかがなかなか決め
られへんのやな。選択肢が増えて、かえって不自由になったって感じ。》
『それでかどうか、諸君が気持ちに余裕ないように見えるんは、気のせいやろか。』
《"受験に関係ない" 授業を受けてると遅れを取るなんて感じるんとちゃうか。》
『アタシなんかは、学校の授業と受験勉強とは別のものって感じやったけどなぁ。受験勉
強は学校が終わってから自分でやるものって思うとったと思う。』
《アテらのときはケイタイもパソコンもないさかい、今の諸君のように勉強以外に時間を
取られるようなものは余りなかった。》
『それに今どきの子は、最小限のことで世の中渡ろうとするさかい、それ以外のことをと
ても苦痛に感じるんやないかな。最小で済まそうとすると、それだけ精神的には負担が
増える。』
《学校が受験の面倒見過ぎってこともあるんとちゃうか。それで、「授業は授業、入試は
入試」って、学校自身が言えなくなってしもうたんやな。》
『そうや。私立とだけやのうて、都立どうしも競争せなあかんようになったさかい、進学
指導がウリの学校は、大学入試に合わせた授業をせな評価されんのやな。』
《どの教科でも、入試には出ないけどね、っていうところにもっと面白い話があると思う
んやけど、与えられた問題が解ければそれでおしまいって感じや。》
『そうやな。もっと知的好奇心をもって、教養としての幅広い勉強をするとエエんやけど。
そんな余裕ないんやろな。』
《せめて、新聞なんかは毎日読みなさいな。日本は今、内閣も変わって、小泉さんがすべ
て打ち壊したものを今度は作り直す段階や言われてる。国内だけやのうて、国外の環境
も難しい状況になってきとる。》
『ほ～。オマエも成長したなぁ。』
《バカにせんといてぇ。アテかていろいろ世の中のこと心配しとるんや。》
『へぇ～。たとえば、どんなこと？』
《少子高齢化で年金はどうなるんやろかとか、アテら公務員はこれからどんどん給料減ら
されるんやないかとか、退職金はもらえるんやろうかとか．．．》
『ちょ、ちょ、ちょっと待たんかい。お前の心配っちゅうのは自分のお金のことばかりか
いな。』
《何言うてんねん。それがまず一番大事やんか。それに、これはアテ個人の問題やおまへ
んでぇ。アンタは心配ないんか？》
『そりゃ心配やし、年金の建て直しは社会の大きな問題やけど、国外の環境っていう発言
とちょとギャップがあるな言うてんねん。』
《ン？ なんやったっけな。》
『なんや、オマエこそよう新聞読みなはれ。褒めてソンしたわ。』
北朝鮮の核実験
北朝鮮は９日、地下核実験を実施し、成功したと発表しました。
14日になって、米軍によって放射性物質が検出されたということですが、まだ不確定の
ようです。この３～４日、観測された地震の規模の小ささや、なかなか放射性ガスなどが
確認されていないことから、核ではなく、通常の火薬ではったりをかましたのではないか
という推測まで広がりました。
それはいかにもありそうな話に聞こえますが、私はそれはないと思います。なぜなら、
はったりであることが軍部にばれれば、金正日総書記は軍部の信頼を失い、軍部の士気も
低下し、内部崩壊を招くのではないかと考えられるからです。
はったりでないとすると、計画通りの結果だったのか失敗だったのかが問題ですが、も
し、失敗していたということであれば、逆に、計画よりも大規模な爆発になる方の失敗も
ありえると思えるわけで、私はそちらが心配です。本当の地下ではなく、山の横穴での実
験なのだそうで、山ごと吹っ飛ぶなんてことはないのでしょうか。あるいは、横穴から爆
風が吹き出すなどで、放射能による汚染などが懸念されます。偏西風に乗って、日本はま
ともに被害を受けます。
いずれにしても、核実験は１回だけということはないそうですから、近く２回目が行わ
れるというのが大方の見方です。そういう予断のせいか、先日、２回目の実験が行われた
という誤報が世界をかけめぐりました。
| 最初の 核実験 | 保有する 核兵器の数 | 核実験の回数 (臨界前核実験を 含まず) | 最後の 核実験 |
|
| 米国 | 1945 | 4896 | 1030 | 1992 |
| ロシア | 1949 | 7360 | 715 | 1990 |
| 英国 | 1952 | 185 | 45 | 1991 |
| フランス | 1960 | 348 | 210 | 1996 |
| 中国 | 1964 | 402 | 45 | 1996 |
| インド | 1974 | 30～40 | 3 | 1998 |
| ﾊﾟｷｽﾀﾝ | 1998 | 30～50 | 2 | 1998 |
| ｲｽﾗｴﾙ | － | 200 | 0 | － |
| 北朝鮮？ | 2006 | 不明 | 1 | 2006 |
|
2005年､ｽﾄｯｸﾎﾙﾑ国際平和研究所(SIPRI)などの推計｡ 米露は上記の保有核兵器の他にも多数を備蓄｡ |
||||
ここで、「核兵器の不拡散に関する条約」
（いわゆる核拡散防止条約：Treaty on the
Non-Proliferation of nuclear weapons）に
ついて見ておきます。
ＮＰＴは1970年３月５日に発効し、締約国
は、今年５月現在で189ヵ国になっています。
主な非締約国はインド、パキスタン、イス
ラエルで、この３ヵ国は、現に核兵器を保有
しています。核実験をしていないイスラエル
が核兵器を入手した経緯は、私は不勉強で知りません。
北朝鮮は、2003年１月にＮＰＴ脱退を宣言しています。これは一方的な宣言で、正式な
手続きがないということなのか、上記189カ国の中に北朝鮮は数えられているようです。
1991年にソビエト連邦が崩壊したとき、多くの核燃料が行方不明になっており、その一
部がテロリストグループの手に渡っているという話もあります。
それより前の1985年に制作された映画「BACK TO THE FUTURE」では、スポーツカーを改
造したタイムマシンのエネルギーであるプルトニウムは、そのタイムマシンを発明したエ
メット・ブラウン（ドク）博士がリビアのテロリストを騙して手に入れたものという設定
になっています。映画で実在の国の名を挙げてそういう使い方をするというのは、日本映
画では絶対にあり得ないことでしょう。
さて、ＮＰＴでは、国連の常任理事国でもある米、露、英、仏、中の５ヵ国を「核兵器
国」と定め、それ以外への核兵器の拡散を防止することを目的としてます。
条文では「核兵器国」を名指しで定義しているのではなく、「1967年１月１日以前に核
兵器その他の核爆発装置を製造し、かつ爆発させた国」と定義しており（第９条の３）、
結果的にこの５ヵ国になるというわけです。
核廃絶ではなく、すでに持っている者の既得権を守り、他には持たせないというのがＮ
ＰＴの本質です。インドやパキスタンは、自分たちも持つ権利があるということで、条約
を結ばず、まずインドが、隣国中国の覇権主義を警戒して核武装しました。すると、イン
ドと仲の悪いパキスタンも持つことになったのです。核ドミノです。
両国とも当初は世界から非難されましたが、時間がたてば "普通の" 国として扱われる
ようになり、今は制裁も受けていません。
北朝鮮はそれを狙っているとも言われています。それに、イラクは核を持っていなかっ
たからやられたんだ、核を持っている北朝鮮には誰も手出しはできないと踏んでいるのか
も知れません。
北朝鮮の望み
米民主党のクリントン政権は、北朝鮮にいろいろ援助をしていましたが、北朝鮮は、米
国の言うことを聞かずに、発電のためといいながら、核処理施設を作り始めました。その
ため、米共和党はクリントン政権の失策として追及し、共和党のブッシュ政権にかわりま
した。ブッシュ政権は、北朝鮮の不誠実に対して、核開発の資金を止めるために金融制裁
を行いました。すると北朝鮮は、核兵器を作るぞと脅しながら、ブッシュ政権に金融制裁
解除を要求し続けました。しかし、ブッシュ政権はまったく話に乗ってくれない。それで
今度は、核保有国どうしという "対等な" 立場で核廃棄をネタに２国間協議に引っ張り出
そうという作戦に出たということのようです。北朝鮮は「半島非核化のために核を持った
のだ」と主張しています。また、インドやパキスタンの例も念頭にあるでしょう。実際、
今は北朝鮮を中心に世界は動いています。ちっぽけな最貧国扱いとは違います。
北朝鮮が、日米中韓ソとの６ヵ国協議の中でではなく、米国だけとサシで話したがって
いる最大の理由として、金融制裁の解除もそうですが、最終的には、米国は北朝鮮を先制
攻撃しないという保証が欲しいというのがあります。米国の先制攻撃などあり得るのかと、
諸君は思うかもしれませんが、朝鮮戦争はまだ法的には終結していないのです。休戦協定
が結ばれただけです。北朝鮮としては、民主主義でない独裁国家が大嫌いな米国からいつ
攻撃されるかが、非常に不安なわけで、米朝講和条約とか平和条約とか不可侵条約という
ものを締結したいと願っているのです。
それなら、日本のように武装解除して平和国家を目指せばよいではないかと思うかもし
れませんが、そこは、民主主義・資本主義と縁を切った独裁者の欲望の方が優先するわけ
です。いつの世も、独裁者というのは、常に身内の造反に脅えています。軍や国民が国内
の現状に関心を持つのは困るわけで、独裁者は、常に国民の目を外に向けさせる努力をし
なければならないのです。外には北朝鮮侵略を狙っている憎き敵がいる、だから武装して
一致団結して国を守らなければならない、という教育を徹底するのです。
存続か解体か
しかし、一方の米国は、国家が麻薬や偽札・偽タバコ、さらには銃やミサイルなどの輸
出で資金を調達し、国内では徹底した反米教育を行っているような国と和平条約など結ぶ
気などさらさらないでしょう。民主党の "失政" の上塗りはできないし、テロや脅しには
屈しないという姿勢を崩すわけにはいきません。北朝鮮の "脅し" がエスカレートし、核
武装するか核関連物資を輸出するところまでいくようなら、米国は本気で北朝鮮の体制崩
しに取り掛かる可能性もあります。崩すときは、金総書記が自暴自棄、いわゆる
なる暇を与えてはいけません。そうなったときに一番危険にさらされるのは日本です。
また、北朝鮮がなくなると非常に困るのが中国です。
地続きですから難民がドッと押し寄せるというのもありますが、難民は、半島の情勢が
落ち着けば "祖国" に戻ることになるでしょう。中国にとってそれよりもっと重大な心配
事は、韓国が半島を統一することになれば、韓国と中国が直接国境を接することになり、
在韓米軍も恐らく増強されて中国と対峙するようになります。これまで中国は、西側先進
国と直接国境は接していなかったのですから、大きな変化です。しかも、北朝鮮が本当に
核を持っていれば、半島を統一した韓国が核保有国となり、中国は、ロシア、インド、パ
キスタン、韓国と、北方と東西が核保有国で囲まれることになります。また、昨年、北朝
鮮から50年間の経営権を獲得した、朝鮮半島最北端の不凍港・
ですから中国は、西側でなければ金政権でなくてもよいから、緩衝地帯として、そして
中国の弟分として北朝鮮には存続してもらわないと困るのです。それで、今回の安保理の
制裁案でも、中国はロシアとともに、武力につながる制裁には反対したのです。
日本は独自に、北朝鮮の船舶の日本寄港禁止、輸入禁止、北朝鮮人の入国禁止を実施し
ています。安保理でも、船舶の立ち入り検査を含む強い制裁案に当初は賛成していました
が、日本は法律上、強制的な立ち入り検査はできないし、米艦が実施して北朝鮮船が銃撃
などしてきても、近くにいるであろう日本の自衛隊は一切反撃することはできません。そ
れは、集団的自衛権の行使に当たるからです。つまり、賛成している制裁案の一部を実行できないということなのです。
紙面がなくなりました。次回もこの話を続けましょう。 〟