Ｎｏ.１０９ 2010年８月28日いやはや．．．
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４月以降の都内の主な教職員逮捕者
2010年８月23日産経新聞より [ ]内は筆者が追記 | ||||
| ５月 | 12日 | 都立高教諭 | 痴漢 | [８月28日現在処分未定] |
| 渋谷区立小教諭 | 痴漢 | [８月28日現在処分未定] | ||
| 18日 | 町田市立中教諭 | 痴漢 | [８月28日現在処分未定] | |
| 20日 | 江戸川区立中教諭(35歳) | 児童買春(出会い系) | [６月29日懲戒免職] | |
| 31日 | 練馬区立中教諭 | 猥褻行為 | [８月28日現在処分未定] | |
| ６月 | 10日 | 都立高教諭(47歳) | 児童買春(掲示板) | [８月４日懲戒免職] |
| 27日 | 稲城市立小教諭(29歳) | 強姦傷害(被害者自宅) | [８月28日現在処分未定] | |
| ７月 | 26日 | 三鷹市立小事務職員[35歳] | 盗撮[駅エスカレータ] | [８月28日現在処分未定] |
| 28日 | 国分寺市立小教諭(39歳) | 盗撮(ＪＲ車内) | [８月28日現在処分未定] | |
この表が載っている記事の見出しは、
小学教諭 胸元を盗撮容疑で逮捕
痴漢、児童買春…都教委に危機感
"非常事態" 厳しい研修
です。
この記事の中で、７月28日に逮捕された教諭の小学校の校長の
「学校としては日常的に服務に関する研修を実施しているので、『なぜこんなこと
に』という思いは強い。」
というコメントと、都教委幹部の
「過去に例のない研修を行っている最中だ。一部の教職員のモラルハザードを少し
でも改善していきたい。」
という話を載せています。
また、都の対応として、各区市町村や学校への服務通達にとどまらず、都教委の担当職
員が全公立学校長に対して直接の服務研修の実施に乗り出していることが書かれています。
この表は３ヶ月間に限定した
飲酒運転や、逮捕はされないけれど個人情報の紛失等、枚挙に
焦るのも無理からぬことです。
ちなみに、懲戒処分については、東京都教育委員会のホームページから「報道発表資料
一覧」に移り、「服務事故」で検索すればズラ～と出てきます。
教員の懲戒処分について文科省が昨年行った全国調査では、2008年度について次の表の
ようになっています。
| 交通事故 | 体罰 | 個人情報の 不適切な 取扱い | 猥褻行為等 | 公費の不正 執行･手当等 の不正受給 | 国旗･国歌 の取扱い | 争議行為 | その他 | 合計 |
| 2,502 | 376 | 277 | 176 東京19 | 73 | 69 | 5 | 542 | 4020 |
このうち、猥褻行為の対象が
自校の児童生徒 89人(50.6％)
自校の教職員 29人(16.5％)
18歳未満 28人(15.9％)
などとなっています。
そして、176人のうち、99人(56.3％)が懲戒免職になっています（東京は19人中11名・
57.9％)。
自校の児童生徒対象が半数であることから、指導の際に教員が子供と１対１にならない
よう指導している県もあるそうです。
助平教員は減らせるか？
これは大変難しい課題です。こうした教員の事件について、インターネットの掲示板などでも多数取り上げられてい
ますが、それらは、真面目な議論から「教員＝アホ」と言い放つだけのものまで、まさに
玉石混交です。しかし、結局どうすればよいかということになると、いいアイデアは出て
きません。せいぜい、厳罰に処せというものです。
都教委は、性犯罪や飲酒運転による人身事故は懲戒免職と決めています。上の表で処分
未定のものも、いずれは懲戒免職になる可能性が高いでしょう。
ただ、痴漢については、都教委の懲戒免職という決定が覆った例もあり、多くの批判が
出ています。詳しく知りたい人は、「痴漢 都 教員」で検索してみてください。
私もここで何か効果的な提案ができるわけではありませんが、少し考えてみます。
研修の限界
罪を犯してしまった場合には厳罰で対処ということに、私も異論はありません。しかし、予防という点で言うと、それだけではあまり効果はないと思います。たとえ死刑にしよう
とも、この種の犯罪はゼロにはできないでしょう。
また、都が今実施している研修も、この種の犯罪の防止にはあまり役立たないと思いま
す。しかし、都教委としては立場上、何か手を打たなければならないので、言い方は悪い
かも知れませんが、アリバイ的にやっているに過ぎないというのが、私の印象です。
というか、それ以外に手の打ちようがないということでしょうから、管理者として仕方
ないとはいえ、むしろ、都教委が気の毒にさえ思えてきます。
セクハラや体罰などについても研修は繰り返されていますが（私はセクハラという言葉
は嫌いですが．．．）、こちらは、ある程度効果は期待できると思います。なぜなら、こ
れらは、そもそも、何がセクハラ・体罰に相当するのかが、個人の解釈によって異なる部
分が多く、その辺をきちんと事例を示すことで意識を高めることができる余地があるから
です。
しかし、こと性欲という動物の本能がかかわるものというのは、なくすことは不可能で
しょう。いくら「教員たるもの」とか「懲戒免職になるぞ」などと説いてみても、分かっ
ちゃいるけどやめられない、という人は必ずいるのです。これは社会的地位なども関係あ
りません。特にアルコールが入ると、本能を抑える理性が弱くなります。
どうしても本能を抑えることができないという人達に対して、都の今の研修、つまり、
してはいけないこと、それをしたらどうなるのかということを教え込むだけの研修で期待
できる効果は、せいぜい、教え子を対象にすることを減らすということでしょう。この点
はかろうじて理性で抑えられるかも知れません。
しかし、その抑制の分を外で発散するようになる可能性は大きいと思います。この点は
別の対策を講じる必要があります。
原因を調べたがらない
都は、教員が事件を起こすたびに全職場に全教員に対する研修を命じますが、都は、なぜそのような事件を起こすのかという、原因究明にはあまり熱心ではないようです。
世間一般でも、犯罪の原因というと、犯罪者を擁護しようとしているとか責任転嫁であ
るとか、本来あってはならないことなのだから理由もヘッタクレもないというような、い
わば原理主義的な考えの人が大勢いて、原因について述べることを躊躇する傾向があるよ
うに思えます。
犯罪とは違いますが、都教委の福利厚生部が行なった教職員の休職状況の報告によると、
都の教員の休職者は増加の一途をたどり、2008年度は788人です。そのうち、精神疾患が
540人(68.5％)です（原因は自己申告）。
全体に対する精神疾患による休職者の割合は、都は全国平均0.59％よりも高く0.94％で
す。ほぼ、100人に１人という割合が、世間的に高いのかどうか分かりません。
この報告には、「(自己申告ではなく客観的な）原因の究明は、本人や第三者の見解と
ともに、状況の把握も必要だが、現在、その調査については行っていない」とあり、「休
職理由分析からの対策構築には、詳細な再調査の必要がある」としています。
これは休職者であって、精神疾患で退職した人も相当数いるはずです。
職場の風通し
当人は辛いのだと思いますが、こうして医療機関にかかって休職する人は、善良な人だと言えます。
ここで問題なのは、普段の仕事ぶりからは全く予測することのできない行動を起こす場
合です。冒頭の逮捕者も、おそらく、普段の仕事ぶりには何の問題もない人だったのでは
ないかと思われます。
都教委の危機感は、こういった人たちが問題行動を起こすことをいかに思いとどまらせ
ることができるかということだと思います。
命令による研修は、メンタル面のケアにはなりません。それは、管理する側が管理され
る側に行う研修なのですから、どうしても管理的な内容にならざるを得ません。
また、都のように、メンタルヘルス対策として教員専用の土日の相談所を開設しても、
それはすでに精神疾患の自覚症状が出てきてからの話になりますから、自覚症状のない人
は相談には行きません。
それはそれであって構いませんが、それよりも、職場の同僚同士の日常的な交流が非常
に重要だと、私は思っています。
交流といっても、組織的である必要はありません。休憩時間などの何気ない気さくな会
話で良いのです。
内容は他愛ないもの、教室では言えないような下世話な話も含めて、明るく笑い飛ばせ
るような冗談、これが、潤滑油として大切です。
教員の不祥事が報道されれば、「全くドジなんだから」とか、人の振り見て我が振り直
すという感じで「こんなことしたらクビで仕方ないな」とか、時には「挑発するほうはお
咎めなしかよ」という発言だって、いいと思います。
こういう会話の量が、今は非常に減っているのではないかと思います。
一人で頭の中で考えるのと違い、みんなで会話し合うと、自分は大勢の中の一人として
認識できますから、何かのときにブレーキがかかりやすいと、私は感じています。
ところが今は、まるで、
幾粒かずつ互いにくっついていれば、こぼれずにお茶碗に留まれたかも知れないのに、と
いう感じです。
黄粉ご飯になってきた原因はいろいろあるでしょう。個人主義の一層の浸透、世代間の
疎遠化、１校の勤務年数の短縮化、評価基準の不明確な相対評価による教員同士の競争、
職務の多忙化、職場での教職員のレクリエーション（たとえば、定期考査中、部活停止で
空いている校庭や体育館でのスポーツなど）の自粛．．．
採用時の身辺調査
よく、教員を目指す人の中に、子供が大好きだからという人がいますが、私は、子供が大好きであるということは、教員の適性としてプラスのことなのか、疑問に思っています。
好きなのか、興味があるのか、その線引きは難しいと思います。好きなだけでなく、大
人として子供を教育するのだという使命感をしっかり自覚しなければなりません。子供と
仲良くしたいというのでは、一線を越える危険性があると、私は思います。
このあたりのことは、採用試験の面接での自己申告では、見極めることは困難です。
そこで、教員の採用時に、身辺調査をすべきではないかと思うのです。
警察官採用では、やっていると聞きます。
方法は私には良く分かりませんが、別にコソコソやる必要はなく、大学や高校の友達や
先輩・後輩、近所の人たちに聞いてみればよいのです。家族は参考になりません。むしろ、
家族に近づいてはいけません。情実を疑われます。
採用試験の客観性や教員志望者の人権擁護という問題があるかも知れませんが、将来の
児童・生徒の安全の方が優先です。
それでも、警官が痴漢をしたり盗撮をしたり、立場を利用して被疑者などと不適切な関
係になったりと、不祥事はなくならないように、教員もこうした性犯罪をゼロにはできな
いと思います。しかし、100％効果がなければ無駄だなどと言って何もしない、そして、
結局「指導を一層徹底してまいりたい」といって上からギュウギュウ締め付けるだけ（上
述の "過去に例のない研修" もこの類）では、むしろ、職員のストレスはますます強くな
るだけです。また、大多数の普通の教員のプライドをも傷つけることになります。
教員も生身の人間であるということを忘れずに心理的な面をしっかり研究し、科学的に
方策（これは戦略といっても良いかもしれません）を考えなければいけません。日本人の
最も苦手とするところでしょうが。
当然のことですが、「あってはならぬこと」と言えばなくなるというものではありませ
ん。建前や管理者の面子のためというのでは、効果的なアイデアは生まれないでしょう。
誤解を恐れず端的に言えば、性欲をなくすことはできないという事実を踏まえれば、合
法的な発散の仕方を心得ているということも、教員の重要な用件ではないでしょうか。
もっとも、心得ているかどうかはどうやったら見極められるかという問題はありますが。（面接で単刀直入に聞いてはだめ？）
"非常事態" というなら非常手段も視野に入れて方策を考えるべきです。 〟