やっぱり．．．《やっぱり人やなかったんや。》
『オマエ、やっと気づいたんか。』
《アテらのこととちゃうがなぁ。ＪＲ
の電車に乗っとる人たちや。》
『へえ～。いったいなんの話やの？』
《０８１号で、座席のないＪＲ電車に
乗ったときの気分が「家畜になった
気分」って書いた、あのことや。》
『あ～、あれね。で、やっぱりって、
どうゆうことなの。』
《こんなポスター、見つけたんや。》
『おぉ～。そのまんま、とうもろこし
やんか。』
《すごいやろ。ＪＲって、エエ度胸し
とるよな。》
『自分の会社の客をこういう表し方す
るっちゅうのは、度胸がエエのか、
鈍感なのか、わからんけど、座席の
ない電車を走らせる発想と、根底で
つながっとるような気がするなぁ。』
《ほんまや。確かに、とうもろこしなら座席はいらんよな。》
『よう見ると、柱の陰から顔出しとるのは、駅員かいな。』
《ほんまや。ＪＲの社員はじゃがいもで、おあいこってことかいな。》
『そういう比較にはならんやろが。』
《ダメ押しに、"マナーをちゃんと守りヤサイ！" やってぇ。
命令形やから、ＪＲはかなり怒っとるぞっ、てゆうことなんやろな。そやかて、まとも
に訴えたんでは、いわゆる、角が立つってことなんやろ。》
『ある私鉄にも、ヘッドフォンの音について "ちいサイさん" とか 携帯電話は "やめマ
ウス" とか、マナー向上を呼びかけるポスターやステッカーが貼ってあって、あれも、
乗客を動物にしてあるな。』
《けど、あれは、マナーを守っとらん悪い客を描いとるんやろ。それに対してＪＲのは、
きちんと行儀よく並んどる客がとうもろこしやんか。》
『そうとも限らんようやで。座席を "詰めてスワローさん" は行儀良く詰めて座っている
乗客を燕にしとる。』
《あれは、昔のプロ野球の国鉄スワローズのパクリやな。》
『国鉄のときは、混んでて座れないのにスワローズだなんて、って揶揄してゆうとったん
やがな。』
《けど、"詰めてスワローさん" は、客を燕扱いしてけしからん、とは思わんのに、何で
"コーンなにスピーディー" はカチンときたんやろ。》
『やはり、ＪＲのは軽すぎるわな。このノリは。上品さがない。』
《動物やのうて、とうもろこしやしなあ。それに、何と言っても、あの、座席のない、い
わば窓付きのコンテナみたいな車両の印象が強いからやろな。》
『"コーンなに" で検索すると、可愛いとか、ＪＲもがんばってるな、という好意的なブ
ログも見つかるんやけど、感じ方は人それぞれなんやな、と改めて思うわ。』
《検索してみると、"コーンなに美味しい" なんちゃらとか、以前から使われてる表現や
ということもわかった。》
『オリジナルやないんやな。』
問題のピントがずれている
《それに、とうもろこしということ以外に、何か違和感を感じておったんやけど、今気づ
いたわ》
『なんやの。』
《毎日ＪＲ使うとるけど、朝夕、乗客は乗車位置にきちんと２列か３列で並んどるで。ポ
スター作ってまで「きちんと並べ」というほどひどい状態やないと思うんや。》
『なるほど。そういえばそうやな。そうやって改めてこのポスター見ると、乗り降りをもっ
とスピーディーにしてほしいということが、このポスターの趣旨なんやな。で、そのた
めには、きちんと並ぶ必要がある、ということなんやろな。』
《けど、そこが見当違いやというのがアテの違和感の原因のようなんや。》
『ほ～。』
《乗り降りを早くして列車の遅延を防ごうということなんやろうけど、発車が遅れる最大
の原因は、ちゃんと並んでおっても乗り切れないものが出ることや。体半分も入っとら
んのに、ギュウギュウ押しながら粘るから、発車が遅れるんや。》
『そうやな。結構しつこく粘る人おるよな。』
《次に．．．》
『ほ～。次があるんかいな。』
《そうやぁ。次の原因は、降りる人が遅くなるってことがしばしばある。》
『そうそう。混んでるときに、奥の方からなかなか出てこれへんのやな。』
《１回乗った人がもう一度降りて待つなんてこともあるがな。》
『あるある。』
《そやさかい、このポスターはピントがずれとると思うねん。》
『は～、なるほどねぇ。』
《しっかり並ぶということよりも、次の電車を待つ余裕を求めるべきなんや。》
『「マナーを守りヤサイ」って書いてあるけど、このマナーってどういうことやろ。しっ
かり並べ、ということに照してみると、割込みするなってことかいな。』
《それはそれでイカンことやけど、スピーディーとは関係ないわな。》
『そうやな。そうすると、このポスターは文言が噛み合っとらんちゅうことかいな。』
《そう。それがアテの感じている違和感の原因やと思う。》
国民はインコ
《ノリが軽過ぎるっちゅうか、ピントがずれとるっちゅうか、そんなところは役所と似と
るかも知れへんな。》
『というと？』
《"サイバンインコ" や。》
『ああ、あれなぁ。
国民は真剣に悩んどるのに、その気持ちを逆なでするはしゃぎぶりや。』
《ホンマ、能天気やな。"裁判員参上！" で軽すぎるって、批判を浴びたばかりやろ。》
『24日朝のテレビで、コメンテーターの清水圭はんは、成人だけが対象のものを、こんな
着ぐるみで宣伝しないで、もっと大人向けにやるべきだとゆうとった。』
《全国の検察庁が、裁判員制度の広報のために考えたキャラクターが５月23日に法務省に
集まって、その中で、福岡高検が作った "サイバンインコ" を鳩山邦夫法務大臣が一番
気に入って、自ら着ぐるみ着てはしゃいどったわけやけど、あの法務大臣は、ほんまに
軽いな。》
『裁判員制度は、来年の５月21日以降、各地方裁判所に起訴された凶悪犯罪の裁判から導
入されるんやろ。それなのに、今なお、見直しを訴える声は続いとるわな。そもそも、
罪人を裁く責任を国民にも分かつために、ということ自体、おかしいって。』
《国民の義務は、これまでは三大義務ゆうとったんが、これからは四大義務になるっちゅ
うことやろな。》
『けど、三大義務＝教育、勤労、納税は憲法に書かれておるけど、裁判の責任の一端を担
うという義務の根拠は全くない。』
《こんな重大な問題を孕んどる制度の広報にサイバンインコやらっちゅうもんでお祭り気
分で騒ぐっちゅうのは、国民を完全に馬鹿にしとるよなあ。とうもろこしどころやない
でぇ、これは。》
『インコっていうのは、自ら考えてしゃべるんやのうて、ひとの言ったことをただ繰り返
すだけやろ。もしかしたら、裁判員ってぇのは、裁判官の言うことを訳も分からずただ
復唱するだけのもんやという意味が込められておるのかも知れへんな。』
《そんなインコごときに、死刑だなんて言われる被告も気の毒やなァ。》
「国家賠償訴訟にこそ国民の目を」に大賛成
５月25日のテレビ「サンデー・プロジェクト」の中の特集・シリーズ「言論は大丈夫か」
の「冤罪被害救済されず？ 国家賠償法を問う」で、警察・検察の捜査ミスによる冤罪の
被害者が国家賠償訴訟を起こしても、ほとんどは原告敗訴、国の勝訴となっていることが
伝えられました。
国家賠償訴訟では、裁判官は、警察や検察の主張をほとんどそのまま受け入れるという
のです。
ジャーナリストの大谷昭宏氏は、裁判員制度が始まって３年後に見直すときに、国家賠
償訴訟にこそ、国民の目を入れるべきだと訴えていました。日本が本当に国民主権の民主主義国家であるならば、国家権力を国民がきち
んと監視できる仕組みをしっかり作っていくことには、私は大賛成です。 〟