幾何という言葉を知らない
私は先日、諸君のほとんどが「
ショックを受けました。
今や、高校までの教科書では使われない言葉ではありますが、教科書以外の所で見たり
聞いたりすることすらなかったのかということに驚いたのです。
たとえば「幾何学模様」なんて聞いたことないですか。
もしかすると、大学の時間割で初めて出会うことになるという可能性もあったわけです。
授業で、「幾何」という、漢字としては意味不明の不思議な言葉の説明をしたのだけれ
ど、もともと「幾何」という言葉自体を知らないのであれば、あまりインパクトはなかっ
たでしょうね。
一応ここで繰り返しておきますと、幾何は、geometry が中国に伝わったときに、「ジ
オ」の音を漢字で表したものです。「ジ￣ホ〜」というようなを発音だそうです。それが
漢字のまま日本に伝えられて、日本人は「きか」と読んだということなのです。
中国では、音で入ってきた言葉を中国の文字（漢字）で表しました。日本では、文字で
入ってきたものを日本語の音に直しました。こうした言語の伝わるようすを見るのも、ま
た興味深いところだと思います。
統計の日 〜10月18日〜
国民に統計の重要性を理解してもらおうと1973（昭和48）年に政府が制定しました。祝
日にするという動きは、ありません。
現在の生産統計の起源となった「府県物産表」についての
（明治３）年９月24日（旧暦）を新暦に直すと10月18日になります。
本紙で繰り返し述べていますが、統計学は決して理系のものではありません。むしろ、
いわゆる文系の実務において必要とするものです。統計は情報処理の基礎でもあります。
私たち数学の教員も、統計学を苦手とする人が私も含めて多いのです。それは、数学の
中でも統計学は応用数学に分類されていて、純粋な理論だけでなく、実際のデータを扱い
ながら学習しなければ身につかず、そうすると、データそのものに関する知識（経済学や
社会学や生物学など）も必要となってくるため、解析学や代数学など、数学の他の分野と
異質な感じを与えてしまうということが大きな原因だと思います。ですから、統計学は、
実務の現場で必要に迫られて勉強したという人も多いのです。
現在諸君が学んでいる「反復試行の確率 nＣrｐrｑn-r」は統計の基礎になります。し
かし、数学Ｂや数学Ｃの教科書に載っている統計そのものは、ほとんどの大学が入試の範
囲に入れないので、本校の数学でも扱わないと思います。
本当は、数学とは別に「統計」という授業があっても良いのかも知れません。
多いか少ないか右のグラフは、今年２月に「ベネッセ
未来教育センター」が、関東の中学１〜
３年生1355人を対象に行った意識調査の
結果の一部で、10月４日のある新聞に載っ
たものです。（色付けは筆者による）
まず皆さんは、どんな感想を持ちまし
たか。自分と比べてどうですか。
Ｑ 「親とうまくいっている」中学生が
８割程度、家で「のびのびできる」が84％。これは多いのか、少ないのか。
このほかに、
親は自分を理解している yes＝70％
今と同じ家庭に生まれ変わりたい yes＝47％、no＝21％
どういうことで親を超えたか 「母親の体力」＝80％、
「社会の見方」「社会常識」いずれも25％以下
この新聞はこれを１面トップに載せ、見出しは「消えゆく反抗期」「精神的自立の危機
指摘も」としています。
この見出しは、この調査をまとめた深谷昌志・東京成徳大学子ども学部教授の
「一見、好ましい結果に見えるが、子どもが親に依存し続けて精神的な自立が遅れて
いる。社会全体で見ると心配な結果だ」
という見解が根拠のようです。
「反抗期とは、
親から自立する過渡期にみられる一過性の不適応状態で、幼児期の第一期と中学生
くらいの第二期がある。第二期は、身近にいる親の存在を目障りに感じたり無視す
るなどの態度に出る。自分ができてくると親との関係もやがて修復される。」
という解説も載せてあります。これは、教員資格に必要な「青年心理学」か何かで必ず学
ぶことです。
さて、この記事、例によって予断（
ミスと言えそうです。つまり、先ほどの「Ｑ」のような疑問を持てば、深谷教授の見解の
根拠は崩れるだろうということです。
教授は「親とうまくいっている」中学生が何％以下なら "正常" と考えているのでしょ
うか。あるいは、過去に「親とうまくいっている」中学生がずーっと少ないというような
データでもあるのでしょうか。そういうデータもないならば、これで反抗期が
か、自立が
それに、戦中・戦前の中学生は親を目障りと思ったり無視したりしてたんでしょうか。
回答者の心理や質問間の関連
「親を目障りに感じる」ことと「親とうまくいかない」と感じることは、また別の判断
ではないかと思います。あるいは、うるさいと思いながらも一目置く、尊敬する、そこま
でいかなくとも、こうしたアンケートでわざわざ「親とうまくいっていない」と答えるほ
どのことはない、という心理だってあるでしょう。
その辺を確かめたくて（その場では、この事情は言いませんでしたが）、先日の１Ｂの
ＬＨＲで諸君に協力してもらったわけです。「中学生時代を思い出して」ということにし
たので、質問は過去形にしてあります。回答数は39です。協力、有難う。
１．親との関係 ア 親とよく話したか？ yes３０(77％)・no ６
イ 親は自分を理解していたか？ yes２３(59％)・no１１
ウ 親とうまくいっていたか？ yes３１(79％)・no ４
エ 親を目障りと思ったことがあったか yes２６(67％)・no ９
２．家での気分は
ア のびのびできたか？ yes３３(85％)・no ３
イ 安心できたか？ yes３３(85％)・no ３
ウ 退屈か？ yes１４(36％)・no２２(56％)
エ 孤独か？ yes ３(８％)・no３３(85％)
オ イライラしたか？ yes２１(54％)・no１４(34％)
３．生まれ変わるとすると、いま（中学生当時）と同じ家庭に生まれ変わりたいか？
yes２５(64％)・no ６
さて、現役の中学生と卒業後半年以上という違いはありますが、大雑把ながらも、「親
とうまくいっていた」と「家でのびのびできた」が、新聞の記事とほぼ同じ割合であり、
「同じ家庭に生まれ変わりたい」は諸君の方が高めだということは言えるでしょう。
こうした項目ごとの個別の数値ではなく、私がここで注目したのは、
「親とうまくいっていたか」＝yes（Ａ）かつ「親を目障りと思ったことがあったか」＝yes（Ｂ）
という回答です。どれくらいあったと思いますか？
言葉の上では、相反することのようにも受け取れますが、
23名、54％です。
これは、「親を目障りと思ったことがあった」という26名
（Ｂ）のうちの88％が「親とうまくいっていた」と答えてい
ることになります。
つまり、「親を目障りに感じる」ことがあったからといって、それが即、「親とうまく
いっていない」という回答には直結しないということです。
従って、「親とうまくいっている」ことがかならずしも反抗期がない（親を目障りと思
わない）と判断することはできないのではないかというのが私の考えです。