座席の話のつづき
で、結局、誰一人席を譲らなかったわけですが、あの老人は、３つ目のバス停で、また
ヨイショッといって降りていきました。
一瞬、車内にホッとした空気が漂ったように感じました。
さて、始発駅でも席を譲るべきかという前回からの課題ですが、まず、私自身はどう対
応するかを考えてみました。
前回述べた状況、つまり、私自身、是非座りたいと思って目の前のバスをひとつ見送っ
て、列に並んで座った場合には、譲りません。目をつぶってうつむいているでしょう。
座れることを期待せずに乗って、たまたま座れたというときには、譲る可能性が高いで
す。
もうひとつ、重要な要素があります。それは、私の年齢です。
20代、30代のときには、そもそも、座るために並ぶようなことはしなかったし、座る場
合も、最も後ろの席が空いているときに限っていました。（私の利用しているバスは、前
から乗って、中ほどのドアから降りる仕組みになっています。）
電車では、私が座ってもまだ席が空いているようなときだけ座るようにしていました。
目をつぶってうつむいてでも座るようになったのは最近、ここ１・２年のことです。老
人の前で座っていても、周りから冷たい視線を受けなくて済みそうな風貌になってきたと
いうことも、気を楽にしてくれています。
それでもやはり、わざわざ並んで座ろうというのは月に２回程度です。毎日乗っている
ＪＲ山手線では、朝は競争すれば座れますが、私は座りません。
こうして自分のことを振り返ってから、前回の課題を見直すと、一般的にみんなにこう
すべきであるという結論を出すことは困難のようです。結局は、座らなくても大丈夫な人
(時)は、始めから座らないか、必要になったら速やかに譲ると良いだろう、というところ
でしょうか。
優先席は譲るのではなく空けておくべき
今、最後に言ったことについて、もう少し話を進めておきたいことがあります。
車内で、「（優先席は）お年寄りや体の不自由な人、妊娠している人、小さな子供連れ
の人に席を譲りましょう」というようなアナウンスが流れます。
しかし、現実には、私が毎日乗るＪＲ山手線で、10代と思しき女性から30代ほどの大ま
たで歩ける男性までが、我先に優先席に座ろうとしている姿を見るにつけ、もはや、「席
を譲りましょう」ではダメだなと、つくづく思うようになったのです。
高々15分ほどの乗車で、何故にそんなに競って座りたがるのか。こういう光景はいつご
ろから目立ち始めたでしょうか。
一方、本当に席を必要とする人の中には、ホームに入ってきた電車の優先席が満席だと
見るや、優先席に近づかないよう、隣のドアに移動して乗ってくる人がいることに気づい
たのです。
そこで、各交通機関に提案ですが、席を必要とする人が来たら譲りましょう、というア
ナウンスはもうやめて、「お年寄りや体の不自由な人、妊娠している人、小さな子供連れ
の人たちのために優先席はできるだけ空けておきましょう」ということに変えるべきだ
と思います。あるいは、もっとストレートに、「～それ以外の人は優先席には座らないで
ください」でもいいかも知れません。
いつでも譲るつもりで優先席に座っているひとも、周りからは、見かけは若いけど何処
か具合が悪くて座っているのかも知れないと、逆に気を使われている可能性にも気づくべきです。そういうことに気がつけば、優先席は空けておくべきだと
いうことの意味がわかるでしょう。 〟