東日本大震災から半年
次の文章は、勤務校のＰＴＡ会誌(７月発行)に寄せたものです。執筆は５月です。一年間のプレハブ仮校舎から、きれいになった本校舎へ戻ってきた。その引越しの直前、
東日本を史上最大級の地震と津波が襲った。ちょうどそのとき、学校の駐輪場にいた私は、
地面が前後左右に動くのを足で感じながら、プレハブ校舎がグニャグニャと揺れるのにた
だ見入っていた。
被災地では住む家や校舎がないという一方で、われわれは新しい校舎に移り住み、あの
プレハブ校舎は無用のものとして解体されつつある。解体されて、今度は東北のどこかで
また組み立てられるのだろうかと、復興の一場面を想像しつつ、それに比べてわれわれの
幸運については、誰にということもないが、感謝の気持ちが心の奥に湧き上がってくる。
津波で一切が流された街の中にポツンと奇跡的に残った梅の木が白い花をつけている映
像をテレビで見た。こちらでは、バス通りの桜、民家の庭先の椿、本校正門脇のはなみず
き、いたるところの路傍のひなげしやはるじおん、歩道や団地の植え込みのつつじらがい
つも通りに花開き、荒々しい木肌を晒していたいちょうも、新緑の衣をまとい、人間の右
往左往などお構いなしに、季節は着実に移り行く。今度の夏は、多少の暑さごときに文句
など言っている場合ではないのだろうなと覚悟を決める程度では復興の手助けにもならないが、季節の移ろいのように被災地の復興も着実に進んでほしい
と、ただただ願うばかりである。 〟