１年ぶりの正月『あけましておめっとうさん。』
《あけましておめっとぉ〜。》
『また新しい年がきたな。』
《１年ぶりの正月や。》
『そりゃ当たり前や。半年ぶりやったら２倍の速さで年とってまうがな。』
《ほな、２年に１回なら２倍長く生きられるかいな。》
『正月早々にくだらんことゆうとるんやない。それにこれ、いつだったかもいうとった気
がするなあ。』
《なはは．．． ところで、今年は丑やけど、どんな年になるんやろな。》
『今年の元日は、年賀状作りながら朝まで生テレビ見とったけど、ともかく、製造業を中
心に大勢の人がクビになって、そのうちの１割ほどは寮生活やったので住む所ものうなっ
て、いわゆるホームレス状態の人が急激に増えとることに、緊急に対応する必要があるっ
ちゅうことでは与野党一致しとった。』
《うっかりすると、正社員と非正社員の対立の図になりそうやけど、それだけは避けへん
と、企業の思う壺って感じの話もあったな。》
『非正社員の雇用を守るために正社員の待遇を落とすと、非正社員の待遇はさらに悪くな
る。それに、解雇するときは先に非正社員からということにはなんら変わりはないっ
て。』
《製造の現場から人がおらんようになったら会社はどうなるんやろ。》
『極端なこと言えば、最終的に土地や建物、設備という資産だけがその企業の価値っちゅ
うことなるんやろな。』
《それがアメリカ式の投資かいな。》
『投資やのうて、企業を投機対象にしてしもうたということや。』
《株を買って会社を応援するんやのうて、お金の出入りの計算だけで瞬間瞬間で株の売り
買いを繰り返していくんやな。》
『そうや。会社の支出を減らす最も手っ取り早い方法が従業員の解雇や。』
《それで解雇しやすいように、規制緩和して派遣労働者を増やしていったんやな。》
『そうや。けど、クビになった労働者をどうするかっちゅう、いわゆるセーフティーネッ
トについてはほとんど整備されんままでいるところが、問題なんや。』
社員は家族 が懐かしい
《そもそも、解雇しやすいようにすること自体がおかしいんとちゃうか。》
『もちろん、規制緩和のとき、そんな言い方は誰もゆわへん。労働者の流動化っちゅう言
い方をしたんや。』
《転職しやすいようにってコトかいな。》
『それもあるやろうけど、会社側からすれば、本音はやはり、バブル崩壊で人を減らした
かったってゆうのは始めからあったやろな。』
《終身雇用制やと、身動きが取れんちゅうことか。》
『かつては、社員は家族も同然というのが日本型の雇用やったんやけどな。』
《そう。会社が運動会やって、社員の家族がみんな楽しんどったしな。》
『それがいつ頃からやろな。段々のうなってきたのは。』
《ようわからんけど、若い人たちは、そういうのをだんだんうっとうしく感じてきたんや
なかったかいな。》
『プライベートの時間までなんで会社の上司と一緒に過ごさにゃアカンのやって感じやな。
多分、バブルのころにそれが強くなったような気がするな。』
《バブルになって、会社に忠誠心を示さへんかて給料いっぱいもらえたもんな。》
『そう。それを、自分は仕事ができるって錯覚したんや。若い人たちは。』
《で、バブルが弾けたとき、成果主義なるものがアメリカから入ってきて、年配者でも解
雇できるようになったんやな。》
『成果主義は、本来は社員のやる気を引き起こさせるためのものやったはずなんやけど、
人を減らしたい会社は、成果主義をきちんと研究することなく導入して、首切りをリス
トラと称して、社員の解雇理由に成果を利用したんやな。』
《終身雇用、年功序列が崩壊した原因に、有能は人は転職する、という求人雑誌の宣伝も
影響しとると思う。》
『それも大きな勘違いやった。けど、ともかく企業が人を切りやすくするための方便とし
て、人材の流動化とかいうことばで労働者の派遣を特殊な業務だけでなく、一般の製造
業にまで広げたんや。』
《若い人の間で、出世はしたくない、責任は負いたくない、並の生活ができればいいとい
う志向も正社員の減少を助けてると思うなあ。》
『重要な地位に立ちたくない若者と、会社の特定の業務をアウトソーシングと称して自社
の業務から切り離そうとする会社の利害は一致したってゆうふうに、アタシは思うとる
んや。』
《会社の運動会やら退勤後に上司と飲み屋へ行くのがうっとうしいと思うのと組合離れは
根は一緒やろうな。》
『今、解雇されている非正社員は組合もなく孤立無援の状態や。ボランティアが炊き出し
をやったり連合が相談などに乗ったりしているけど、それ以上のことはできひん。』
《契約の満期前に解雇を通告されて慌てて３人ほどで組合を結成して会社と交渉したら、
契約の中途での解雇は撤回してくれたという例もある。》
『平穏なときは、特定の団体に所属するのはうっとうしいといってフリーターでいたり派
遣社員としてうまくいっても、いざというときにはとても弱い立場に立たされるんや
な。』
《それに、嫌なことを無理強いするようなこともガッコや家庭からなくなったってのもあ
るやろな。それで、気の向かない仕事はしたくないってフリーターが増えたんやろ。》
『そうやな。なんちゅうかなぁ。法律上の規制緩和だけが原因やのうて、それぞれの立場
の人の要求が、結構同じ方向に向いておったんやないやろか。1990年代あたりは。』
《ともかく、2009年の喫緊の課題は、この雇用問題の解決やな。》
『すぐに解決っちゅうのは難しいやろけど、対症療法的でもともかく緊急の援助とかはす
ぐに実行せにゃアカンやろ。と同時に、是非、５日からの通常国会で、政争でなく、与
野党とも真剣に政策を検討し、実施の方向に動かなアカン。』
《それに、どうやって内需を拡大させるかや。いかに日本人が日本国内でお金を使うよう
にもっていくかや。》
『技術立国としては、世界トップレベルの技術を持った中小企業も、この不景気で消えて
なくならないように、公的に保護することも考えにゃアカンやろ。』
《環境技術なんかは、絶対に絶やしちゃいかんよな。》
『そうや。銀行は目先の利益しか見いひんから、10年20年というスパンで投資するなら、
ある程度公的な資金やないとできんやろ。』
《あの、新銀行東京は、そういう役割をすべきやったんとちゃうんかな。》
『そうやな。けど、そんな遠くまで見る目はなかった。』
《都知事は、民間に任せた結果がこれだ、と、吐き捨てるように言うとったのをテレビて
見た記憶がある。》
『あの規制緩和の時代では、民間人に任せれば何でも効率よくコトが運ぶと信じられてい
たんやな。』
学校の先生は部活、勉強は塾の先生
《そういえば、ガッコでも民間人から校長を迎えたな。》
『そのときは注目されたけど、その後、どうなったんやろ。』
《杉並区の中学校では最近でも話題になっとったけどな。》
『夕方から学校の教室で、塾の先生が塾と同じ内容の補習をするってやつやな。』
《アテはな、なんで学校のセンセが補習せえへんのかって思うたんやけどな、その中学校
の民間出身の校長は、放課後は部活をセンセが見る、部活が終わってセンセの勤務時間
の後で有料で補習をするって説明やった。》
『部活は民間人に任せるってコトは、何で日本の学校ではまったく考えられへんのやろ
か。』
《というと？》
『民間人を学校に入れるなら、部活が一番効果的やないかと思うんや。』
《そういえば、ガッコのセンセの免許には、部活の指導法なんてのは要件にはないわな。》
『そうやけど、東京では部活指導も本務だってコトに決めた。』
《でも残業手当はナインやな。》
『あるときは本務やからって言って管理して、あるときは、教員の奉仕の精神に期待す
る。』
《労働基準局が厳密にチェックすれば、ガッコなんてのはサービス残業の塊みたいなもん
やってことになるやろな。》
『日曜出勤かて、８時間以上で1600円程度の手当てやさかいな。』
《時給200円なんて、民間じゃ考えられんやろ。交通費と昼飯でおしまいや。》
『けど、都知事は民間のコスト意識を先生も持てという。』
《そんなことマジにやったら、たちまち授業料値上げになるがな。》
『補習や追試も無料やさかいしな。』
《なんか、愚痴っぽくなってきたなあ。》
日本はあと６年の命？
『そう。2009年は管理者と被管理者、強者と弱者の仁義なき戦いを、仁義も人情もある関
係にしていかな、日本人は精神的に荒んでいく。』
《日本の人口は２年連続減少するらしいけど、数の問題だけやないっちゅうことやな．》
『アタシはな、こういうときにいつも思い出すのが、1995年に当時の中国の李鵬首相がオー
ストラリア訪問中にハワード首相に言った、日本は20年もしたらこの地球上から消えて
なくなるという発言や。』 （→Ｎｏ.０１７）
《なるほど。あと６年やな。》
『何まともに計算しとるんや。』
《そやけど、６年後ってどうなっとるんかまったく予測不能やな。予測不能ってことは、
日本が存在しているかも確信は持てないってことやろ。》
『李鵬首相の発言は、信じるとか信じないっていうことやのうて、そうならんようにしっ
かりせぇという、有り難い忠告として聞いておかなあかんやろ。』
《ふ〜ん．．． あと６年かぁ．．．》
『おい、どないしたんや。しっかりせえ！ おい！』
《ふ〜ん．．．》
『えらいこっちゃ。マジになっとる。』
《．．．》
『けど、今の政治家見とると、そんなこと絶対あらへんって言い切れん弱さがあるなぁ。』
《．．．ア、アンタまでそんな弱気になったら、アテは安心して弱気になれへんやんか。》
『なんや、それ。』《ともかく丑年や。しっかり大地を踏みしめて、前へ進モ〜。》 〃